エピローグ
『聞こえてますか? 』
インカムから聞こえるのはショーコちゃんの声。
『うん、音質良好』
『こっちも
『聞こえるよ』
『俺も大丈夫』
4人それぞれの返事が返ってきた。皆バラバラに配置している。
『スイさんの誘導がまもなく完了します』
『みんなー!! ゲリラライブ楽しんでいってねー!! 』『\( ᐛ )/Foooooooooooooo!!!!!!』
けたたましい外音が流れてきた。
『盛り上がってんねー』
『スイさん』とは誰か。ショーコちゃんより後に入ってきた
そもそも彼らは何者なのか? 分かりやすく言えば、この地に古くからいる妖怪の先祖返りである。
アマノちゃんは黒猫の姿で生まれて大変おうちが騒がしくなったようだが、物心ついた時には今の姿になっていたらしい。
ダイズさんとヤシロくんは先祖返り率が高いご家庭に育った為にあまり覚えていないらしく、耳としっぽを隠すのもお手の物だ。
しかし、フクロウさんはずっとフクロウさんで、いつから存在しているかわすれてしまったらしい。
話題のスイさんは最近目覚めたので少し苦労しているという。だけど、既にご当地アイドルとして人気を博していた為に切り替えも早い。
そんな彼らを支える立場になったショーコちゃんはとてもメンタルが強くなり、張り切ってみんなをサポートしている。
そしてもう1人……。
「
フクロウさんが待機している大木の下でキャンキャン吠える犬がいた。
ある日突然フクロウさんの前に現れ、迷い犬と思われた、愛称軍曹或いは大佐である。
「吾は神である! 吾が軍は主を高みへと誘うであろう! 」
彼は紛れもなく
「おうちに返してきなさい」
フクロウさんの力で飼い犬だけ毎回返すのだ。
「吾が軍が減ってしまうでは無いか! 」
野良犬ならいいが、飼い犬は飼い主さんが来てしまう。
ミリタリーオタクだと認識し、軍曹や大佐と呼ばれて可愛がられている最年少の男子高校生である。古狼族は族意識が高いためか、彼が先祖返りした瞬間、人型に戻れないでいることに悩んでいた。
「大佐は俺といようね~」
颯爽と現れたヤシロくんに抱えられて去っていく。
「吾は! 主が! いい! 」
吠えるが叶わない。
『ヤシロさん、誘導完了しました。お願いします』
『はいよー! 』
───ブゥンと鳴ると外音が遮断された。結界を張ったのだ。
基本的に彼の仕事はこれだけだ。そもそも戦いの場に出ることを厭い、遊んでいたいお年頃である。しかしながら、もう学生では無いのでお仕事と割り切っていた。
『アマノちゃん、先陣任せたよ』
『了解』
さてさて、全員集合の今回のお相手は団体様だ。
ショーコちゃんと出会った頃に比べて、早期発見が飛躍的に向上したからこそのこの対応だ。
遠隔後方部隊、今のメンツ以外が所属する部隊である。表に出てくることは稀にしかないので存在だけ仄めかしておこう。先祖返りはこの街でだけではない、とだけ。
有象無象の異形がある裂け目からズリズリ這い出してくる様は、控えめに言っても気持ち悪い。出れば出るほど広がるので、さすがのアマノちゃんでも取りこぼしは出てしまう。
『つっ……フクロウさん! 』
『え?! アマノちゃん怪我したの?! アマノちゃんのお母さんに怒ら……』
『いいからやって! ダイズさんちょっとお願い』
『はいはい。プッ、フクロウさんオカンかよ』
『オカンはないでしょ……、はーーい』
バサリと潜んでいた大木の中から現れたのは───巨大な梟だった。てっぺんまで行き、少しづつ羽ばたきを強くしていく。
アマノちゃん包囲網を抜けた異形たちが場所を問わずバランスを崩し始める。小さな嘴を開くと超音波らしき揺れを観測。その場でぷるぷると高速振動を始める残党。数秒後にはノイズのようにブレて消えていく。
『取り残されてない? 残らず消えた? 』
『……大丈夫です! つつがなく終了! 皆さん、スイさんもお疲れ様です! 』
『……終わったの? じゃあ、あと一曲で〆るよ』
『だそうなんで後始末5分以内です』
慌ただしく現場整備をした後、結界を解除した跡地には何事もなかったような日常が広がっていた───。
fin~~
【この物語に登場する人物にはモデルがいます。しかしながら、100%の本人像ではなく、物語に寄せているのでフィクションとお捉えください】
夕闇の守護者 姫宮未調 @idumi34
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