昼顔と共に見送るかけし君

昼顔ひるがおと共に見送るかけし君



季語は、昼顔。

朝顔とは違い、夕方にしぼむ花です。



「……うわ、こんな時間! いきなりごめんね、もう行かなきゃ」

「そうだったね、今日はアルバイト、って言ってたのに、ごめんね」


「そんなことないよ、話せて嬉しかった。また連絡するから、じゃあね、ほんとうに気をつけて帰ってね!」


急ぎのはずなのに。

気をつけてね、をもう一度叫んで、手を振っていく彼。


ここが大学じゃなかったら、どこか安全なところまで送ってくれてから、バイバイ、になっていたのかも。


花壇には、昼顔。

まだ昼顔が咲いている時間。だから、そこまで遅くはない。


一人になって、寂しくなってしまいそうな私のそばに、そっと寄り添ってくれているような、昼顔たち。ありがとう。


夏の朝顔も、素敵だけれど。


昼顔も、いいよね。



※かけし、には、駆け、と、欠け、を掛けております。


彼が駆けて行ってしまって、二人が一人に。


でも、朝顔よりは小さくて、淡い紅色。

控えめな美しさの昼顔が、彼女のそばにいてくれました。


大丈夫、また明日、会えます。


彼もきっと、彼女からの、無事に帰れたよ、という連絡を待っていることでしょう。


気をつけて、帰りましょう。


また明日ね、と答えるためにも、ですね。

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