第57話 おまけ
すっきりとした太陽の光がふりそそぐ、沖縄。
新潟とはずいぶん空気が違う。
なんというか、新潟の空気は重たいのだが、沖縄のそれは軽く感じる。
真っ青な空、白い砂浜、そこに波が寄せては返す。
そんな素敵な沖縄の、……。
地下深く。
じめじめとしたダンジョンの地下十階に、彼女はいた。
「みなさん、こんツキー! お嬢様Vtuber、ササ・ツッキーですわぁ♪」
タブレットのカメラの前で喋っている彼女は、とんがり帽子の魔女。
まごうことなき魔女、ササノ・ツバキであった。
タブレットの中の彼女はドレス姿の金髪縦巻きロールのお嬢様。
:太古の達人:〈こんツキー〉
:アイスコーシー:〈こんツキー!!〉
:ステーキ肉:〈今日もかわいいねササちゃん!〉
:音速の閃光☆ミ〈なにやってんの〉
「おほほほほほ! なにやってんのとはお言葉ですわぁ! 暇だったからVtuberやってみようかと思ったのですわぁ! 見て下さい、この登録者数を!」
ツバキははまってしまった。
Vの者となりゲームをやったりアニメの同時視聴やったりして視聴者にちやほやされる快感に溺れていた。
35年前には存在しなかった文化。
Vtuber? なにそれ、というところから初めて今は登録者数12万人を誇るそこそこの個人勢Vtuberになっていた。
「おほほほ! 面白いですわぁ、さて今日はゲームをやっていきますわぁ! えーと、これはアイワナビーザダイ……? 死んで覚える死にゲー? おほほほ、余裕ですわぁ、やってみるのですわぁ!」
★
光希と
「なにやってんだ、ツバキ……」
「あのね、お姉さんがね、私も探索者なんてやめて一緒にVやらないかーだって。姉妹お嬢様っていう設定でいこうだって」
「……まあ、それが
画面の中では、
「ざっけんなーコラくっそ、ふざけろ、死ね死ね!」
お嬢様言葉の設定を忘れて素の声になったツバキが叫んでいる。
「まーこいつの配信わりと面白いからいいけどな……」
:音速の閃光☆ミ〈確かにちょっとおもしろいのが悔しい……ということで、光希〉
凛音は地上でもタブレット越しに会話できる状態だ。
:音速の閃光☆ミ〈じゃーん! どう? これ見てみて! 発注していたのが届いたの!〉
「ん? なんの話だ?」
タブレットに映し出されたのは赤髪ベリーショートのボーイッシュな少女のアバター。
「凛音、お前まさか……」
「そうです! 私もVtuberになろうと思います! ちなみにこのモデルとかもろもろに二百万円かかってまーす!」
「おま……ばか! 沖縄旅行のために貯金しとこうとか言ってたのに!」
ガクーと肩を落とす光希。
と、凛音の隣にもうひとりのアバターが……。
それは、バニーガールの格好をした銀髪のアバターだった。
:兎佐々木しっぽ〈ふふふ……どうだ、マスター。私もやってみたぞ。名前は
「ミシェル、お前馬鹿かー! っていうかせめて見た目変えろよ、バニーガールってそのまんまお前だよそれ! 少しは変えろよ!」
:兎佐々木しっぽ〈ふふふ……見てみろ……胸は小さくしてみたぞ。貧乳の気持ちをわかるようにな〉
:音速の閃光☆ミ〈あれ!? ケンカ売られてる!?〉
:兎佐々木しっぽ〈マスターの婚約者にケンカを売るのは私の使命だ〉
:音速の閃光☆ミ〈光希! この子クビにして、クビに!〉
タブレットの中でぎゃーぎゃーと言い合いをする二人。
というか、ミシェルはいったいどこから配信してるのやら。
まあいいか、凛音の件はそんなに急ぎでもないし。
こうやってわちゃわちゃやりながら
:兎佐々木しっぽ〈さて、これも用意した。これがマスターのアバターだ。2万円だった〉
そこには茶トラの猫……以前鼓動の剣で出したあの猫そっくりのアバターが映し出された。
「俺は絶対やらん! っていうかお前らの百分の一の値段かよ!」
時代はVtuber戦国時代。
これから光希たちはVtuberとしてしのぎを削っていくのだった。
「削っていかねえよ! あれ?
「いいなあ……お姉さんの言う通り、私もこっちの道行こうかな……」
そしてこれ以降、ざ・ばいりんぎゃるずは探索者集団兼Vtuber集団となっていくのであった。
「そんな集団なってたまるか!」
【おわり】
――――――――――
おまけでしたのだ
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よろしく頼むのだ
【完結】迷宮、地下十五階にて。 羽黒楓@借金ダンジョン12/16発売 @jisitsu-keeper
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