エピローグ:魔王城にて。

 ああ、なぜ予算が少ないかだって?


 それはもちろんライヒに平和主義をやめてもらうためだ。

 便利なスライムたちに魔王軍の仕事を受けてもらうためだ。

 

 いや、計画は上手く行かなかったがまだチャンスはあるさ。

 反乱を起こされるのは困るから成功報酬と予算増額は最低限行う。

 それでも大丈夫なはずだ、上級冒険者を返り討ちにしたとなればより強力な冒険者がやってくるだろうからな。

 

 今回はだめだったな、危険因子であるシェーンが生き残ってしまった。元々自分を犠牲にするタイプだ、それに会計がシェーンなら間違いないだろう。

 シェーンは『蘇生の核』を買わない。

  

 追加命令だ、あいつらの近くの魔族については引き続き雇用の最低賃金を上げておけ。

 もちろん魔王軍は格安で派遣してやろう、どさくさ紛れにシェーンを殺せる可能性が上がるからな。


 いや、ライヒは私の大事な弟だ。

 その弟の大事な人を殺してしまうのは非常にもったいないからな。

 だがシェーンは攻撃力が高すぎる。


 正々堂々なら勝てるが不意打ちされたら私でも死んでしまう、危険因子なのだよ。

 人間に戦いを吹っ掛けた原因が私だと知られたら暗殺に怯えなくてはならない。

 他の魔族や人間なら私の自然防御を突破できないがシェーンは別だ。

 それに、平和主義のスライムたちは非協力的だ、ライヒもそう。


 弟については最悪だ。ポテンシャルでいえば四天王より強いのは間違いないからな。

 だが平和主義ゆえに力を付けていない。


 一応力は覚醒したようだがな。迷宮でもっと力を付けるといい。

 そしてシェーンには死んでもらう。

 ライヒとスライムたちは人類を恨み魔王軍に協力してくれる。

 シェーンという危険因子も消える。


「魔王様、連絡です」


 魔王城、その玉座にて。

 羽を生やした魔族が来ていた。


「ふーん、ライヒが上質な『蘇生の核』を二つか。まあ、シェーンの分だな。流石に愛が重すぎるぞ、ライヒ」


 魔王は手に持ったワイングラスを揺らす。

 香りを楽しむと一口。


「どうされますか?」


 魔王は人差し指を連絡係に向ける。

 指から黒い線を放つ。

 連絡係の足元から煙が立つ。


「納期を遅らせろ。シェーンは冒険者に殺させる。ライヒは私の弟だ。私より強くなって私を殺す可能性だってある。あくまでも人類最強の敵となるべきだ。もっと人間を恨め」


 魔王はワインに飽きてグラスを投げた。

 玉座を立つ。

 愉快そうに自室へ戻った。




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魔王様にダンジョンを作れと命令されましたが、低予算ってマジですか? アメノヒセカイ @WorldONRainyDay

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