第43話 積み重ねたもの

「……あっぶな」


 サつきが操るツクヨミの急襲を、間一髪で回避した。今の当たってたらやばかった。さっきから画面の左端での攻防が続いている。


 それにしても、サ月との対戦はやりづらい。キャラが同じなのはまだいいとして、この人はプレイスタイルまで俺と同じだ。全国3位という実力も相まって、自分と戦っているようでなんか違和感を感じるし、普通に苦戦してる。


(……そんで、試合が始まってから今までずっと俺だけを狙ってるのはなんだ?)


 そう、サ月は碧木あおきが操るアリスに対して、ちょっとした威嚇のような遠距離攻撃以外はしていない。


(……俺なら真っ先に世麗せれいのHPを削りに行くけどな。おっと……)


 危ない危ない、一瞬の油断が命取りになる。まぁ、サ月の考えてることは大体読めるし、碧木も様子見みたいな感じだし今は眼の前のことに集中だ。


 考えは読めるものの、俺に対しての執拗な攻撃から抜け出せたわけではない。これさえなけりゃすぐにサ月の考えと行動に対しての対策ができるんだが、それをやらせないためのこの攻撃だろうな。


 普通の抜け出し方だと隙がなさすぎて無理だ。逆にダメージを食らう。


(……やるしかねーな)


 サ月に対して考えついた作戦は1つしかなかった。普段はリスクが高すぎるをやろう。


(……サ月は終盤を意識して大技は打ってこない。自分を試す絶好の機会だ……!)


 周りの状況とサ月の動きを注視し、息を整え意識とコントローラーを握る手の感覚を研ぎ澄ます。この言い方だとちょっとはかっこよく見えるかな?見えないか、とほほ。


 気を取り直して、


(サ月が間合いを整える為に下がる一瞬……!)


 右にいるサ月に攻撃すると見せかけるために詰め寄り、直前で左方向に短い反転ジャンプ。誘い出されたサ月はこちらに寄り小技を仕掛けるがもう遅い。

 着地と同時に今度は左に行くと見せかけ右に反転ジャンプ。コントローラーの操作が細かくここが難しいポイントだがなんとか成功した。


(……決まった)


 ジャンプの最中にサ月は上攻撃をしてくるが、タイミング良くこっちも下攻撃を繰り出し相手の技を消しつつダメージを与えた。


「成功させた!?あはは!」


 横に居る碧木が驚きつつ楽しそうに笑ってるし、リスナー達も盛り上がってるねこれは。なんなら、俺が一番ビックリしてる。


 ――今のは「逆Z」と呼ばれているフェイク・交わし技だ。


「逆Z」は操作の細かさとジャンプの加減、技出しのタイミングの難しさから成功率が低く、ヴィクロ公式公認のまとめサイトで最高難易度「天変地異技(SS技)」に指定されている。


 これまでやってきた経験と技術を集中させ、そのプレイヤーの実力を試す大技なのだ。

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VTuberとして数千万稼ぐ陰キャ学生の俺が、最強ゲーマーとして名高い陽キャ美少女と同居を始めた話。 にいな @Reinonike0821

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