シュナイゼル

「マコト、あいつを倒すには………お前の……お前の、あの剣が必要だ。」


「どれだよ」


「お前がよく使ってた、ふっ…あの……」


堪え笑いをするマッチョが耐えかねて指をパチンと鳴らす。すると俺の口は勝手に動き出す


「黒より黒し深淵よりいでし!

深淵の剣“シュナイゼル“!!」


……俺は今なんて言った?深淵2回言ったぞ。

ヤバい、ダメージがデカい。……戻れ俺!回復に専念するんだ!そんな思いを打ち砕くかのように地面からモゾモゾと真っ黒な剣が生えてくる。


正直言って、自分の剣を召喚するのは俺の憧れのシチュエーションだ。だが遅い、剣が生えてくるのがとてつもなく遅い。これ日暮れるんじゃないかな…


というかこれ、もしかしてヤバい?

幸い、爆乳女はこちらを見失ったようだが俺の背後には街にいた女共がほぼ全員引っ付いてきている。居場所がバレるのも時間の問題だ


しばらく待ってやっと刀身が見えてきた辺りでもう耐えられなくなった俺はシュナイゼルを引き抜いた。


「むぉん!」


勢い余って尻もちついた。ケツ痛え。

俺はシュナイゼルをグッと握ってみた


「やけに手に馴染むな…」


「おぉ!マコトやったな!さっさとひと狩りしてこいよ!!」


マッチョが駆け寄ってきた。俺が三角座りで剣の召喚を待ってる間、ずっと筋トレしてたマッチョの肌はテカテカと光っている。


「ひと狩りって、お前って…それしか語彙無いのか?マジで?…ってちょ。やめろ何する気だ、本当に下ろしてくれマッチョ、頼むから、マッチョ、お願いだマッ」


投げた。マッチョが俺を投げた。恐らく敵の魔王側、666人の四天王の内の1人、爆乳お姉さんの元へ。


空中でわたわたしていた俺は目の前に乳が迫っている事に気が付き、咄嗟に手で顔を隠した。──シュナイゼルを持ったまま




──で、ここからは予想通り。爆乳女を倒した俺は街を出た。街の女達を撒くのは苦労したがマッチョの助けもあってどうにか逃げられた。


そして野宿。またしても野宿。寝ている俺の後ろには焚き火、その奥にマッチョがいる。マッチョが火の番をしてくれるそうだ。何だかんだコイツには助けられてばかりだ。


……でもなんでマッチョは俺を頑なに助けるんだろうか。…ケツでも狙われているのだろうか……………。


俺はケツをキュッと絞った。もうマッチョの一挙一動が気になって寝れない。しばらくすると「ジー…」というチャックを開けるような音がした。そして「バサッ」という衣服を脱ぎ捨てるような音もした。


俺は動けなかった。




『ぷはぁ、これやっぱ暑いなぁ…』




俺の想像とは違い、背後から、とても可愛らしい声がした。そーっと横目で見てみると長くて綺麗な白髪をした幼い少女がそこに居た。そこは先程までマッチョがいた場所だ。


色々と思うべき所はあったのだろう。でも俺はどストライクの“白髪ロリ美少女“に心奪われていた。脳内では“白髪ロリ美少女祭り“が開催されようとしている。


『…にいさま、ミッフィーは頑張ります』


っぇ?にいさ……いや、ミッ……それ君の名前?…大丈夫?その…ミッ、え……怒られない??


いやええか!可愛いうさちゃんのイメージにも合う。そう、あの子はまるで草原に佇む白うさぎ。ミッフィー、俺の可愛いうさぎちゃん………‥…‥…




──────────────────────





「王子、勇者様のご様態は?」


「変わらずだ。今はミッフィーが頑張ってくれている。まさか魔王を倒した直後、勇者がこうなるとは思っていなかったな


……まぁ、魔王倒したら元の世界に帰れるという嘘をついた私も悪かった、と理解してはいるけどね」


「不躾に申し訳ありません王子、妹君を行かせるのは計画通りで?」


「まさか、一緒に旅した私よりミッフィーが声がけした方が意識レベルが高まるとは思っていなかったから、私も想定外だったよ


でも、私もそろそろ魔王を倒した勇者サマを、助けに行かないとな」

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黒歴史転生 高間 哀和 @takamaaa

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