ハンターが狩られる
釣ール
有段者
近年の出生率低下と人手不足は深刻だ。
親族は誰もやりたがらない「封印儀式」を放棄し、残った親族はバイトを雇って封印術を継承させた。
封印されているモノは
「いやあお兄さん細いのに草刈りや肉体作業もできるし、何よりクマ追い払えちゃうんだね。
差し支えなければ何をやっていたか教えて欲しいなあ。」
モノを封印する親族も依頼人であるおじいさん一人で、おじいさんも子供がいない夫婦で奥様に先立たれ、またこの封印儀式を断ったのに遺言書で指名されてしまったのでしぶしぶ実家に戻ってバイトを募集した。
条件は「継承儀式を秘密にすること。」で、大半のバイトは怖がって逃げていった。
そこで
「昔、立ち技競技やってました。」
「へえ立ち技?う~~ん、あれかい?
寝たり組技使ったりする格闘技じゃなくてボクシングみたいな、そういうやつ?
おじいさんも昔はテレビで見てたけれど今はこんなに細い男の子があれだけ動けるんだねえ。
でも現役じゃないのか。
随分若いのに。
たしか二十歳でもないんでしょう?」
波飴は一身上の都合で立ち技競技を辞めた。
非日常で暮らしているとはいえ、身体の細さでよく馬鹿にされていて何度も喧嘩をしてはSNSに晒されかけて、一人で拡散を止めていた。
そこをジムの会長に誘われてプロ入りし、何度か連勝。
だが興行も競技もどこか波飴とはズレた世界で、それでも戦えるのは満更でもなかったがどうせなら裏で戦いたかったので表舞台から姿を消し、今なお終わらない怪奇現象を解決に向かわせるためにこの腕っ節を異界の連中にぶつけようとバイトでこの場所を見つけた。
封印儀式の継承はもっとストイックなものかと期待していたが波飴にとってはそこまでの労力はかからなかった。
コンプラのために内容の
そりゃあ他のバイトは辞める。
バイト仲間と喋りながら現代社会の変化によって封印が解けたモノを封印どころか狩ってやろうとアドレナリンがあふれ、杖をふるう。
おじいさんが案内した暗い洞窟の中には、隠された生き物がたくさんいるかもしれなかった。
限られた洞窟にしか生息しない生物もいて今まで環境や自然に興味がなかった波飴はこの仕事が終わったら自然に関する講演会に出席するつもりだった。
ファイターは意外と虫が嫌いなんでね。
食べる場合は別かもしれないが。
そういった関心をもついい機会と奥へ奥へと挑む。
すると魚人のようなヒレ、ウロコ、姿勢のモノがいた。
もっと手強そうかと思っていたが怖がりで少し攻撃するのに抵抗がある。
「お兄さん。油断しないように。
ある程度はしつけられたらしいが本領発揮されると危ない!」
するとおじいさんへモノは一瞬で近付き、波飴は急所を杖でつついて追い払う。
「お兄さん凄いね。
あと少しで噛まれるところだった。」
「結界をはやく!」
おじいさんは波飴の人遣いの荒さには怒らず、結界を張り、波飴はアドレナリンを調整して杖をモノの前に持つ。
「ハンターは狩られる。
モノだったか。
俺は端末狩りのハイキッカーって言われててな。
それでも何度か自分の端末を壊されて人を呪わば穴二つって言葉の意味を知ったよ。
つまり俺が言いたいのは…!」
杖を持ち、モノと蹴り合いと避け合いになった。
要領がよいタイプではなかった波飴は相手の端末を狩るさいに自分の端末も壊され、物欲がなくてためた貯金を何度か使って機種変をしている。
『ハンターは狩られる』をモットーに必ず狩る自分も怪我を負うことを利用して相手には致命傷を与え、共にダメージが
ハンターは狩られる。
だがダメージを与えて油断させるためにわざと狩らせている!
モノが弱りきった瞬間にハイキックで気絶させる。 こんなものか。
現実の怪異は。
だが悪い事をした。
死にはしていないから杖で散々聞かされた文を読み上げて厳重に封印した。
「いやあお兄さんを雇って良かったよお。
これからの時代は血統じゃなくて、継承をちゃんと行っていかないとね。」
もう血統の時代ではないとはいえ他人に継承出来るのなら早くやっても良かったのにと波飴は言わない。
給料は思ったより高く、これでまた別の怪異現象を継承したこのスキルを応用して使えば食いっぱぐれねえと久しぶりに一人笑う。
人間以外にやばいものは確かにいない。
だが人間がこれから減っていく以上、目立ってくる種族がいるはずだ。
生きて戦う。
明かされるもうひとつの種族との暮らし方と。
ハンターが狩られる 釣ール @pixixy1O
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