最終話:不安の抱え

数ヶ月後のある日、由美は仕事の合間にコーヒーを飲みながらふと、鏡の中で見えたあの古いピアスのことを思い出した。不安な気持ちを拭いきれず、彼女はもう一度霊媒師を訪ねることを決意した。


霊媒師は由美の話を聞いて慎重に頷いた。「ピアスがあなたの夢に現れたということは、まだ何か未解決の問題が残っているのかもしれません」と言った。彼女はピアスが埋められている場所を調査するため、由美と共に森へ向かうことにした。


森に到着した二人は、ピアスを埋めた場所を掘り起こした。しかし、そこにはピアスはなかった。由美は驚愕し、霊媒師は深く眉をひそめた。「これは…誰かがピアスを掘り出した可能性があります」と言った。


その夜、由美は再び悪夢に襲われた。今度は、夢の中で彼女はあの古い洋館の中を歩いていた。廊下の奥から聞こえる泣き声をたどり、彼女は一つの部屋にたどり着いた。扉を開けると、そこには若い女性が座り込んでいた。彼女は泣きながら由美に向かって手を伸ばし、「助けて…」と訴えた。


目が覚めた由美は、夢の中の女性が誰なのかを知るために調査を始めた。彼女は地元の図書館で古い新聞記事を調べ、数十年前にその洋館で若い女性が行方不明になった事件を見つけた。彼女の名前は美咲で、彼女が行方不明になる直前にピアスを持っていたという記録があった。


由美はさらに調査を進め、美咲の家族にたどり着いた。彼女の妹、玲子は今でもその洋館に住んでいた。由美は玲子に会いに行き、美咲のことを尋ねた。玲子は涙ながらに姉の話を語り、「美咲はあのピアスをとても大切にしていました。ある日、彼女はそれを身につけたまま姿を消しました」と言った。


由美は玲子と協力して、ピアスを見つけ出し、再び儀式を行うことを決意した。二人は霊媒師の助けを借りて、再び洋館に向かうことにした。到着すると、洋館は不気味な雰囲気に包まれていた。由美は心の中で祈りながら、美咲が行方不明になった部屋に入った。


部屋の中央には、まるで誰かが待っているかのようにピアスが置かれていた。由美は慎重にピアスを手に取り、霊媒師の指示に従って儀式を始めた。呪文が唱えられる中、美咲の霊が現れ、由美に向かって微笑んだ。


「ありがとう…」美咲の声がかすかに聞こえた。その瞬間、部屋は光に包まれ、美咲の霊は穏やかに消えていった。


儀式が終わり、由美と玲子は安堵の息をついた。ピアスはもう二度と呪いを引き起こすことはなく、美咲の魂も安らかに眠ることができるだろう。


由美は再び平穏な生活を取り戻し、あのピアスがもたらした恐怖を忘れ去ろうと努めた。しかし、心のどこかで、彼女はあの古い洋館が未だに何かを秘めているのではないかという不安を抱え続けていた。

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呪われたピアス O.K @kenken1111

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