像は結ばる 弐
「まあ、成功したのかは知らないけどね」
と苦笑して、肩をすくめてみせ、
「記憶が混濁したのを見るに、何かしらの影響はあったんじゃないかな」
と締めくくる
「では今のこいつは、いったい何の命令で動いているというのですか。それではただ実験で勝手に死んだだけですよね」
それもそうである。
それでは目覚めた彼には何も与えられた命はなく、ただの
その問いへの答えは、少年当人が答えた。
「私は「
「は?」
「
それは
むろんこれは単なる神話でしかないと
「この少年の
術を実行したその瞬間からこの器で
そしていずれにせよ、探求の結論を知るためには、
それならば、形はどうあれ高位の人間に保護されるのが一番良い。
あの少年が
「きっと記憶が混濁して動けなくなったのは誤算だったんだろうねえ」
と呑気な呟きで締めくくった。そんな主人の言葉に、
だがそんな女を恨めしそうにすることなく、まるで他人事のように語る彼は彼で、どこか普通ではないのだ。そしてそんな彼に可能性を見出し、心酔したのも事実である。
だがそれでも、どうしても呟きたくなる。
「どうかしている……」
「そのどうかしているのが、
常識に囚われないのではなく、非常識。人間味がないのではなく、人でなし。そこに能力が加わり、わかりやすく危害を被る者がいなかったため、その破天荒さに自由を感じ、神々しさを感じて持ち上げられていただけである。
「そして
やにわに、聞き覚えのある男の声が響かれた。
それはここにいるはずのない、現
「お前……どうしてここに。捕縛されていたはずでは」
「あ?このクソ野郎の屋敷に留め置かれただけで、捕縛なぞされておらんが」
よくもやってくれたな兄上、と悪態づく男の視線は鋭い。その暗雲たちこめる雰囲気をぶち壊す勢いで、
「ナイスタイミングだ。上皇はちゃんとお遣いができる男みたいだね」
「上皇を顎で使うのは貴様くらいだぞ」
彼らの言葉遣いにはもはや他人行儀さはない。彼らは「同年」なのだ。
「お前、からかうのも大概にしろよ。ウツギを探すためとか言って屋敷まで来おって。おかげでとっさに息をひそめてたんだぞ」
「いやー、想像するだけで愉しかったよ」
けらけらと
「まったく、
春先に
加えて、
「どんなに面倒なことと理解してもけっきょく君は、陛下のためならば手を差し伸べていただろう」
「……私たち
「
「貴様殺すぞ」
遠慮なく胸ぐらを掴み、
「しかし
「何をですか」
「
だがそれが愚策だった。
その理由を知る機会がないほどに、
「というわけだ。今ごろ
「……私はずっと、貴方があるべき評価を受けられることを願って動いておりました」
そうだね、とあっさりと
「貴方は文武において才があるのに、無意味な役職で暇を持て余していらっしゃる。それでも、いいのですか」
「私の父は
「……仕方なく父親の真似事をしていただけです。貴方の真の父親は上皇であり、母親は
まったく引く気がない。
「私のすることに邪魔するなと言っているんだよ」
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