変わらない日々に「さようなら」を

ルック

前編 出会い

学校の6時限目終了のチャイムが鳴る。

クラスの皆は部活や友達と遊びに行って

教室はすぐに僕1人になる。


僕は教室の片隅に1人ぽつりと席に座っている

嵐が過ぎ去った跡のような教室の雰囲気の中

僕は1人席を立ちカバンも持って教室を出る、


廊下に出て窓を見渡すとグラウンドで部活を

している人が沢山いるのが分かる。


汗を流して必死に練習をしている。


なんで放課後にあんな事をしているのだろうか、将来では絶対に使わないのに。


僕はそんな事を感じながら下駄箱に向かう。


もっと有意義に効率的に時間を使うべきだろう、


僕には分からない、

友達とか僕には居ないし、

放課後はいつも1人で帰ってる。


その方がいいじゃないか、将来の為に

頑張って勉強だってしているし、

高校を卒業したらどうせ皆違う所に

進学するに決まっている。


そうしたら今やっている事が全部無駄に

なってしまうじゃないか。


就職までに友達を作って仲良くなって

別れてなんて僕にとって意味の無いこと、

要らないものなんだ。


僕は靴を履き替えて、校門に向かう

外で無駄に時間を消費している生徒を

一瞥してすぐさま校門を出る。


1人で僕はいつもの帰路に着く、

駅まで歩いて大体10分前後で

その後電車で4つ先の駅で降りる、

そこからは歩きで10分ぐらいで

家に着く。


家から学校まで遠いが有名な進学校で

僕も前々から入りたかったので、

遠くても頑張って毎日遅刻せずに

登校している。


家に帰ってからは、母さんに「ただいま」

と言ってすぐに2階の自分の部屋に行き

勉強をする。


時計の長針が7時を指した。


「もうこんな時間か」


僕は時計をみてリビングに向かう


ドアを開けたら父さんがイスに座って

スマホでニュースを見ている。


母さんは夜ご飯の準備をしていて、

もうすぐ出来上がりそうだった。


「悠(ゆう)、自分のご飯よそっといて」


「わかったよ」


「今日はご飯食べるんだな!笑」


父さんが口を開いてニヤリとしながら

僕の方も向いて言ってきた。


「ああ、昨日は久しぶりに寝ちゃったから、

夜ご飯食べ過ごしちゃったよ」


「あまり頑張り過ぎは良くないからね」


母さんが優しくそう言うと父さんも続けて


「そうだぞ、たまには息抜きも必要だからな」


「分かったよ」


口角をあげて納得したかのように答えた。


両親共に僕の事を心配してくれて、

有り難いが、あまり僕は何も反省して

いなかった。


その後は家族3人で仲良く会話しながら

ご飯を食べ進み、


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」


「はいよ、自分でシンクに食器を持って

行ってね。」


僕と父さんは2人で自分が使った食器類を

シンクに持って行った。


「悠はもう風呂はいって寝なよ!」


「分かったよ」


今日は父さんの言う通りにしてみる、

流石に疲労で倒れて学校を休む訳には

行かないからな。


僕は父さんの言う通りお風呂に入って、

少し自分の部屋で教科書を眺めてから、

部屋の電気を消して、

すぐにベッドに横になった。


いつもより早く寝ようとしたからだろうか、

部屋は暗く静かでどこか寂しさが残る。


僕は明日も今日と同じ様に起きて、

なんも変わりなく学校に行き、授業を受け、

終わって、帰るのか。


「明日だけでもなんか変わってないかな〜」


なんてバカな事言ってないで寝よう。


朝、6時目が覚めたまだ外も少し暗い

僕は歯磨きをしようと1階に降りた、


「ふん、何も変わんないよな」


ボソッと自分だけが聞こえる様な

声で口を開いた。




「行ってきまーす」


僕はいつも通り着替えて家を出る、

何も変わりのない風景に、

変わらず多い駅のホームに、

最初の方はキツかったけど最近はもう

完全に慣れてしまった。


揺れる満員電車、自分が降りる駅に着き、

電車を降りると、ホームの席に座っている

女子高生と目が合ってしまった。


黒髪ロングヘアで整った容姿で、

制服の上からでも分かる、メリハリが

ある体、一瞬目取れてしまったが、


すぐに気まずくなって目を逸らして、

すぐさま改札に向かう。


見たことのない制服だったけど、

どこの高校だろう?


いやバカな事を考えるんじゃない!


僕にはそんな考えている暇はないじゃないか!


僕は早歩きになって学校に向かった。


学校に着いてからもさっきの女子高校生の

事が頭から離れない、授業中もずっと

どこか頭の片隅に残っている、

いつもならすぐに忘れるのに、

今回に限って忘れられない。


可愛い子だったな〜〜


あ!!


だめだ、まだ頭の中に残っている。


昼休みになっても、放課後になっても忘れる事は無かった。


マジかよこんな事初めてだぞ!


どうしちまったんだよ俺はよお!!


「ふうー」


1呼吸置く、


よし、忘れよう帰ってる最中に違う事

考えたら忘れるだろう、明日からは

普通にいつも通りいこう。


帰り道...


可愛い〜〜


脳内であの子の顔を思い出していた。


は!!


駅のホーム....


流石に居ないな〜

あの子が座っていた席の所

で電車を待っていた。


家に着いてからも、


「おい、大丈夫か?」


「え、あー大丈夫だよ」


「なんか今日変だよ、ぼーっとしてるし

なんか悩み事でもあるの?」


母さんがそう聞いてくる、


「いや、別に何もないよ。

ちょっと学校で疲れただけどよ」


僕はすぐご飯を食べ終わって、


「ごちそうさま」


食器をシンクの所に置いてから

すぐにお風呂に入った、


はあ〜忘れたい記憶ほど全然忘れられないな。


お風呂を出て自分の部屋で少し体を

冷ましている。


時計を見たらまだ8時だったけれど、

寝れば忘れるだろうと、

部屋の明かりを消して、ベッドに横になる。


翌朝...



外はまだ少し暗い、

僕はいつも通り歯磨きをしに1階へ降りる。


鏡に自分の顔が写っている、


「はあ〜そう簡単に忘れないよな...」


まだあの女子高生を覚えていたのだ。


「どうしちまったんだよ僕は..」


少し自分のバカさにガッカリしながら

ため息を1つついて、リビングに向かう。



「行ってきまーす」


「気おつけて」


僕は母さんと父さんに一言言ってから

家を出た。


駅に着きいつも通り満員電車に乗り

目的の駅までつり革につかまって

揺れる電車の中にいる。


流石に今日はいないよな...


やがて僕が降りる駅に着きホームに

降りた。


流石に今日は目の前にあの女子高生は

いなかった。


「ふん、さすがに居ないな」


僕はそうつぶやいてから歩き始めようと

横を向いた時だった、


間隔を空けて均等に置かれたイスは僕が

思っていたより多く

色々な人が利用している、

あの子が絶対僕の降りた場所の目の前に

座っているなどありえない、


だって他の所にもイスはあるから。


少し歩いているとイスに座っている

1人の女子高生に目が行ってしまう。


その子と目が合ってしまった。


僕はその子を知っている、

真っ直ぐ前を見て何をしているのか

分からなかったが、僕は一瞬で分かった

昨日見たあの子だと。


「あ...」


「あ、え?」


やってしまったつい昨日見たあの子だったから

声が出てしまった、

その女子高生も驚いたようで、なにかに

気づいたような声をした。


「あの...昨日の、目が合った人ですか?」


目の前にいる女子高生が口を開いて

不思議そうな顔で僕に質問してきたが、


「あ、え、はい...すいませんーー」


僕は緊張と驚きでパニックになってしまい、

ついその場から走って逃げてしまった。


改札を抜けて少し走った所で止まって

自分の失態に今さらながら後悔していた。


「くそ〜やってしまった....」


なんとゆう失態だ...

あの子から話しかけてくれたのに

思わず逃げてしまった。


今からでも、、いやダメだ。


そんな事したらあの子に気があるみたい

じゃないか、バカな事をするんじゃない!


それに引き返した遅刻してしまう。


うん、やめよう、学校に行こう。


どうせ明日になったらあっちは忘れてる

だろう、それどころか

変な人に話しかけられたとかで

駅員さんに言ってないといいんだけど。


流石に明日は居ないだろうしな。


僕は自分で納得する理由を勝手に作って

学校に向かった。


翌朝、いつもの満員電車に乗りホームに降りる


そこには3度目である、

あの女子高生が座っていた。



「あれ、昨日の人ですよね?」


「あ、あはい」


僕はもう逃げないと思い頑張って声を出した。

その声は震えていたけど、

話しかけてくれた女子高生は、

透き通った声で優しく話しかけてれた。


「最近よく会いますね笑」


「はい、、、」


「ここの近くの学校なんですか?

私はもう少し遠い所にあるんですよ!」


彼女は微笑みながら僕に声をかけ続けた。


「僕は、歩いて少ししたら着きます」


「そうなんですね、あ、別に敬語とか

いいんでそんなに歳も離れてないだろうし」


「あ、はい」


「ふふ」


彼女が微笑して口角をあげて言った。


「じゃあ、私もタメでいかしてもらうね?!」


「はい、全然大丈夫です、あ、大丈夫」


「ふふ」


彼女はまた笑った、優しい顔で、

僕にとって、とても落ち着く雰囲気だった。


「そんな所に突っ立てないで隣座りなよ!」


そう言って彼女は隣の空いてる席を

ポンポンと叩いて、勧めてきた。


「あ〜でももう行かないと、学校遅刻するから」


「そっか〜」


僕は申し訳なさそうに断る。


僕としては、彼女の隣の席に座って

もう少し話してたいけど、

流石にそんなことを言ってられない時間に

なってきた。


そうすると彼女は僕にある提案をしてきた。


「じゃあさ、LINE交換しようよ。」


「え?!」


「え」


いきなり声を出して驚いてしまった。


「だめかな?その方がいつでも話せるよ、

君面白いからもっと話したいな!」


「もちろん、良いよ」


僕にとって交換しないなど思考は、

まったくなかった。


「はい、これQRコード」


「はい」


彼女が見せてきたスマホの画面の

LINEのQRコードを自分のスマホで

読みとって、すぐさま友達追加をした。


名前の所には、夜風 悠


「あれ、これなんて読むの?」


「それは、"やふう はるか" 」


「はるか、、」


「え、名前で呼ぶの?笑」


「あ、ごめん。僕と同じ漢字だから」


そうゆうと悠(はるか)は、

LINEの僕のアカウントの画面を見ると、

納得したように、「本当だ」と

もの珍しそうに言ってきた。


「これは、なんて読むの?」


やはり、聞かれると思った。

少し安堵の気持ちと興奮が止まらなかった。


「それは、"ゆう"って読むんだよ。

そのまま読めばいいから楽でしょ」


「おお、確かに楽だね、ゆう!」


う、まさかこの僕が同い年ぐらいの

女の子に名前で呼ばれるとは、

心臓に悪い。


LINEの友達追加だけで少しの間

時間を忘れて話していた。


「あああ、やばい時間が遅刻だあ!!」


僕はスマホの左上にある時間をみて

今本来自分が向かおうとしていた、

目的地の事を思い出した。


「え、ごめん。私が呼び止めたから。」


悠(はるか)は申し訳なさそうに、謝るが

僕は彼女とLINEを交換しただけで、

学校遅刻した甲斐があったもんだ。


「じゃあ、また」


「うん、またね。明日もここに居るから」


僕は彼女が手を振る姿を後にして、

学校に向かった。


胸の高揚感が止まらないまま、

僕の変わりのない日々が、

終わりを告げよとしていた。























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