最終話 真珠湾の黄昏
ーパールハーバー(真珠湾内)ー
度重なる日本の航空攻撃により、艦隊だけでなく工場施設、燃料タンク施設が破壊されてしまった。
最早、キンメル達には何をしても無意味だという無力感しかなかった。
そんな彼等の元に兵士が駆け付けて報告した。
「報告しますっ!!たった今、真珠湾上空に日本の水上偵察機が数機、現れましたっ!!」
その報告に、キンメル達は愕然とした・・・。
真珠湾上空には、水上偵察機隊だけでなく『神鶴』と『飛鶴』から発艦した零戦隊が護衛として飛行していた。
それが何を意味しているのか、キンメル達も嫌というくらい理解していた・・・。
ーダイヤモンド・ヘッドー
ダイヤモンド・ヘッドには、多くの島民達が避難していたが、人々が不安を抱え続けながら時間は過ぎていった。
やがて、無駄に時間だけが過ぎていった・・・。
そんな中、避難民の一人が声を上げた。
「何なんだっ!!あの船はっ!!」
周りにいた人々が、バーバス・ポイントの沖に視線を向けると、3隻の船が接近していた。
真珠湾口に接近しつつあったのは、戦艦『大和』、重巡洋艦『羽黒』と『那智』の3隻だった。
ー戦艦『大和』防空指揮所ー
『大和』の防空指揮所から、真珠湾の様子を見ていた遠藤の元に報せがきた。
「ヒッカム飛行場に、残存する機体が多数、あるとの事です。」
報告を聞いた遠藤は、
「そうか・・・。ならば、航空機の地上撃破は『那智』と『羽黒』の20cm主砲で充分だから2隻に任せよう。」
鼓舞は、「了解しました。」と答えて、第五戦隊に送信した。
更に遠藤は、『大和』艦長の高柳儀八大佐に指示した。
「高柳艦長、『大和』は予定通り真珠湾の軍港施設を叩く。速力は18ノットで頼む。」
高柳艦長も、「了解しました。」と答えて、乗組員達に指示を出していた。
やがて、鼓舞から遠藤に報告がきた。
「各艦、砲撃準備が整いました。」
鼓舞の報告を聞いた遠藤は、各艦に伝えた。
「各艦、砲撃を開始せよっ!!」
遠藤の指示により始まった砲撃で、『羽黒』と『那智』の砲撃でヒッカム飛行場の戦闘機は次々と破壊されていき、『大和』による砲撃で残っていた工場施設が次々と破壊されていった。
また、『大和』の砲撃により乾ドックに入っていた戦艦『ペンシルベニア』も徹底的に叩かれ、艦橋などは原形を留めていなかった・・・。
その後、締め括りとして、『大和』、『羽黒』、『那智』の3隻による砲撃で、真珠湾の東岸と湾口の水道に面した場所にあった燃料タンク施設も、一つ一つ、確実に砲撃で破壊されていった。
破壊された燃料タンクからは大量の重油が流出していき、随所に岸壁を流れ落ちる黒い滝となって真珠湾の海面を浸し始めた・・・。
真珠湾の所々で、黒煙が立ち上がる光景を『大和』の防空指揮所から見ていた遠藤に鼓舞が言った。
「真珠湾の黄昏ですね・・・。」
それに対して遠藤は、
「文字通りのな・・・。」と答えた。
やがて、遠藤は全艦に通達した。
「これより第二航空艦隊は、日本に帰航するっ!!」
こうして、真珠湾の戦いは幕をとじたが、まだ、日米の戦いは始まったばかりであった・・・。
ー 完 ー
鶴翼が放つ海鷲達ー真珠湾1941ー @kakuyoku-no-tate
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます