中日の葬送 弍
水面の上と下、朝と夜のあいだ、生と死のはざま。これらに
ゆえに多くの儀式――とくに生と死にまつわる儀式は早朝か夕刻に行われる。
長いこと空席である
そのすぐそばには、骨灰を海へ撒く、
その様子を、
「盛大だねえ」
ぽつりとつぶやき、横に立つ
「君は近衛としての参加しなくてよかったのかい」
「私の役目は、貴方をお守りすることですから」
「そうかい」
眼下ではすでに
あの
「
「構いませんが……。せめて冠を」
「あれ、暑いから嫌いなんだよ」
男が頭をさらすことは
「ほんとう、親子そっくりですね」
「ハハハ。父上に似ているなら喜ばしいことだ。光栄ですらある」
岬の上で直に
「あ、どこぞの
「実況しないでください」
海辺の
「……そろそろ動くかな」
ふいに、
その声が鳴らされたのは、
それは黒装束に白い無面をした、明らかに不審な者である。背は低く、体格も細いように思われる。だと言うのに片腕で皇后を抱きかかえ、もう片方の手で
「皇后さま……!誰か皇后さまを……!」
青ざめて叫ぶ
「なんてやつだ……!」
近衛たちが呆気に取られて頭上をあおぐ。
その侵入者は皇后を抱えたままひらりと
「いったいどうしたんでしょうか」
岬の上からゆえによく見えない
見えなくとも、何か異常な事態であることはひしひしと伝わるものだ。
「少し見てきます。
「えー……」
「いいから、おとなしくしていてくださいよ!」
ばたばたと
「忙しいねえ」
ふたたび視線を海辺へおろすと、非常事態により
「さて、下りるか」
まったく随身の言うことを聞く気がない。
そのそばへ駆けつけた
「何事だ」
「た、
「私が常に
近衛は早口で、皇后がさらわれたことを説明した。
「おやおや、大変な騒ぎだねえ」
「はあ!?
なぜか降りてきていた主人の姿に、目玉が飛び出る気分である。
「なに。
声を上げたのは、側付きたちに付き添われて車場へ向かおうとしていた
「ハハハ。お久しゅうございますな、陛下」
「めったに穴倉からでない
「ちょいと気になることがありましてね。同行しても?」
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