第10話 ミアの本音。

メルヘリダス:「だから!お前について行くんだ!強きものに従うのは弱者の定めでしょう!」


圭人:「それはお前らの世界での話だろ!人間の世界と魔物の世界を一緒にするなよ!」


メルヘリダス:「もう私は決めたんだ!お前について行く!」


圭人:「はぁ…わがままで頑固なドラゴンか…お前、食事はどうするんだ。俺にそこまでの金はないぞ。」


メルヘリダス:「あれほどの力を持っていながら金がない!?結構金使い荒いんだ。」


圭人:「違う違う!昨日冒険者登録されたばかりなんだ!」


メルヘリダス:「は、はぁ!?それじゃなに?私は昨日冒険者登録されたばかりの新人にやられたってこと!?」


圭人:「ま、まあそうなるな…」


メルヘリダス:「私も落ちたわね…2000年も生きてると流石に実力も落ちるか…」


圭人:「に、2000年!?!?」


メルヘリダス:「えぇ、私2000年は生きてるわよ。途中でドラゴンの生活に飽きて人の姿で人の生活を真似したりして、それで人種族の知識もある程度はあるわよ。」


メルヘリダス:「話を戻すけど食事は心配ないわ、ちゃんと自分で取ってくるもの。それに人種族の食事は味が濃すぎて私には合わないわ。」


圭人:「そ、そうか…うーん、どうするかな。」


ゲイル:「おーい!ケイトー!!!」


圭人:「っ!!ゲイル!!そしてミア!」


メルヘリダス:「ほう、ケイトと言うのか。」


ゲイル:「生きてたか。ドラゴンが消えたと思ったらお前がしばらく戻ってこないから、心配して見に来てみれば…この状況はなんだ。」


ミア:「ケイト…無事でなによりだ。ところで…そこの女は…」


圭人:「ああ、こいつはさっきのブラッディドラゴンだ。なんか降参したらしくて人の姿になって俺に付いていくとか言ってて困ってたところなんだ。」


ゲイル:「ま、まぁ俺からしてみりぁ、そこよりも問題があるんだが…」


ミア:「ゲイル!そんな問題は後回しだ!こいつがブラッディドラゴンでしかもケイトについていくだと!そんなの私が許さんぞ!」


メルヘリダス:「なんでお前に許されなきゃダメなんだ!私がついて行くって決めたんだ!ついて行く!」


ミア:「ダメだダメだダメだ!ケイトはどうなんだ!」


圭人:「お、おいミア。ちょっと落ち着け。俺も今困ってるんだって。」


ゲイル:「おいミア。お前のそんな姿初めて見たぞ。何をそんなに熱くなってるんだ。」


ミア:「あっ…い、いや。そ、そうだな。す、すまなかった…そこの女、ケイトに付いていくとは一旦置いておくとして。お前宿とかはどうするんだ。」


メルヘリダス:「宿?ケイトに付いて行くんだ。もちろん一緒に泊まるぞ。」


圭人:「は、はぁ!?お前何言って…!」


ミア:「おい、ブラッディドラゴン。私と勝負しろ。」


圭人:「っお、おい!」


メルヘリダス:「いやよ。もう私疲れたし。それにあんたじゃ私に敵わないわよ。」


ミア:「なんだと…私は一応Aランク冒険者だぞ。人の姿のドラゴンになど億せずわ。」


メルヘリダス:「ふーん。ならこの姿ならやらなくて良さそうね。」


メルヘリダスはドラゴンの姿へと戻った。


ミア:「…くっ!!てやあああ!」


ミアがメルヘリダスに向かって剣を振る。

しかし、ミアの剣は儚くも弾かれる。


メルヘリダス:「ね。言ったでしょ。あんたのステータスじゃ、私に傷1つ付けられない。敵うはずないでしょ。」


ミア:「くそ…」


ミアはその場に膝から崩れた。


何かを察したゲイルは口を開く。


ゲイル:「なぁブラッディドラゴン。ケイトについていけ。しかし宿の部屋は別にしてくれないか。もちろん宿の金は俺が出す。」


圭人:「っおい!ゲイル!!何勝手に!」


ゲイル:「頼むケイト。こいつを引き取ってくれ!!今のミアを見ただろ。ミアの剣で簡単に弾かれる程だ。こいつには俺でも敵わない。またこいつに暴れられたら今度こそ、この街は終わる。」


圭人:「…っ。分かった。分かったよ。メルヘリダス!!俺についてこい!ただし暴れたりするなよ!」


メルヘリダス:「やった!!」


メルヘリダスは人の姿に戻った。


ミア:「確かに…こいつを野放しにしておくとこの街は終わる。ケイト。今回だけ許してやる。ただし部屋は別だぞ。」


圭人:「あ、あぁ。」


ゲイル:「なぁケイト。後で話がある。リーズレットに話を通しておくから後でギルド長室に来てくれ。」


圭人:「分かった。」


ゲイル:「まぁ立ち話もなんだ。残りはギルドで話そうか。」


そういい、ギルドへと足早に向かった。


ギルドへ着くと周りの視線が疑惑から憧れに変わっていた。


「おい!あいつ!初日でBランク冒険者になったやつだ!」


「しかもスタンピートを1人で終わらせたって!」


「ドラゴンも倒したって!」


ゲイル:「さっ、周りの注目も集めたところで貴賓室へ行こうか。」


リーズレット:「ケイトさん!ギルド長!ミアさん!おかえりなさい!ケイトさんっ!大活躍だったみたいですね!」


ゲイル:「俺たちは武器1つ振らずに終わっちまったよ。」


そして貴賓室へ向かう。

貴賓室…まさかのこの部屋か。


そこにはナンシーもいた。


ゲイル:「さ、この部屋はケイトは初めてでは無いな。ここはお偉いさんを呼んで真面目な話をする場所だが…」


ゲイル:「ケイト。お前は今の俺たちに取ってお偉いさんよりも上の存在だ。なんせ命の恩人と言っても過言では無いからな。」


圭人:「俺は好き勝手暴れさせて貰っただけだが…」


ナンシー:「何言ってんだい。あんたが居なきゃ今頃この街の住人は全員死んでいたよ。だから恩人という言葉を受け入れなさい。」


ゲイル:「そうだ。お前が居なきゃこの街の人間は愚か俺達も死んでいた。元とはいえ数年前までSランク冒険者だった人間の命の恩人だ。誇っていい事だぞ。」


圭人:「そ、そうか。納得していいのかは分からんが…」


ゲイル:「まぁ恐らく俺の予想だが、今回のスタンピートで今後のお前の立場は俺たちよりも上になるだろう。」


圭人:「え?そんな…立場なんて要らない。俺はゆっくりと過ごしたいんだ。」


ゲイル:「俺としてはお前の意見も尊重してやりたいんだが…お前の功績はここのギルド全員が目撃してる。噂になって無理だろうな。」


圭人:「………調子に乗って暴れなきゃよかった。」


ゲイル:「もし少しでも普通の暮らしをしたいなら…提案だが自分の家を持ってみたらどうだ?」


圭人:「家か…ありだがまだ先の話だな。もう少し稼いでから考えるよ。」


ゲイル:「そうか。今回のスタンピートの最功労者のお前には報奨金が出るだろうが協議をした上で金額を決めるだろうからまだ待っててくれ。」


圭人:「そうか。わかった。」


ゲイル:「そしてもう1つ。これはここにいる俺を含め全員が思っていることだが…お前は何者だ。」


そうなるだろうな。あれだけの数の魔物を1人で倒したんだ。疑問に思うのも無理は無い。


圭人:「何者…か。話してもいいけど、ここにいる全員が秘密を守れると誓えると言うなら話そう。」


ゲイル:「俺は守ると誓おう。あくまでもギルド長だ。秘密は絶対守るぜ。」


ナンシー:「あぁ、任せな。秘密くらい守れないと色んな噂が舞い込んで来る店なんて出来ないからね。」


ミア:「あぁ、任せろ。絶対に話さないと誓おう。誓約魔法を掛けてもいい。」


リーズレット:「私はギルドの受付ですからね!秘密は絶対に守ります!」


メルヘリダス:「私も誓うぞ!ドラゴンの祖に誓う!」


メルヘリダスは少し心配だが、俺が一緒にいれば問題は無いだろう。


圭人:「わかった。今から話すことは絶対に他言無用だ。国の貴族や王だろうと…だ。」


全員が頷く。


圭人:「まず先に言っておくが俺はこの世界の人間じゃない。俺は平和な世界。地球という場所の日本と言う土地で生まれた。そこには魔物はおろか、魔法すらなかった。」


ゲイル:「チキュウにニホン…聞いたこともないな。」


ナンシー:「あたしもさね。」


圭人:「恐らく何者かの召喚魔術的なもので召喚されたのだろう。召喚された場所はスタンピートが起きたあの森だ。そして何も分からずにブラックウルフに殺されそうになっていたところミアに助けられた。」


ミア:「なるほど。記憶喪失などではなく、この世界の知識を1つも持っていなかったというのか。」


圭人:「そうだ。そしてミアに魔物を倒してみろと言われ、ステータスにある強そうな魔法を撃ってみたんだが。周りにも被害を及ぼしかねない広範囲の魔法だった。」


ミア:「あの時のゴブリンに対して撃った魔法か。確かにあれは凄まじかった。」


圭人:「それで街に来たわけだ。俺が何者か、という答えだが。平和な国で生まれ育ったが異世界へ召喚されただけの16歳だ。」


ゲイル:「なるほど、よく分からんがお前が悪い奴ではないのは確かなようだな。」


圭人:「この国の通貨の常識もリーズレットに教えてもらったくらいだしな。」


リーズレット:「あの時はこの人は何言ってるんだろうって思ってましたけどそういう事だったんですね。」


圭人:「ああ。スタンピートの時の魔法もステータスにある魔法を何個か撃っただけだ。」


ゲイル:「……よし分かった。とりあえずお前を信じよう。そして俺との対戦も無しだ。絶対勝てねぇ。」


ナンシー:「それが懸命さね。私が魔法勝負をしかけても勝てないと確信が持てるよ。」


ゲイル:「恐らくお前の実力はSSSランクに相当するだろう。なんならSSSでも収まりきるのか分からんがな。」


圭人:「俺の魔法や攻撃力が馬鹿げているのはもう痛いほど分かったが、俺の改善点としては明らかな経験不足だ。そこを今後補っていこうと思う。」


ゲイル:「自分に不足している部分を改善しようとする所は立派だが、それをするとほんとにお前には誰も勝てなくなるぞ。」


圭人:「まぁそれは一旦置いておこう。ところでゲイル。この近くに空いている倉庫なんかないか?」


ゲイル:「空いている倉庫か…」


圭人:「出来ればでかい倉庫がいい。それとかなりの買取の人員を手配出来るか。」


ゲイル:「声をかけてみないと分からないが…なにをする気だ。」


圭人:「いや俺のスキルでな。自動採取というものがあってだな…」


ゲイル:「まさか………あの数の魔物の素材…」


圭人:「ああ、全て持っているようだ。」


ゲイル:「………分かった。とりあえず倉庫はある。買取も人員をできる限り集める。明日の朝また来てくれ。」


圭人:「わかった。」


そうしてギルドを後にする。


するとミアが追ってきた。

ミア:「ケ、ケイト!!この後飯でも食べないか!」


メルヘリダス:「私はご飯を取ってくるから、2人で行ってくるといい!」


圭人:「あ、ああ。分かった。まさか2日連続でミアとご飯を食べるとはな。」


ミア:「い、嫌だったか…?」


圭人:「違うよ、嬉しいんだ。」


ミア:「は!?な!?…ロ、ローガン亭に行くぞ!」

分かりやすく顔を赤らめる。


そしてローガン亭へ着いた。


ミア:「ローガン、頼みがある。30分でいい。店を閉めて2人きりにしてくれないか。」


ローガン:「お、おう。なんでい、2日連続で来たと思ったら。ま、いいがな。」


ミア:「ありがとう。恩に着るよ。とりあえず沢山料理を頼む。その間に話を済ませる。」


ローガン:「あいよ!任せとけ!」


圭人:「2日連続でこのお店に来れるとは!嬉しいな。……ミア…?」


ミアが下を向いて震えていた。


ミア:「すまんケイト。少しだけ、少しだけ許してくれ。」


そう言ってミアに抱きしめられる。

ミアは泣いていた。


ミア:「ケイト…心配したよ…魔法使いが最前線に立って、全然戻ってこないんだもん…。」


圭人:「ごめん。心配かけちゃったね。」


こういう時は無理に振りほどかず、頭を撫でてやろう。


ミア:「うぅ…ケイトが強いのは分かってるよ。分かってるけどやっぱり心配なの。」


圭人:「心配してくれてありがとう。これからは俺も調子に乗らず1人で行ったりしないようにするよ。」


ミア:「ほんとだよ?また1人で行ったりしたら泣いてやるんだからね…」


圭人:「うん。分かった。」


ミア:「ケイト、ごめんね。」


そう言うとミアは俺の唇を奪う。


圭人:「え…!?」


ミア:「まだ出会って2日で早いよね。でもね女の子って強い人に惚れちゃう…んだよね…。」


圭人:「……」


誰かと恋愛なんてした事の無い俺は戸惑う。


ミア:「私ね。普段は強い自分を演じようって必死なんだ。でもなんでかケイトの前だと、私よりも強いケイトの前だからこそ、強い自分じゃなくてもいいってそんな気になっちゃって。」


ミア:「普段の私と今の口調。全然違うでしょ。今私はケイトに素を出せてるの。」


圭人:「そ、その…普段のミアもいいけど…今のミアの方が好き…だよ。」


ミア:「…嬉しい。ねぇケイト。明日から私とパーティ組まない?私もその方が素を出せるし…ありがたいの。」


圭人:「う、うん。構わないよ。」


ミア:「やったっ!そしたら明日からよろしくね…?」


圭人:「よろしく。今日はたくさんご飯食べて、元気だそ。」


ミア:「そうだね。急に泣いたりしてごめん。沢山食べよっか。」


ミア:「ローガン!話はついた!飯を頼む!」


ローガン:「あいよ!もう何皿か出来てるよ!」


ローガンが料理を持ってくる。

それにしても、口調が変わると印象ってこうも変わるんだな。


そして相も変わらず2人とも大量に食べて店を後にする。


ローガン:「今日もいい食べっぷりを見せてくれてありがとよ!また来てくれ!」


ミア:「今日はありがとね。付き合ってくれて。また、たまにでいいから2人で食事しよ。毎日だとさすがの私でもお金足りなくなっちゃうから。」


圭人:「そうしよう。こちらこそ今日はありがとう。今度は俺にも払わせてね。」


ミア:「うん。」


ローガン亭から出て少し歩いているとメルヘリダスがやってきた。


メルヘリダス:「あ、やっと見つけた!探したよ!」


圭人:「ああ、すまないな。待ち合わせ場所を決めておけば良かった。」


ミア:「お前、メルヘリダスと言うのか。私はミア。先程は突っかかってしまって悪かったな。」


メルヘリダス:「ミアか。よろしく!ちょっとケイト!ミア泣かせたの?」


ミア:「ち、違うんだ!さっきご飯を作って貰ってる最中煙たくてな!それで涙が止まらなかったんだ!」


メルヘリダス:「ふーん、それならいいけど。」


圭人:「ありがとうミア。初日から女の子を泣かせた人だと言う印象にならずに済んだよ。」


ミア:「(小声)泣かせたのは本当だけどねっ」


圭人:「(小声)そっそれは悪かったって…」


2人ともクスッと笑う。


メルヘリダス:「ほう、2人は恋仲か。どうりで部屋を分けろと必死になってたのか。」


ミア:「なっ!!!まだそういう関係ではないわ!!」


メルヘリダス:「まだ。ね。」


そんな会話をしてたら宿についてしまった。


ミア:「そ、それじゃあな。また明日。」


圭人:「おう、ミアも気をつけてな。」


ミアと別れた俺とメルヘリダスは宿に入る。


ロザリーの母:「おかえりなさい。ギルドから話は聞いてるよ。部屋を2つ。隣同士で用意したから使っとくれ。それと、晩御飯はもう出来てるからね。食べておいで。」


忘れていた。宿で晩御飯作ってくれているんだった。

しかし俺はまだ食べられる。

そうして宿の食事もペロリと平らげて俺とメルヘリダスは部屋へと帰った。


圭人:「ふぅ、今日も疲れたな。初クエが緊急でスタンピートか…。」


圭人:「しかしあれだけ魔法を使ったのに魔力がもうフルで回復してる。俺の体はどうなっているんだ。」


そして今日は早めに体を魔法で洗い、服も洗った。


そしてベッドに横になると俺はすぐに気を失った。





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攻撃魔力が高すぎるせいで初級魔法だけで十分です 時雨雷音(シグライオン) @siglion

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