彼女は黒い人魚姫

みづほ

第1話 黒い人魚姫

親友からは浜辺梨央は黒い人魚姫と言われる。

彼女の幸せは歪んでいる……




タワーマンションの28階の部屋で梨央は床に押し倒されて跨がるように腹部に乗られ顔面を殴られている。

殴っているのは彼氏の畑中日向。

梨央は左腕で覆うように顔を庇って右手でがむしゃらに殴り返した。

梨央の反撃は当たらなかったが日向は少し怯んで強く抑えていた力が弱まり梨央は股の隙間から体が抜け出せた。

梨央は四つん這いになりながら玄関に近づいたが日向に足首を掴まれて引きずり戻されそうになって梨央は足をバタバタさせてながら日向の手から逃れる。

梨央は四つん這いになりがらまた前に進む。

しかし日向が足を引っ張り梨央の手の爪がギギーッと床を引っ掻いた、その時に爪が一枚剥がれ落ちて床は血が滲む。

梨央はあたりの痛さで叫ぶ。


「ああああああっ」


その時、玄関のドアが開いた。

玄関を開けたのは梨央の兄の浜辺嶺央。

梨央は嶺央が来て助かったとホッとした。

梨央は涙を流しながら嶺央を呼ぶ。


「嶺央兄!」


嶺央は怒って叫ぶ。


「梨央に手を出すな! おい!」


嶺央の後ろからゾロゾロと厳つそうな5人の男が入って来て日向を囲う。

日向は状況が分からなくて呆然としていた。

すると日向の両脇を2人の男性が抱え上げて梨央から引き離した。

さらに女が1人入ってくる。

その人は嶺央の秘書の輝羅。

輝羅は梨央を抱き抱えるように起こした。

嶺央は梨央に近づき体を気遣う。


「梨央大丈夫か? 俺が来たから安心しろ」


力尽きたかのような声で梨央は答えた。


「嶺央兄……ありがと……」


日向は狼狽えながら叫ぶ。


「勝手に入ってきて何だよ!」


嶺央が日向に近づいて来て言う。


「俺に無断で入ったのお前な」


日向は嶺央の言っている意味が分からない様子でキレながら叫ぶ。


「はあ? お前誰だよ!」


嶺央は落ち着いた様子で答えた。


「梨央の兄……ここ俺のマンションなんだけど……テメェはここで何してた?」


日向は威嚇するように怒鳴る。


「ああ"?お前に言うかよ!」


嶺央は鼻で笑ってから日向に状況を教える。


「自分の口で何やったか言えねぇのか? 防犯カメラ……警察行くか?」


嶺央は天井にある防犯カメラを指差す。

日向は焦りながら言う。


「アイツが悪いのに何で俺が!」


嶺央はそれを聞いて鋭い顔つきで言う。


「そうか……じゃあ選べ……山と海……どっちがいい?」


その姿を見て日向はバクバクと心拍数が上がり荒い息遣いになり恐怖を感じて、恐怖をかき消そうと怒鳴った。


「行かねーよ!!」


嶺央は真顔で言い放つ。


「じゃあ……ここでいいか!」


日向は反射的に声を出した。


「はっ!?」


だんだんと日向は顔が怖ばる。

嶺央はニヤッとして5人の男に指示をした。


「おい! タオルを口に入れろ」


5人の男が指示に従い日向を抑えながら口いっぱいにタオルを詰めた後に結束バンドで手と足を縛った。

秘書の輝羅がここを去るように声をかける。


「梨央ちゃんは病院に行きましょう」


輝羅に体を支えてもらいながら梨央は日向を見た。

何が始まるのか輝羅に質問しようと声出したが途中でやめた。


「あの……」


梨央は下を向きながら部屋を出る。

輝羅が優しく声をかけた。


「梨央ちゃんは何も心配しなくていいから行きましょう」


梨央にはこのような事が何度もある。

間城明里から男性を紹介されると流れでお付き合いして彼氏がDVになる。

偶然?いや偶然ではない……




大学のベンチで明里と梨央は仲良くしゃべる。


「梨央ちゃん最近は日向くんとはどう?」


梨央は思い出したかのような顔で答えた。


「終わったよ!」


平気そうな梨央を見て安心して明里は言う。


「へー良かったじゃん」


梨央は日向とは縁を切った。

もう二度と梨央の前には現れない。

いつも梨央は兄に助けてもらう。

莉央にとって助けてくれる兄はかっこいい存在だ。

明里が話題を切り出す。


「ねぇ2年の田中くん知ってる? 彼の元カノから聞いたけど手をあげるヤバイ奴らしいよ 次は彼にする?」


梨央は笑顔で答えた。


「いいかもね♡」(日向の時は殺されるかと思ったけど嶺央兄が入ってきた瞬間は地獄から天国みたいな感じで……あの爽快感がたまらないし 日向はあれからどうしたのかな? 嶺央兄に何らかの罰を与えられたに違いないけど……嶺央兄も容赦ないが日向がDVをしなければこんな事に……やっぱり私は嶺央兄に愛されてるのかな……また守ってほしい……)




両親が事故死して梨央と嶺央は2人だけの家族になり嶺央が梨央の親代わりだった。

嶺央に守られるたびに梨央はとても幸せで最高の気分だった。

梨央は家族の愛に飢えて狂っている。

幸せを感じる為に黒い人魚姫は復讐の名目で利用できる男性を探している。


「田中くん……私……田中くんが……私とお付き合いしてくれませんか?」


あなたも黒い人魚姫には気をつけて……

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彼女は黒い人魚姫 みづほ @ebetennmusube

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