VS魔龍神リンドブルム
「なぁ、リル。なんか近くないか?」
「え?そうかしら?」
「お前さんら、露骨に分かりやすいな…」
金華の髪留めを渡した翌日、朝食を食べているとリルが腕を組んできたりあーんをしてきたりと、恋人モード全開である。父さんはそれを見て、若い頃の母さんじゃないか…と頭を抱えていた。
(でも、悪くない。)
俺はそれでも、確かな幸せを感じていた。だがそんな時間は長くは続かないもので、朝食を食べ終えると師匠が外から帰ってきた。
「お、リシア。帰ってきたか、どうだった?」
「魔物の量が異常ですね、ソードベアにビッグスパイダー、アビスウルフと上位ランクの魔物も頻繁に出現しています。」
「なにか、あるのか?」
「何があるかは、分かりません。ですが、無視して良いものではないのは確かでしょう。」
師匠と父さんは、険しい顔で会話を続ける。その内容は、最近村周辺の魔物が活発になるどころか、本来なら居ないはずの上位ランクの魔物が出現しているというもの。
「本当、何が起きてるんだ。」
「分からないですが、一つだけ確かなことがあります。」
師匠はそう言うと、上を見上げた。そして厳格な雰囲気のまま、口を開く。
「『空』に、何かあります。膨大な魔力の、決して無視してはいけない、何かが。」
「依然、警戒は解けない、か。」
不穏。そんな言葉がよく似合う状況だ。リルも先程までの幸せそうな顔から不安を覚えた顔になって、俺の裾を掴んで目を見た。
「ここは、大丈夫なの?」
「それは、分からない。でも、リルは絶対に俺が守る。」
これだけは曲げられない。例えドラゴンが現れようが、魔王が現れようが、俺が死んだとしてもリルだけは逃がす。その覚悟は、とっくのとうにできている。
「アレン、このあと時間はありますか?」
「全然暇だよ。」
「では、平原に出向きます。」
師匠は、俺の目を真剣に見つめた。そして背を向けて再び玄関へと歩き出す。最後に俺の方を首だけ向け、言葉を紡いだ。
「聖級魔法を、教えます。アレンの魔力と鍛え上げた身体なら、使えるでしょう。」
「っ!?」
聖級魔法。限られた才能や、特別な血統を持つ者、もしくは血の滲むような地獄の鍛錬を耐え抜いた者にしか扱えない絶技。そして師匠の奥義である炎聖級魔法を、ようやく教えてくれる。その事実は、俺を喜びの渦へと誘った。
―――――――――――――――――――――
「師匠、なんか、怒ってます?」
「怒ってません、ただ、少しショックなだけです。」
家の近くだと危ないという理由で、平原の少し奥まで向かう。その途中で、俺は朝から感じていた違和感について訪ねてみた。
「少し、恥ずかしい話をします。」
師匠はそう切り出すと、極めて冷静な、いつもの顔で語りだした。
「私は人間ではありません、母が魔神大陸生まれの魔族です。だから寿命が長く、300年くらいは生きます。」
「それは、父さんから聞いてます。魔族とのハーフだから、魔法の扱いが上手いと。」
「私は最初、アレンを見た時にこんな小さな子が魔法を扱えるわけないと思いました。舐めていましたし、一日指導したら帰ろうとも思っていました。」
「割と酷いですね?」
「そりゃそうです。でも、アレンの魔法を見た瞬間、思いました。スムーズな魔力操作に、無詠唱での魔法発動。そしてその威力、技術は伴っていないがその抜群のセンスに驚きました。」
なんか初対面の時、随分ひどく思われてたようだ。まぁあのくらいの歳のガキが、魔法使えるなんて普通は信じないし、当然だ。
「でも、もうアレンは一人前です。私が保証します。でも、この魔法を教えたらもう私がアレンに教えられることは何もなくなってしまうのは少し寂しいですが。」
(それに、私が今アレンと戦っても、負けるでしょう。それほどまでに、アレンは強くなりました。)
師匠は髪をくるくるとさせながら、そう呟く。でも俺の顔は渋い、そんな事言わないで欲しい。だってあなたは、俺の尊敬する師匠なのだから。
「さて、ここらで良いでしょう。」
「おねがい、します。」
師匠はすでに、教える気満々だ。ならば俺も、その期待に応えるしかあるまい。師匠が杖を握ったので、俺も覚悟を決めて魔導の虹杖を右手で握る。
「お手本を見せます、詠唱と魔力操作、それを良く見ていて下さい。」
そう言った師匠は、もう集中モードに入ってしまった。恐らく今の彼女には、自分の世界しか映っていないだろう。
師匠が杖を両手で握り、地面に突き刺す。そして目をつぶり、深く集中し魔力を杖へと送り言葉を紡いだ。
「朱く光るは希望の炎、明日を繋ぐ命の灯火。」
「咲かすは炎華、闇を振り払う一筋の光。」
「開け、魔炎の扉。眼の前の絶望を打ち砕き、その尊厳を証明せよ。」
師匠の体から、太陽そのものがあるような巨大な熱が発生する。火花が飛び散り、師匠の赤い長髪がふわふわと靡く。
(とてつもない魔力、決して量が多い訳では無いが、それでも威圧的で、強烈な魔力。)
まるで、獅子のように気高さすら感じる魔力。その全てが杖の先端、深紅の宝玉へと収束していく。
「道を、未知を!切り拓け!!」
師匠の語句が強くなり、その閉じていた眼は開かれる。杖を地面から外し天へと向けて、深紅の杖を突き出した。
――――――――業火が唸る。
「『希望の
刹那、轟音。
深紅の宝玉が強い光を発すると、赤い、とても赫く巨大な炎が出現する。一見したらとてつもなく恐ろしい見た目、だが俺の目には、とても勇猛に見えた。
そしてそれはまるで、小隕石のような見た目で、彼女のとても強い言葉と共に射出されまるで山のように大きい岩に激突する。
―――――ゴォォォォォォォォン!!!!!
耳を劈くような爆発音、爆風と煙だけで吹き飛ばされそうになる。土煙も数秒経つと晴れ、その驚愕の事実を認識させた。
「地面が…」
ぶつかった大岩は、灰すら残さず消えていた。そしてその周辺の地面は、底が見えないほどのデカく深いクレーターになっている。
(これが…聖級魔法、地形すら変えてしまう絶技。)
だが、俺の手は震えている。怖いのではない、ワクワクしているのだ。これほどの魔法を、今から発動するのだと。
「かの炎帝クリムゾン=ライオットが、妻と子供を殺した龍を倒すために開発された魔法。クリムゾンにとって絶望の日々を、希望に変えるための魔法だから、希望の
「なんというか、素敵な魔法だ。」
「それを今から、習得するんですよ。」
「わかってます。」
次は、お前の番だ。そんなことを言いたげな目で見つめる師匠。その足は震えていて、師匠でもこの魔法を使えば体への負担が激しいのだろう。
(やってやる。俺はこれを習得して、師匠を超える。)
「朱く光るは希望の炎、明日を繋ぐ命の灯火。」
一言一句、噛みしめるように口にする。その言葉を一つ紡ぐだけで、魔力が暴れ狂うのを感じる。だがそれを、強制的に制御して杖へと送る。
「咲かすは炎華、闇を振り払う一筋の光。」
魔力が熱くなる。体内を焼き焦がすような痛みと共に、この魔法に込められた明日を生きる希望のようなものを感じる。
「開け、魔炎の扉。目の前の絶望を打ち砕き、その尊厳を証明せよ。」
ありったけの魔力を、杖に込める。そして強いイメージ、どれだけ強固な魔物も、理不尽な神も、意地悪な悪魔も、その全てを破り希望を照らす、轟炎を。
「道を、未知を!切り拓け!!」
俺は目を限界まで見開き、師匠からの贈り物である魔導の虹杖を天へと掲げる。そして俺の全身に纏っている魔力も、全てを杖へと込め、発動する。
「『希望の
出現する豪炎の小隕石、それは師匠のよりも二回りほど大きく、熱もさらに強大。俺は先程と同様にここらへんに大量に存在する大岩の一つにそれを放とうとする。
だが、豪炎は天へと吸い込まれた。
(制御が出来ない!?勝手に魔法が動いただと!?)
「まさかっ!?」
俺の制御下から外れた豪炎の小隕石は、空へと物凄い勢いで昇っていき、雲に隠れた時点で、大爆発を起こす。師匠は熱の汗と冷や汗でびっしょりになりながらも、ある可能性を思いついた。
だが、それは遅い。すでに豪炎の小隕石は爆発し雲を一つ残らず消し飛ばしてしまった。そして、『アレ』を発見してしまう。
「紫色の、空中要塞…」
かつて、父さんに寝る前の読み聞かせとして教えてもらった英雄譚でのラスボス。かの強大な『巨龍』の住処。師匠は、開いた口が塞がらないという様子で、固まってしまった。
「『魔龍神リンドブルム』の、空中要塞…」
恐らく、数百年ぶりに姿を現したであろう空中要塞からは、異様な雰囲気を感じた。イギリスの大聖堂とかの、ああいう神秘的な、決して穢してはならない、荘厳な雰囲気だ。
「なるほど、あんなものが空に浮いているのなら、魔物が凶暴化して当然だ。アレンの強大すぎる魔力を危険と察知し、吸い寄せ消したと見るべきか。てことは…」
「まさか…ね…」
俺の顎から、冷や汗が垂れ落ちる。だが気付いたときにはもう、遅かったのだ。
―――――――魔龍の神が、舞い降りた。
「くっ!?!?」
刹那。凄まじい魔力が大地を駆ける。俺は魔力に当てられ吐きそうになるも抑え込みただ上を見上げた。そこには、190ほどの背丈に、紫色の縦に瞳孔がある龍の瞳。そして、二本の禍々しい角と2対の計4本の羽を持つ人形の、化け物がいた。
『我の要塞を破壊する等、良い度胸だな。』
俺は即座に城を確認する。そして、城のほんの一部が、瓦礫となり崩れていたのだ。俺はそれを見て、非常に焦る。
それだけじゃない。全てを見透かされているような、否。俺が何かしたところで全て捻じ伏せられ殺されると感じるほどの威圧感を持ち喋る男。その威厳は間違いなく、お伽噺に出てきた魔龍神リンドブルムその人だろう。
(魔神大陸にて魔族を統率し、闘神大陸の八割を支配。最終的に初代剣神と聖龍神レルネア、闘神ジークフリートによって力のほぼすべてを奪われたはずなのに、これだけの威圧感、、、)
全てを諦めて死ぬことさえ、自ら選びたくなるほどの状況。だが俺は、諦めることなど出来ない。俺には、俺の無事を祈るたった一人の愛する女の子がいるんだ。
「師匠、戦いましょう。」
「いえ、それは却下です。」
師匠は俺の言葉を完全無視、そして俺の全身は無色透明の魔法陣によって展開されるバリアによって閉じ込められる。
『半魔の小娘、貴様に流れている半分の血に免じ貴様は見逃しても良い。早々に立ち去れ。』
「去りません。私の後ろには、守るべき弟子がいるので。」
師匠はあまりに毅然とした態度で、告げる。その立ち姿は世界最恐の龍を前にしているとは思えない程に、格好いい。
そして師匠は、空間を歪ませ一つの2メートルほどのパワードスーツらしきものを取り出し、それに勢いよく乗り込んだ。
「
師匠の体からとてつもない熱が発せられる。パワードスーツは赤いラインが光り輝き師匠を照らす。
「
その瞬間、地面を蹴り抜いた師匠は魔法使いとは思えない速度で跳躍し、右手の炎拳を表情一つ変えないリンドブルムへと解き放つ。それは俺の目に負うことなどできない、一撃だった。
莫大な魔力を消費し、常に轟炎を生み出し鎧を動かす動力へと変える。それにより、魔法使いなのに聖級、いや、王級の戦士に迫る近接能力を今の師匠は発揮している。
だが、その拳はリンドブルムが両掌を合わせることによって展開された、謎のバリアにより完全に受け止められる。
『ぬるいな、小娘。炎を動力に変えるその鎧、まるで劣化聖霊闘鎧だ。』
「まだまだァ!!」
普段のおとなしい口調は遥か彼方へと消え、連続で炎拳を放つ。しかしその全ては、リンドブルムが両掌を合わせて展開する謎のバリアによって届くことはない。
(なんで、師匠、なんで俺を、戦わせてくれない!?)
少なくとも、蒼炎や水を駆使すれば師匠の援護はできる。先程からリンドブルムは、攻撃を防ぐ度に反撃をしてこない。こうして舐め腐っている今が、チャンスだと言うのに。
それに、こうして師匠が魔力を無駄に使い追い詰められていく様子を、ただ眺めているだけなど、俺には耐えられないというのに。
だが師匠は、残り少ない魔力をフル活用し様々な炎魔法を発動する。俺の蒼炎を打ち破った炎剣に一点集中の火力を持つ炎の戦車、爆発的な速度を生み出す炎脚に一度に10の斬撃を繰り出す炎猛撃。しかしその全ては尽く撃ち落とされた。
格が違う。そんな言葉が、よく似合う状況だった。
そして、5分が経つ頃には、勝者と敗者は喫していた。
『その程度か、小娘。劣化とはいえ聖霊闘鎧がモチーフ、魔力消費がさぞ辛かろう。』
「はぁ、はぁ、はぁ…」
師匠は、そこまで見抜かれているんですか、と憎たらしそうに呟く。だがリンドブルムの表情は、決して師匠を嘲笑うようなものではなかった。
「リンド、ブルムッ…あなたは、見誤った…」
『何がだ?この我が、貴様程度の小細工わからないはずもない。そしてその我が言う、貴様にはもう、何も残されてなどいない。』
「えぇ、『私』には、ね。」
その瞬間。リンドブルムの視線と殺意が、俺の方へと向いた。俺はすでに、その魔法の発動準備を済ませ、杖を奴に向けて構えていた。
『我の魔力探知で、気づかなかっただと?』
(そりゃそうだろ、師匠が俺にかけたこのバリア。これは、外部からの魔力探知を妨害するものだ。師匠は、これの制御をしていたから攻めの一手にかけたのだ。)
それは、俺に任せたという意思表明でもある。その期待に応えるためにも俺は、今俺の使える魔力の全て、師匠10人分を超える魔力の全てを注ぎ込み、発動した。
「『希望の
魔力探知妨害バリアが解除される。次の瞬間出現するのは、赤い炎ではなくどこまでも透き通る蒼色の轟炎。それは、球体ではなく一本の、ただ相手を貫き焼き殺すことに特化させた巨大ドリルのような形だ。
「いっけえええええええッッッ!!!!!!」
人生で一番の咆哮と共に、蒼炎の巨大ドリルを放つ。それは音を置き去りにし、光に迫る速度でリンドブルムに迫り、奴はそれを受けた。
(これで倒せなきゃ、駄目だ!!)
絶対に殺す。その意志だけで放った蒼炎の巨大ドリル。それにより激しい土煙が起こり、視界が全く見えなくなる。
だが土煙が晴れた時、俺は絶望する。
『中々、良い魔法だ。』
無傷。いや、奴の手首が火傷を負っている。それは重症ではないが、たしかなダメージと言えるくらいの火傷だ。
でも、今の全力でたったこれだけの傷。もう魔力はない、動けない。視界がぐらぐらと揺れ、今にも倒れそうなくらいだ。だが、恐怖と絶望が、意識を手放すことを許してはくれない。
『悪いが、ジーザスのくれた城を傷つけたお前を許すことはない。』
リンドブルムは冷徹につぶやき、確かな怒りを覚えつつも、少しの尊敬を俺に向ける。だが、その右手は確かな殺意と共に俺の心臓へと向けられた。
だが、その時。深紅の宝玉が、輝いた。
「アレンを、死なせは、しないッ!!」
「師匠!?もう、魔力が!?」
師匠はとっくに魔力切れだ。だがその杖を俺へと向け、俺の全身を魔法陣で包む。それは見覚えのある上級空間魔法、大規模転移の魔法陣だった。
(俺だけ逃がすつもりか!?)
『逃がすわけ無いだろう、人間。』
リンドブルムはそう言った瞬間、師匠の方に顔を向ける、そして次の刹那。
(駄目だッ!?師匠!?そんなの、絶対に許さないぞッッ!!)
「ぐはぁっ!?…」
師匠の左胸が、奴の貫手によって貫かれた。
「師匠!!!???」
俺は駆け出す。すぐに治癒魔法をかけなければ、そう考えると他のことは全てどうでも良くなる。今も血を吐き地面に倒れる師匠以外、)に入らない。それこそ、今も殺意むき出しのリンドブルムのことすら忘れて一直線に駆け出すくらいには。だが、師匠はそんな俺を見てなお、死相を浮かべた顔で、微笑み、言った。
(辞めろ!?師匠!聞きたくない!!)
リシア=イフリートの脳内には、凄まじい才能を発揮するアレンの姿や、密かに誕生日にプレゼントを用意してくれたアレンの姿、これまでアレンと過ごしてきた数年間が思い出されていた。
そして、その全てを思い返した上で、その言葉を告げた。
「『生きて』」
俺の体が光に包まれ、意識さえも光に飲み込まれる。転移魔法が、発動した。
―――――――――――――――――――――
「はぁ!?はぁ!はぁ!?」
元Sランク冒険者バルドは、クレアを背に、妻を抱えてひたすらに走る。リルも魔法を使いなんとかバルドの全力疾走について行く。
平原を駆けるその姿は、とてもとても焦っているように見えた。なぜなら、アレンの希望の炎によって見えてしまった空中要塞は、バルドたちにも視認できていたから。
「無事でいてくれよ…」
その願いを込めて、激しい魔力のぶつかり合いが行われていたであろう場所へとたどり着く。だがそこには、もう何も無かった。
否。見たく、無かったのだ。
「は……?」
どこまでも続くような平原の地面に、深紅の髪を血で染め、左胸にポッカリと風穴を開け倒れているリシアがいた。
バルドは急いで抱きかかえる。だが、その瞳に光はなく、脈も無い。リシア=イフリートは、15年もの間一緒に冒険者をしたパーティーメンバーは、死んだ。
(そうかッ、リシア、アレンを、守り切ったんだな…)
「ね、ねぇ、アレン、は???」
リルは、とても不安な声で尋ねる。だが、誰も答えてはくれない。ここには、物言わぬ死体となったリシアと、魔龍神の魔力の痕跡だけだ。
「いや、何かある。」
リシアの懐には、一枚のカードのようなものが入っていた。それをバルドが取り出し、書いてある文字を読み上げる。
「『魔龍神と接敵、アレンは転移で逃がしました。急いでいたので、転移先はわかりません。ですが、私は恐らく死にます。アレンを、探してあげてください。そして、今まで、ありがとうございました。』」
「ッ……」
この場の全員が沈痛な気持ちに包まれる。リシアの死に、魔龍神なんて御伽噺の存在に、アレンの転移。そこで最初に口を開いたのは、一人の少女だった。
「私が、探しに行くわ。」
「ならば、俺も行こう。」
リル=ブランケット、自分の生きる理由であり、自分の命より遥かに大事なアレンを見殺しにすることなど出来なかった。
それに追随するのは、元Sランク冒険者で旅や戦闘に慣れているバルド。リルを一人で行かせてはいけない、そして、絶対にアレンを見つけ出すという意志の元、立ち上がった。
「じゃあ、私も。」
「駄目だ、クレア。それにリーゼも。絶対に危険で、とても長い旅になる。それを二人は、耐えられない。」
「だから、おとなしく待っていろ、と?」
「だからこそ、俺たちを信じてくれ。そしてアレンを見つけた時に、帰って来られる家を守っていてくれ。」
殺気立ったリーゼを、バルドは沈める。そして一通り会話が終わると、一旦全員が家に帰った。
そして、翌日の朝。バルドとリルは冒険者コンビ『双頭』を組みアレンの捜索を始めるのであった。
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