第3話 太陽が沈むときの音
「太陽が沈むときの音」。
夏を過ぎて二学期が始まり、二人で図書室で勉強した帰り道で、
「日が沈むとき、「ことっ」って音、するよね?」
何を言っているのか、わたしにはわからなかった。
「時計が、そんな音を立てる設定になってるの?」
とわたしはきいたのだったと思う。
「ううん」
知恵理は否定した。
「太陽が沈む音そのものだよ。ことっ、って、頭に直接響いて来る音が」
うわっ。
ひさしぶりにわけのわかんないの来た!
わたしは、そう思ったけど。
「わたしは気づかなかった」
とわりと平気な感じで返事した。続けて
「頭に直接響くっていうんだったら、暗示とかじゃないの? 一度たまたま日が沈むときにそんな音がしたのが頭に焼きついちゃって、日が沈む、って思うと、その音が聞こえるような気がする、って」
と問いかける。
「それって幻覚じゃないの?」と言う一歩手前だけど。
そのころの知恵理とわたしの関係なら、それぐらい言っても知恵理は怒らないだろう、という判断だった。
「それね、わたしも疑ってみた」
知恵理は言った。
知恵理でも疑うんだ、と、わたしはほっとした。
「でも、家のなかにいて、日が暮れたのに気がつかなくても、するんだよ、「ことっ」って音が。それで、調べてみると、それがちょうど天文台の発表する日没時刻でさ。そんなことが、いままで、五回ぐらいあって」
それも、何か偶然、そのときに何かの音がしたからだろう、と思うけど。
それより。
「いつから聞こえるの?」
そうきいたのは、生まれてからずっと聞こえていたなら、その回数は五回ではすまないだろうと思ったからだけど。
「今年の梅雨ごろ。コンビニで
ということは、わたしと知り合ったのとその謎の音と、関係ある……?
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