君影草ゆるゆるとしてなお愛し
季語は、君影草。スズランの異称です。
「あ、スズランだ。スズランって、なんだかかわいいよね。鈴みたいな形とか」
「うん、かわいい」
「ね。香りもいいよね」
「うん」
初夏の風にゆれるスズランと、スズランを楽しむ君。
かわいいのは、スズランだけじゃなくて、とか、スズランもだけど、それよりも、君だよ、とか。
香りも、は、そう。スズランの香り!
……僕は、言いたいことの半分も、言えなくて。
「か、かわいい。ほんとうに、かわいいよ」
やっと、なんとか、それだけは言うことができた僕に。
「……うん」
そう言って、笑う君は。
やっぱり、とてもかわいい。
※ゆるゆると、にはゆるゆると、と、
ゆっくりと、初夏の風に揺れるスズラン。
それを眺める彼女を見る、彼。
ゆっくり、ゆっくり、と過ぎる時の愛しさ。
そして、愛しい彼女。
初夏の、素敵な一日です。
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