魔法狂いの目覚め
リシアが師匠としてうちに来てから、半年が経った。俺ももうじき4歳になり、師匠と大分仲良くなれたのではないかと思っている。
そして今日は、師匠との死闘である。リシアが師匠になってから毎日行っている修行で、文字通り寸止めなど無しで魔法で殺し合う。師匠曰く、これが最も効率の良い訓練なのだとか。
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俺の翳した右手から放たれるのは、高密度に固められた水球。触れたものを容赦なく破壊する死の球は師匠を囲うように出現した土の砦に防がれる。
「ターン制バトルなんてさせませんよ。」
次の瞬間。土砦で防御したまま新たな魔法が発動。師匠の杖から炎が流れ出て形を為し、炎の魔神のような姿になり咆哮を上げた。
「まじかよッ!?」
「言ったでしょう、敵は君の魔法を発動する時間なんて与えてはくれないよ。」
炎の魔神は炎を足元で爆破させることで一気に加速し、その炎拳を俺に向けて叩き込む。だが炎は、俺との相性激悪だ。
放たれる炎拳、だが俺の言葉と共に展開される水壁に吸い込まれ停止する。だが次の瞬間、俺の足元の地面がひび割れた。
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ひび割れた地面から、業火の柱が勢いよく飛び出し俺を焔の中に包む。全身に感じるとてつもない熱さと痛みを受け、瞬時に自分の周りを水の塊にて覆う。
「完全に殺す気じゃん!!」
「道半ばで死ぬのなら、そこまでの魔法使いというだけです。それを耐え切った魔法使いが、本物ですよ。」
師匠はそう応え、涼しい顔をしながらいくつもの上位魔法や混合魔法を発動する。今なんとかふせぎきれてるのは師匠の得意な炎魔法と俺の得意な水魔法の相性が良いだけに過ぎない。
(それでも火力で圧倒的に負けてる!魔力量も師匠には及ばないし!!)
「なら、防御は辞めだ!!」
師匠が炎柱を解除した瞬間、俺は発動していた水塊の魔法を同時に解除。そして豪速で魔力を練り上げる。
「形状変化、サイズ小、光熱練り上げ、回転。」
「それを当てるためなら、傷は厭わない、か。一概に悪手とは言えないね。」
俺の翳した右手の先に蒼炎球が出現、それを形を変えドリルのような形になる。そして蒼炎はさらに温度を上げ、ドリルが目に見えない速度で回転する。
「でも、君の耐久度では私の火力は耐えきれない。」
「だろうなぁ!!」
師匠は冷徹に呟き、杖の先端をこちらに向け魔法を発動。炎の戦車のようなものが出現し、その銃口はこちらを睨みつけた。
そして、戦車から弾丸が放たれた瞬間。俺はニヤリと笑う。師匠は気付いたが、すでに遅い。
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炎の弾丸が蒼炎ドリルに触れた瞬間、消失。ドリルは最初からなかったように消え俺の体へと吸い込まれていく。
だが、その弾丸は突如俺の前に出現した水の盾に吸い込まれる。火が消えたのではなく、吸い込まれたのだ。
(炎魔法の天敵!一定以上の熱量を持つ物質を問答無用で吸い込み己の魔力に変えてしまう魔法!)
「避けんなよ、師匠!!」
そして、回収した魔力は右手へと収束される。次に出現するのは、先程ブラフとして使った蒼炎ドリル。その温度や回転は先程よりもさらに高いものだ。
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俺の右手から射出される蒼炎ドリル、その速度はもうすでに目で追えない。対する師匠は両手で炎剣を握り、自らの心臓目掛けて飛んでくる蒼炎ドリルに向けて振り下ろした。
「はぁぁぁぁ!!!!」
炎剣と蒼炎がぶつかると、周囲に衝撃波と熱波が襲いかかる。魔力のぶつかり合いにどんどん魂が削られるのを感じ、師匠の炎剣の威力を身を以て痛感する。
(いやまって!どんな火力してやがる!?)
「良い魔法だ、でもまだ、負けられないよ。」
師匠はそう言うと、炎剣を振り抜き蒼炎ドリルを打ち消す。そして、その炎剣をこちらに投げつけてきた。
「ぐぁぁ!!??」
もちろん、避けることも受けることもできるわけが無くモロに喰らい左腹部に風穴が開く。そして炎剣は爆発し、全身に激しい火傷を負うと共に吹き飛ばされる。
(容赦、ねぇな…)
俺はそれだけ心の中でつぶやき、意識を失った。4歳の体に全身火傷腹部貫通は、痛すぎたのだ。
「炎で傷を負ったのは、久し振りだよ。」
俺が意識を失ったあと、師匠はそう呟いて手首の切り傷を拭う。そして瓦礫に埋まった俺を掘り起こして背中に担いだ。
「お疲れ様、一生私の弟子でいてね?」
彼女の誰にもバレたことのない本性が、今まで誰にも向くことのなかった激重感情がアレンに満たされた瞬間だった。
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