夏の来客 壱
それは東西で対になるように整備された華やかな町で、そこに住まうのは力仕事を担う町人や
その
その、
「
そのうちの片方、小柄な体躯をした若い
「まだ結論は出ておりませんが、胸を
彼は
すると今度は、その隣で座礼していた
「不敬にも
彼も同じく
「まったく、伯母上は最期まで人騒がせな御方らしい。神官になると言い出したら北の辺境地へ赴き文のひとつも寄越さない。
無頓着で破天荒。好奇心を形にしたような女人で、何でも器用にこなす文武両道な御方であった。若い頃は男子であればきっと皇太子を示す
そんな彼女が行方知れずになったのは今年の春先。
「皇后がようやく身籠ったころにあのような不穏な報せで度肝を抜いてきて、今度は死体が見つかった。さすがは伯母上とも言えるが……」
「心中お察しします。我らが
そう静かな口調で告げ、
「して、
その言葉に、ぴくりと
「……相変わらず、
「そうかそうか。久方ぶりに
「ご冗談を」
すかさず言葉を返す
「では
「
考えなしとしか思えぬ男の発言に
「
「帝のご希望に沿うのことこそ我らが使命でしょう」
「できぬことをやるということこそ、無責任でしょう」
「やってもいないことをやれないなど、それこそ無責任でしょう」
う、と言葉を詰まらせて沈黙する。このままでな本気で
「……なら
「何をおっしゃる。
なんでそんなに行きたいんだ、とすでに行く気満々な
「が、
むろんだ、と答える帝の
❖ ❖ ❖
「今日も暑いねえ」
少年――ウツギが熊のように大きなこの男の元で下男の真似事をするようになってから七日が経っていた。そしてやけに倉に私物が置かれている理由を知って五日になる。
「
これでもかと
「まるで
「そう言うように、
「
唇を尖らせてぼやく主人に、何と返せばよいかわからずウツギは沈黙する。
当初、
「それに
「どうせ最近いかがですか、のような内容の薄いものばかりだよ」
まったく読む気がない。仕方なしにウツギは一枚一枚広げて中を確認した。
当人も驚いたのだが、意外にもウツギは文字の読み書きができた。どこで教わったのかまったく記憶にないが、貴族の教養である詩の一部を丸暗記していたのを鑑みるに、教えたのは高貴な家の出の者――それこそ、
「あ、
「え。少しくらい大丈夫だよ」
「よくないです。あと少しで読み切りますから、待ってください」
きっぱりと言い切り、ウツギはいそぎ文へ目を戻した。
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