初夏散歩

沢田和早

初夏散歩


影法師が誘ってくれた初夏散歩


正しくはない信号機の色が変わる


この坂に小石を転がしたのは誰


右足と左足との痴話喧嘩


虞美人草ヒナゲシを踏んで思い出を壊した


心変わりしながら落ちていく花片


悲しみを運ぶ働き蟻一匹


朽ち果てたベンチに影法師と座る


まだ昨日を残したままの若葉風


新緑が枯れた心を嘲笑う


青空から降る雨はひどく冷たい


抓っても痛くないけれど現実


慰めてもらえたのは夢の中だけ


あそこで笑っているのが本当の私


陽翳れば影法師消えまたひとり


清々しい風が吹き溜めたゴミクズ


ゴミ捨て場の自分を回収してください


諦めた背中を狙う烏の慈悲


老犬が共に逝こうと尾を振る


天低く我が身を送る野辺の煙













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