第6話 大好きな小説家

 音楽、漫画、アニメ、映画、小さい頃の絵本やテレビ特撮ときましたので、今回は小説……というか、ぼくの大好きな小説家について書いてみたいと思います。


 近況ノートでも何回か触れましたが、ぼくが大好きな小説家に平井和正先生というSF作家がおられます。(残念ながら2015年に亡くなってしまいました)。


 最初の出会いは中学生の頃でした。ゾンビーハンターという小説で、3巻構成の角川文庫版でしたね。

 人間の汚さや残酷さを抉り出すかのようなハードボイルド・アクションSFで、頭を殴られるようなショックを受けて、貪るように読んだのを覚えています。


 中学生の頃はほかにも、星新一や小松左京、筒井康隆、半村良など、様々なSF作家が活躍していました。日本沈没や時をかける少女、戦国自衛隊など、映画になった小説も多かったと記憶しています。

 当然、それらの本も手に取って読みましたが、平井作品ほどには夢中にはなれず、気がつくと平井先生の小説ばかりを片っ端から読み漁る子どもなってました(^^ゞ


 ぼくは特に初期の60年代から80年代初頭にかけての作品群が好きで、中学生から高校生にかけて本当にどうかなりそうなくらいに好きでしたね。話が飛びますが、先生が最初に頭角を表したのは、1960年代の8マンという漫画の原作者としてだそうです。もちろん、ぼくの生まれる前でリアルタイムでどうだったかは知りませんが、当時鉄腕アトムと双璧をなすくらいの人気だったとのこと。


 ――で、ですね(^^ゞ

 当時のぼくにとって平井先生の小説は、まさに宝物でかけがえのないものだったんですが、なぜ、あんなに好きだったのかっていうと、まあ理由はあるんです。


 中学生と言えば、普通なら当然反抗期真っ只中であるはずですよね。でも、父親が厳しかったせいか、それともぼくの持って生まれた性格のせいか、その頃のぼくは、くそがつくほどに真面目な子どもで。


 そのせいか、中学に上がっていきなり不良になっていく周りの友だちたちについていけなくて(校内暴力が吹き荒れている時代だったんですね。当時は)、ハブられたりもあって、子どもなりに深く傷つくということがあったんですね。本来なら先生や親に噛み付くはずの反抗心も捻じ曲がり、周りの友人たちのことも大嫌いでした。


 平井先生の小説はそんな孤独なぼくを救ってくれたんですよね。特に、先生の代表作品であるウルフガイ&アダルトウルフガイのシリーズの主人公「犬神明いぬがみあきら」には生きる力をもらいました。大げさではなく、今でもそう思います。


 孤独な一匹狼のルポライターで、正真正銘の狼男でもある犬神明――

 彼は、人間は自分勝手で欲望にまみれた汚い奴らばかりだと言いながら、弱い人間や身の回りの親しい人間にはどこまでも優しい男です。理不尽な暴力には絶対に屈っさず、暴力を振るう国家レベルの強大な敵にどこまでも立ち向かいます。


 この世の中には汚い人間がたくさんいて、それでも正しく生きようとする人間もいて、先生や親が言うことが正しいわけではなく、自分の頭できちんと考えて生きていかなきゃいけないんだ、と。

 そんな、当たり前のことを犬神明に、いや平井先生には教えていただいたような気がしています。そして、当時のぼくは、自分の存在を肯定されたように思ったんですよ。生きてていいんだよって。そりゃ好きになりますよね。


 おかげで、中学生から高校生にかけて、ぼくも平井先生のように人を感動させる小説家になりたいと強く思いました。最初に小説家になりたいと思ったのはこのときです。(その後、色々あってこの夢を忘れてしまい、再び思い出すのにはずいぶんと時間がかかるのですが……)


 ところで話は変わりますが、その後に読んだ平井先生の幻魔大戦は途中から、好みではなくなっていきました。(最初の数巻は面白かったんですよ。幻魔大戦は、大友克洋先生作画のアニメ映画やキース・エマーソンによる主題歌が有名なので、そっちを知っている人は多いかもしれません)


 アダルトウルフガイのシリーズの後半も、実はそうなっていってしまうのですが、当時先生が傾倒していった新興宗教の影響があったらしく、宗教色が色濃くなりすぎたんですよね。(幻魔大戦は角川文庫版を一応、20巻全部読んだんですけどね)。


 その後、長らく中断していたウルフガイシリーズが再開したりもあったのですが、悲しいかな、ぼくが大好きだった平井ワールドはもうそこにはありませんでした。この辺りを語り始めると悲しくなるのですが、率直にそう思うので仕方がありませんね。


 ちなみに、このウルフガイシリーズに影響を受けたと公言する小説家・漫画家は枚挙にいとまがありません。ストーリーもキャラクターも全てがよく、日本SFの至宝にしてエンタテイメントの傑作だと思います。確か10年前くらいですか。新しく漫画になったりもあったらしいですね。ぼくはそっちは読んでいないのですが……。


 カクヨムで自作の小説を公開するに当たり初心に戻ろうということで、この2年ほどで、ハヤカワ文庫版のゾンビ―ハンターや短編集、サイボーグ・ブルース、アンドロイドお雪、NONノベル版のアダルトウルフガイシリーズ全巻、悪霊の女王など読み直しました。先生は長編作家として有名ですが、意外に短編もよくて、とても面白いので、機会があればぜひ皆さんにも読んでいただきたいです笑笑


 今日はこんなところですかね。では、では。また!

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