【コラボ配信小説】悩む妖精
僕は伊藤乃蒼という名義で小説家をしている作家だ。主に妖怪や妖精などの幻想的な題材を書いている。
そんな僕とって妖怪や妖精はとても身近な存在だ。その妖精の一種である稲風から急にこう言われた。
「私の感情に抑揚をくれないか」
「は?」
いきなりの質問に僕はポカンと口を開ける。
稲風はコーヒーに詳しくこだわりのある妖精で、常に抑揚なくのんびりとしている印象がある。その本人から感情の抑揚をくれないかとは、どういうことだ?
「いや、抑揚ないのが稲風みたいな感じがするんですが。ひょっとして気にしてます?」
「今までは気にも留めていなかったんだが、最近はいろんな隣人さんと交流することがあって。比べてみると明らかに足りないんだ」
「ほうほう、なにが足りないと?」
「例えば、驚き。例えば、恐怖」
「まあ、稲風さんが驚いて逃げ惑う風景想像できませんけど。それが足りなくてなにが困るんです?」
「みんな違ってみんな良いという言葉があるが、時にはみんなと一緒の感情を抱いた方が良い場合もある。例えば、一緒にバカ騒ぎして笑うとかだ」
「なるほど……」
たしかに、稲風さんがバカ騒ぎでゲラゲラと笑う印象はない。少し離れて微笑んでいる印象だ。
「ふむ、ぶっちゃけると。人の輪に入りたいという感じです?」
「細かく言うのなら、他者と同じ感情を共有したい。感情共有が足りなさ過ぎて困っているんです」
「あ~僕の不得意分野の音がする~」
とりあえず、僕の意見を述べる。
「そもそも、感情を他者と共有するなんて無理。共有しているなっていう疑似的なその場の雰囲気は分かるけど、完全理解や共有は僕には無理。だって、他人だし。僕じゃないし」
「じゃあ、その言葉を借りるんだったら。その場の雰囲気に飲み込まれてみたいかな」
「あ~その場のノリと勢いのビックウェーブに乗る感じ? 簡単に言うと、流動的かつ軽い同調圧力みたいな感じ」
「ここでの問題は、そのノリを受け入れる目的が私が楽しむためという身勝手なものだということですね」
「ほうほう、人って身も蓋もない言い方するとわりと誰もが身勝手じゃない? 自分のやりたいことをやって、やりたくないことはやりたくないと叫んで、じたばたしてる印象があるよ。稲風さんが身勝手で相手に迷惑かけないんだったら身勝手でもいいと思うけどなぁ。相手にその身勝手さで迷惑かけてるの?」
「おそらくは迷惑になりうる行為全般に対して自身が制動をかけている。のかもしれない」
「ふむ、なるほど。稲風さん的にはその制動をぶっこわしてもっと抑揚というか……解放を付けたい感じ?」
「まさに、その通り」
「むむむ。これは安直に、じゃあ解放しなよって言って解放できるものじゃないからなぁ……そうだな……とりあえず、ああこうなりたいなっていう人見つけてみたら? もっと隣人さんと関わって、こういう感じの人になったらもっと自分が解放されるなっていう理想の人を見つけてみたらいいと僕は思うよ」
「ふむ、目的あれば目標ありですね。話して正解でした」
「とりあえず、悩んだら誰かに聞いてもらえばいいと思うよ。とりあえず、僕はオレンジジュース入れるからコーヒー飲む? 長くなりそうだし」
「そうですね、ここで一息区切りといたしましょう」
なんだか長丁場になりそうなので、僕はとっておきのコーヒーと新鮮なオレンジジュースを用意することにした。
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ニコ生で配信しながら即興で書いている小説を載せる所 伊藤乃蒼 @noa4268
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