魂呼び 参
女房に導かれて
その室の奥には
「
皇后の横へ膝をつきながら、女房たちとともにいた
「あの、
部屋のすみの
だが、
「神官の真似事さ」
「はあ?素人が手を出しちゃまずいでしょう」
「それはどうかな。そこらの神官よりは役に立つと思うよ」
ウツギは
これは神官たちが
(よし、
もはや見慣れた光景がそこにはある。
ウツギはいまのところ触れられるのは魂と性質をつかさどる
(いた)
寄せては離れ、交わっては離れる様々な不定な色や形のなかに、ふわふわとした球形のものがある。あれこそが、器を失って彷徨う魂だ。あれが溶けて周囲と混ざってしまうと手遅れになるらしいので、急がねばならない。
その魂をひょいと掴むと、身体をまた回転させて方向を転換する。皇后を
しゃらん、しゃらん。
その道しるべに従って、ウツギはぐんぐん泳ぎ進む。少年を避けるように
「……戻りました」
小さく息を落とし、皇后のひたいから顔を離すと、ちょうど皇后もうっすら目を開いていた。
「わたくし、また眠ってしまったのですね。ウツギ、苦労かけました」
「
このやり取りも毎日おこなっている。皇后は徐々に赤みを戻しつつある頬に
「そんな顔をしないで。ウツギがまたこうして救ってくれたのですから」
「どこか苦しいなどはございませんか」
「いやですわ、
ふふふ、と笑って元気づける皇后はすっかり顔色がよい――その様子を目の当たりにして、
「
「見ればわかるだろう」
それでも信じられないとばかりに
「
「まあ、貸したのだけど……。実は今は私が正殿に置いてあるんだよね」
え、と
「さっき、使わなくてもできるから返すと」
「おつかれ、ウツギ。君は期待以上だ」
「はあ、ありがとうございます」
「
「……残り香があるので」
ウツギは
「そうなのかい」
「だんだん巧妙になって、一瞬だけ使うようにしているみたいですけど。かすかに
こうして少年が立っている、ということはもうその香りはないということである。
「ということは、相手は使わないと干渉できない、ということか」
「最近は離れ方も雑で弱いので、簡単に呼び寄せられます。でもそれ以前に……」
続けられたウツギの言葉に、へええ、と
ウツギは
「おいウツギ」
「なんですか」
「そういうことができるなら、もっと早く言ってくれ。私だけ
まだ
「……お前、まだ何か隠してないか?
「
本当か?と疑いのまなこを向ける男はなおも詰め寄ろうとするが、ウツギは「何もありません」ときっぱり言い放ち、さっさと部屋を出る。
とは言え、この公達ふたりも向かうのは正殿である。ウツギの後ろで
「
「ハハハ、私は君が焦っていると愉快だけどね」
え、と絶望顔をする随身を、主人はからからと笑って「冗談だよ」と言う。完全にからかわれている。
賑やかなふたりのかたわらで、ウツギは食膳を抱えてまた
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