第10話「脅威」

 シールドで跳ね返った魔物が姿勢を直して、

 こちらに低い声で威嚇してくる。


 灰色っぽい毛で、体高は私くらいある狼のような動物。

 全身からは変質した魔力でできた黒いオーラが漂う。


「僕が弱点調べながら守るから、お姉ちゃんは全力で攻撃して。

 (武器と、防具の形は……こうすればいいかな)」


 マリンが構えると、光でできた剣と鎧を見に纏った。

 とても頼もしい背中。かっこいい。ますます惚れちゃう。


 同時に、魔物は唾と咆哮を撒き散らしながら、

 マリンに飛びかかってきた。


「ぐうぅっ!!」


 伸し掛かるように爪や体をぶつけてきた狼を、

 マリンは剣を両手に持って受け止めた。

 金属が打ち合ったような、甲高く鋭い音が響き渡る。


 流石はフィグ人の体。

 あんなに大きな魔物でもしっかり踏ん張って阻止できてる。


「ちゃ、ん……す……!」


 マリンはもう一本剣を生み出して魔物の顔に突き刺そうとする。

 けど、まるで鋼の上を滑るように剣は弾かれて落ちていった。

 マリンがそれに少し驚いて、その隙をついた魔物に

 剣諸共吹き飛ばされてしまった。


 鎧の破片と、少量の血しぶきが飛ぶ。


「マリンッ!!」


 つい、私はマリンが心配で頭上を飛んでいく姿を見続けてしまって。

 頭では魔物を警戒しなきゃいけないって、分かってたのに。

 そのせいで防御できたはずの余裕を逃してしまった。


 マリンが地面に落ちない間に、すぐにこっちに襲いかかってきた魔物に

 まんまと私もふっ飛ばされ……


「ぬうぅ!」


 と思ったら、誰かが長い鍬みたいなので、止めてくれて……

 あっ、双子のお母さん!


 てか、一瞬で狼の横に来て、爪の前に刃を当てたような。

 すごい動きするね……


「私の魔法は身体強化と風です!微力でしょうけど、支援します!」

「た、助かります!でも、剣が刺さらないってことは……」

「なので防御破壊が得意な人を頼みました!」

「お、おぉ……」


 有能ママさんすぎて痺れる。

 てかその佇まい、完全に歴戦の戦士の風格出てるんだけど。

 二児の母ってこんなかっこいいんだ。


「パールさんの出力なら多少バリアを削れるはずです!」

「は、はいぃ!」


 見惚れてる場合じゃない。

 お母さんが作ってくれた隙を活用しなきゃ。


「んうぅうぅ!!!」


 村のために。傷つけられた村人とマリンのために。

 家にいるペパーとスペアのために。

 心の奥底から燃え上がらせ、全力でエネルギーをぶつけた。


 止めどなく溢れる魔力で青白く猛る火炎が、

 太陽よりも眩しく魔物を飲み込んでいく。


「ど、どうだっ……!」


 さっきマリンを抉った爪から体まで、炎の中から現れた。

 端々がちょっと燃えてるけど、目に見えるダメージは無さそう。

 硬すぎでしょ。


「引き続き食い止めましょう!そろそろ着くはずです!」


 マリンも起き上がってきて、また私達の前に来た。


「ごめんなさい、ミスっちゃった」

「いいよマリン!無理はしないで!」

「お姉ちゃんが焼いてくれたおかげで、頭のバリアが薄くなった。

 もう一息で壊れるから、弱点としてそこをマーク……」


 別の方向を見たお母さんが、急に叫んだ。


「二人とも魔物から離れて伏せてっ!!」


 聞いてすぐ分かるくらいに、自信と安心に溢れた大きな声だった。

 つまり、魔物に適した援軍が到着した。



「……ほう、何とも、良い情報しるしだ……」



 後ろの遠く、木の上あたりに誰かいる。

 強大な魔力が集中する感覚が薄っすら伝わる。



『――貫け』



 華やかで重厚な音を響かせて、虎の脳天を超高速の何かが貫いた。

 バリンっと厚いガラスが砕けたように舞い上がり、

 魔力の巨大な花が咲き乱れるように砕け散る。


 その刹那の絶景を、私達は当然として、

 家の窓から双子達も目を輝かせて見ていた。


 食らった攻撃は銃弾ほどの点なのに、

 魔物は頭から叩きのめされたように仰け反り、そのまま倒れて動かなくなった。

 纏っていた魔力も急激に地面や他の植物へと流れていく。


 後ろから、草むらを走ってくる音。


「……あ、村長!」


 マリーが遠距離だって言ってたからもしかしたらと思ってたけど、

 予想通りアクア村長だった。


 まさか、治癒だけじゃなくあんなすごい狙撃ができるなんて。


「重症者はいなさそうだな。良かった……」

「い、今の、すごかったです!」

「ふふ……そうだろう?これが私の第二の魔法だ」


「お母さんも助太刀助かりました!マリンもありがと!」

「こちらこそ私達を守ってくれてありがとうございます」

「お姉ちゃんもすごかった」


 お母さんが双子に合図を送ると、

 二人共元気に走ってきて村長に飛びついた。


「そんちょー!そんちょーだぁ!」

「なにあれぇ!ばぁーんって、きらきらーって!!」

「こら、先に「ありがとうございます」でしょ!」


 二人が村長や私達に感謝をぶつけながら、親子でも中々やらないくらい、

 ぎゅうううっと村長にしがみついている。

 六歳の感動と憧憬に溢れた瞳は、最高のご褒美だね。


「バリアを貫いたあとはメインの攻撃を任せる予定だったんだが、

 マリンちゃんの印が明確だったから一発でトドメを刺せた」

「お姉ちゃんが攻撃したからバリア薄くなったんだよ!」


 マリンもマリンで私の手柄にしようとしてくれて、

 思わず嬉しくなっちゃう。


「なるほど、そうか。やはり、二人とも凄まじい才能だな……」

「えへへ……」

「村人が斬りつけられたときから捜索を強めたんだが中々見つからなくてな。

 貴女方には感謝してもしきれない」


 村長が双子を少し遊ばせた後、体から降ろした。

 それから魔物に歩いていって、死体を観察する。

 私が村に来た時に通報された個体だと改めて確認した。


「この種は、普段我々から離れて暮らしている。

 それに、「対価」を払えば獲物を分けてくれたりもするんだ。

 魔物全般に言えることだが、望んで村を襲うわけではない。

 こいつらには魔力障害という病が起きる」

「元は普通の生き物だったんですか?」

「その通り。魔力の器である精神と体の境界が曖昧になると、

 自らを制御できなくなって暴走してしまう。

 私達人間には耐性も治療法もあるから大丈夫だが、

 野生生物は未だそういうわけにいかない」


 世界に置かれた悪役じゃなくて、災害みたいな脅威なんだ。

 こいつらが現れてから殺すのを続けたとしても、根本的な解決にはならない。

 またフィグ人の誰かがすごく痛い思いをするかもしれない。

 回復魔法が間に合わなかったら死んじゃうかもしれない。


 この世界にありふれている魔力がきっかけなのなら、

 ある意味では自然現象になる。

 このまま対症療法的に駆除していくしかないんだろうか。

 でも、元日本人としてはなんとなくだけど、

 地震や台風とかに比べたら止められそうな気がしてならない。

 魔力障害を緩和、抑制、防止する薬のようなものを……


「考えていることは分かるぞ。

 我々も人間以外の魔力障害を食い止める方法を研究しているが、

 あまり成果は芳しくなくてな」

「……周りの野生生物をもっと狩るのは?」

「なかなか攻めた考えだな。

 生態系が変われば予期せぬ問題が増える。

 何よりこれは魔力を持った生き物全体の問題だから、

 種の一つ二つ根絶したところで何も変わらない」

「まぁ、無闇に殺されるのも可哀想ですしね」

「……殺さずに済むに超したことはない。

 だが、私が一番愛するのはあくまで人間みんなだからな。

 皆殺しが魔物の消滅のみを齎すのであれば真っ先に選んでいた」


 通信機を操作しながら、話を続けてる。

 命を大事にしつつも、あくまで仲間が第一。

 素晴らしい村長だね。


 前世には野生動物と癒着してんのかってくらい

 人命を気にかけない人でなしもいたし。同種とは思えない。


「よし、医療班への連絡も終わり。

 これから何か情報を得られることを願おう」


 村長の後ろにスペアちゃんが歩いてきて、

 裾を引っ張って話しかける。


「どうかしたか?」

「あのね……お礼、したくて」

「別に、村長として当然の務めを果たしただけだ。

 お礼なら、お母さんやあの二人にしたほうがいい」

「……村長じゃなきゃだめなの」

「んん?」

「(ひそひそ)」


 スペアちゃんがこそこそと何か耳打ちすると、

 村長はすごく驚いた顔をした後に仕方なさそうに承諾してた。

 それから二人でペパーちゃんに近づいていって、衝撃の一言を放つ。


「お姉ちゃん、スペア今から村長とえっちするから」

「……は?」「あら……」「「?????」」


 ペパーちゃんは少し恐れの滲むような驚きで、

 お母さんは何かを察した様子で、

 私とマリンはただただフリーズしていた。


 いくらフィグ人がみんな両思いだからって、ねぇ。

 守ってもらったからってそんな安易にやっちゃ、

 行為と体の価値が下がっちゃうって。


「……っ!!」


 急にペパーちゃんがスペアちゃんを勢いよく、というか

 痛めそうなくらい両肩を掴んで強く押し倒した。

 まぁ急に妹がこういう事言ったら注意くらい――


「なんで?スペア、間違っちゃった?何すれば仲直りできるの?

 教えて!他の子はだめ!あたしだけ見てくれなきゃヤダぁ!」


 ペパーちゃんが絶望を必死に塞ぎ込むような悲しい声でスペアちゃんに迫る。

 ……あれ、なんか、重くない?てかこれ、注意ですらない?

 もしやこの双子、関係なの???


 スペアちゃんが涙目のペパーちゃんを見て、

 安心しつつも思いを漏らしていく。


「……寂しかった。寂しかったの」

「うぇ……?」

「昨日の夜しよって言ったのに、部屋から出られないって……」

「あ、あれは……ご、ごめんなさい!」


 そのまま、スペアちゃんを深く抱きしめた。


 昨日の夜できないくらいで寂しいってなるんだ。

 もしかして毎日やってるの?依存度半端ないなスペアちゃん。


「どうしてもしなきゃいけないことがあって……

 今日あげようって思ってたんだけど、ミントが増えてそれもできなくて……」

「なにか、くれるの?」

「うん、今持ってくるから!」


 そう言って、家から小さな箱を持ってきた。

 あの片手に乗るサイズ感は、もしや……


「ほら、お揃いの指輪……

 これで、ちょっとだけ結婚してる気分になれるよ」


 中から出てきたのは、一組の指輪だった。

 真っ白なリングに青い石が組み込まれたもの。

 指輪なんて貰ったこともあげたこともない素人の私でも、

 店で扱うような本物じゃないってことは予想がつく。


 でも、丹精込めて作られたことも分かる。

 そこに込められた愛は本物。


「受け取って、くれる?」

「う、うん!」


 ペパーちゃんがスペアちゃんの左薬指に嵌めて、

 もう一つをスペアちゃんからペパーちゃんに嵌めた。

 二人とも、赤くなりながら嬉しそうにしてる。


 お互いのぷにぷにな手が優しく誠意と愛を持って取り合ってて、

 神々しいという他無い。


「……やはりこの双子、美しいな」

「うわ、すご……どう見ても結婚したほうが良さそうなのに。

 実の双子だったらできないとかじゃないですよね?」

「あぁ、兄弟姉妹だろうが、親子だろうが、入籍は可能だ。

 予算の問題か、あるいは敢えてこのままといったところか。

 周りはほぼ知らない、二人だけの、禁断っぽい、幼くて甘々な関係……

 こんなの今しかできない演出だからな。

 二人とも、それの尊さを直感で理解してるんだろう」


 気づいたら、二人とも抱きしめ合って熱すぎるキスを交わしていた。

 まさに貪り合うように唇を重ねていて、とても六歳とは思えない。

 こっちまで火照ってきちゃう……


「お姉ちゃん……」


 わ、マリンが裾掴みながら寄りかかってきて……

 あっ、お股ぎゅってしてる……


「貴女達!」


 急にお母さんが声を上げて、双子がビクッてした。


「前から何回もお母さん言ってるよね?

 外でしちゃいけないことってなんだっけ?」

「えっと……」「激しく、するの……」

「そう!軽いキスくらいならともかく、

 確認も取らずに誰かの前で始めちゃいけません!

 貴女達の可愛い可愛い唇が熱烈に溶け合うキスなんかしたら

 見た人達みんな昂らせちゃうの!

 自分たちの魅力をもっと自覚しなさい!」

「「ご、ごめんなさい……」」

「なら、これからどうするべき?」

「お、お部屋に……」「戻って、します……」

「はい、よくできました!

 あと、改めてお礼しますので、村長達もどうぞ」


 みんなで家に入って、双子は部屋に戻ろうとして、また止まった。


「ねぇ、誰かに見られながらって、やったことないよね」

「え?スペア、何言って……そんな、恥ずかしい……」


 さっき外で流れるようにおっぱじめたくせに……

 てか、誰かに見られないために部屋に戻るんじゃ……


「お姉ちゃん達も、見たいでしょ?」


 ……そりゃぁ、見たいよ。

 だって、こんなちっちゃい双子がガチの両思いなんだよ?

 こんな貴重すぎるシチュ、前世だったら人生何周しても出会えないでしょ。


「マリンも見たいよね?ね?」

「う、うん……」

「村長も、見たいですよねぇ??」

「……興味はあるな」


「じゃあ、こっちきて!」


 双子についていって、部屋に上がらせてもらった。

 しっかりと整頓された青~緑系の家具類に、双子に似ていい匂いもする。


「ほらお姉ちゃん早く脱ご!」

「ま、待ってよぉ」


 スペアちゃんがペパーちゃんの衣服に手をかけて、

 楽しみながら少し乱暴に脱がせようとしている。

 今、ここに名画が何枚も作られてゆく。

 どんなタイミングで止めても飾るに値する美しさが存在する。


「素晴らしい……」


 村長も偉大な芸術作品を噛みしめるようにその光景を鑑賞している。

 マリンも私に抱きつきながら目が双子に釘付けになってる。


「お姉ちゃん、可愛いよ」

「うぅ……」


 あっという間に二人とも生まれたままの姿になって、見つめ合う。

 スペアちゃんに押し倒されて、枕とベッドの中に沈み込むペパーちゃん。

 乱雑に私達の足元まで放り投げられた、二人の服。


 お互いの顔と体を舐め回すように凝視してから、

 さっきした時のように、また唇をぴったり重ね合わせた。

 慎重に、優しく、お互いが欲しがる形に合わせるように。

 けれども時には、自分の形にしようと強引に。


 首や背中を抱きしめていた手も、段々と動いて、

 じっくりとお互いの奥深くを慰めるようになって。


「うぅうぅ……」


 なんか、マリンの方から振動が伝わってくる。


「ちょ、え、マリン、何してるの!」

「だって、だってぇ……」

「い、今はダメ!人ん家だよ!濡らしちゃったらやばいって!」

「やぁ、止めるの、無理ぃ……」


 マリンも既に服の中に手を伸ばして、端ない水音を立てている。

 おまけに、私の服に顔をうずめて精一杯息を吸い込みながら。

 普段と全然違う切ない顔をこちらに向けてきて、私も強く誘惑されてしまう。


「来てぇ、お姉ちゃんも、してよぉ……」

「や、やめ!マリン、落ち着いて!」

「なんで?お姉ちゃんもしたいでしょ?」

「いや、でもダメだから……」

「じゃあ僕がしてあげる」

「うぇっ!?」


 服をめくって中に入りこまれて、パンツをずり下げてきた。

 止めようにも服が邪魔で上手く捉えられない。


 ひゃぁっ、舌入れて、ざらざらって舐めてきたっ……!!

 しかも、敏感なとこ、念入りにっ……


「や、やめぇっ!そ、村長!助けてください!マリン止めてください!」

「……それはできない」

「えぇ!?なんでぇ!?」

「村人たちの愛を見守るのも、長の務めだからな」

「聞いてないですそんなの!

 人様の部屋濡らしちゃったらクリーニング代がぁっ!」

「それくらいで請求されたりしないから安心しろ」

「で、でもぉ!」「お姉ちゃんの弱いとこ、まっかっかで、固くなってる」


 あぁぅ、マリン、上手すぎっ……

 ぞわぞわも、ふわふわも、広がって……

 あぅ、むり、で、でる、でちゃ……

 うぇ、だれか、はいってきたっ……!?


「菓子の準備ができたので、よければ――」

「ゃあ゙ぁ、やあ゙ぁあぁ……!」

「あっ……」




 ……私、マリン、村長の三人でテーブルを囲む。

 誰の顔も見れなくて、ケーキにフォークを刺すのも上手くできない。

 顔が嫌でも煮えたぎる。


 双子の部屋のふわふわなカーペットに、一段暗い丸ができた。

 私は、マリンの舌で、盛大に漏らしてしまった。

 漏らした姿と情けなくとろけた顔も、村長、双子、

 そしてケーキを持って入ってきたお母さんに見られた。


「ご、ごめんなさい、汚しちゃって、ごめんなさい……」

「気にしないでください。こちらも良いものが見れましたから。

 あれだけ逞しく魔法を使って、魔物からも私達を守ってくれた

 パールさんが……あんな顔、するんですね」


 恐る恐る、顔を上げた。

 お母さんは怒るどころか、満足そうな顔で見てくる。


「マリンちゃんも我慢できなくなったでしょ?」

「あなたのむすめさん、すごかった……」


 スペアちゃんも、

 自分たちの部屋で粗相されたっていうのに、楽しそうにしてて。


「これって、あたし達でいっぱいコーフンしてくれたんだよね?」

「や、やめなさいって、スペア……」

「えー、なんでぇ?

 お姉ちゃんが可愛くてエッチだってみんな思ってくれたんだよ!

 あたしの自慢のお姉ちゃんなんだよ!すごいって思わないの?」

「そ、そういうのじゃなくて……」

「お姉ちゃんだっていつもより中ぎゅ~ってなってたよ?

 ホントは見られて嬉しいんだよね?」

「い、いやぁ、なってない!なってないからぁ!」


 もう、何がなんだか。

 双子もこんな年で色々とすごいこと言ってるし。

 環境と文化の違いで、ここまで差ができるんだ。


 ……あぁ、頭が疲れてきた。一旦帰って休みたい。

 結構美味しいケーキをすぐに平らげて、席を立つ。


「ご、ごちそうさまでした。も、もう帰っていいですか……」

「あら、もっとゆっくりしていただいてもいいのに」

「い、いえ、これ以上は申し訳ないです!

 ほらマリン!帰るよ!」「はーい……」

「私もそろそろお暇させてもらおう。

 仕事もまだまだ残ってるしな」


 別れの挨拶をして、家の玄関から出た。

 今度こそ、ちゃんとしたお別れになったはず。


 ……にしても、双子が交わり合ってる様子、

 未だに頭に焼き付いてるなぁ。

 あんな素晴らしい瞬間が一瞬で過ぎ去ってしまうなんて、時間というのは無慈悲だ。


 ……どうにかして、恒久的に残せないものか。

 例えば、写真とか、映像とかで。


「…………っ!これだ!」

「……お姉ちゃん?」


 自分でも恐ろしいくらい画期的な発想を得て、

 ミントの一連で積もった頭の疲れも吹き飛んだ。


 そして、またマリンと一緒に村を歩き回ることになる。

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タイニーリトルエデン リンシス @eagleowl

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