虚ろな目 肆
やっと
「ウツギ。どうしたんだい、そんな浮かない顔をして」
「……俺はその「浮かない」顔をしていたんですか」
「たぶんね」
のんびりと応えると、
「
「同じこと、ですか」
「そう。私は母の興味だけで生み落とされ、捨てられた。それと同じことだけはしない、と私は決めているんだよ」
だから私は君を捨てないし、興味のために
「君はどうして私の養父――
「さあ。知りません」
「実は私も、
苦笑して見せるといっそう、少年は眉を寄せた。その様子を少し愉快に思え、
「私はどうにも人の心というものに疎いらしい。だから、
二十年には満たないが、それに等しい
ふっと笑って、史紀は少年の背中をぽんと叩いた。
「さて。私の呟きはこのあたりにして、早く帰ろうか」
「はあ」
「しかし、二十五にして十の息子かあ。ふふ、これからが楽しそうだね」
きっと、
「……あの養子にする、というお話は本気なのですか」
少年の顔がやや引きつっている。こんなとき、どんな表情をすべきか知らぬのだろう。
「本気だよ?」
と返した。
「はあ。でも俺、
「知ってる。でも、
この男はひと言も、この
「まあ、追々ね」
「はあ」
「貴族の子ども、というのもやることを覚えれば君もすぐ馴染むよ。少し目立つけれど、きっと何とかなるさ」
ようは「らしさ」をまた身につければよいだけのことなのだから。そう、付け加えると、
知っている場所なのに、どこか無機質な静寂がある。
あの
ここにはもう、何もない。
日常だったものは無に帰し、元よりあの生真面目な男は自分の私物は置いていなかったゆえ、その生活の痕跡すら残されていない。ただ、そこには質素な
その静寂のなか、
ただふたつに折られただけの、その白い紙。その紙のあいまから「協力に感謝する」「
そのときの
❖ ❖ ❖
その
成人前の子どもたちは従兄弟の
だがウツギがその
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