中日の葬送 参
急ぎ戻った
妃やその子どもたちは各々の
「上皇さまもお久しぶりですな」
のんびりとした声で挨拶する
「まったくだ。おぬしは元気にしておったか」
「この通り。頑丈が売りゆえ」
熊のように屈強な肉体を見れば、誰もがうなずくことである。
「それより今さら会う気になるとは、どういった風の吹き回しだ?
「あのときは、そういう気分ではなかったのですよ」
「気分か。ならば仕方あるまい」
そんなわけないだろう、と他の
「ちょっと
帝たちに聞こえぬように、
「え。ご挨拶しに来ただけだが」
等というので、
「お立場をお忘れですか!」
「まあ、私も片足をつっこんだゆえ、無関係とはいくまい」
「興味ないことならば、途中でも関係を切るくせに、どつして今回に限って切らないんですか」
その指摘に、
「して
いつまでもこそこそと話し合うふたりに、帝は呆れた様子で声をさした。
「挨拶なんという、つまらぬもののために足を運んだのではあるまい」
「さすがは陛下ですな。よくわかっていらっしゃる」
「当然だ。
ハハハ、と
「私じゃあ、あのときの
「
はい、と首肯した。
「
「情報が漏れるのを防いだのでしょうな」
なるほどと呟き、
「
「私が記憶している限りでは」
「皇后には何が起こったというのだ?」
真っ先に狙われたのは
つまり狙いは皇后。やはり皇后が皇子を産むのを阻止するため、このような騒ぎが起こされたのか。他の
「
「狙いやら関わりやらは私が知る話ではありませんが、皇后を苦しめていた術ならば知っております」
けっして核心は話さず、誰の側にも付かない。その立場は変わらず守られているのだと帝は理解し、うなずいて「続けよ」と言った。
「いわゆる
「つまり、犯人は神官だと?」
「神官でいま、
残る正式な
「いや、密かに
「私の知る者いわく、その術は
「中途半端……?」
帝を含め、上皇や
「はい。乱雑に引き離したような感じ、とのことです。神官は魂の扱いに慎重ゆえ、そんな真似はしないでしょう」
欠けた魂が
「ゆえに、正規の訓練は積んでいない者と思われます」
「となると、神官と強い関わりのある家門……やはり、
「とにかく、早く皇后陛下を見つけて差し上げることですな。魂と器を離すいぜんに、器を破壊されてしまえばどうにもなりませんからな」
器を破壊される、とはつまり「殺される」ということだ。その言葉に帝は青ざめた。
「それはあまりに哀れだ。皇后は妃のなかでも特に若いのだ。そんな若い娘が
「さすが、陛下はお優しい御方だ」
にっこりと
「近衛も人手が必要でしょう。私の随身も貸し出しますよ」
「ちょ、
「私はおとなしく自邸にいるから、心おきなく働きなさい」
「では私はこのあたりで失礼します」
軽くこうべを垂れると、別の屋敷へ移る上皇とともにその場を立ち去った。嵐のようなひとときである。
「さて、私はこのあたりで」
ぴたりと足を止め、
「
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