聖人君子のごときおぞましき所業
見くびってもらっては困る。私は親族・知人・友人に責任を押し付けるようなんて考えていない。そんな勇気の持ち合わせはない。まして、過去の自らの行いを見つめ直し自分の責任を認めるなんて、聖人君子の如きおぞましい所業に手を染められるはずもない。
まったく理解者が聞いて呆れる。いい機会だから教えてやろう。
私は責任と名のつくものからは徹底的に目をそらすことにしているのだ。
その徹底ぶりたるや、昨日、取引先のミスで生じた装置の不具合についても責任を追求することができず、なぜか私が平謝りして修理してもらったくらいだ。
私は他人が責任を追求される姿すら見たくないのである。
自分の過去の責任などもっての外だ。
つまり私の願いはこうである。
私が顔も見たこともないどこかの誰かに、私の目が届かないところ、例えば秋芳洞の立入禁止区域とかそのあたりに私の責任を持っていて、人知れず処理してほしいのだ。
*
どうしてそこまで責任というものを恐れるようになってしまったのか。僕は不思議でならない。責任とは期待だ。問題を解決できると思えばこそ、相手に責任を任せるのだ。問題を解決できない相手には、誰も責任なんて負わせない。まあたまに責任という言葉を使って他者をいじめるのに一所懸命になっている者も見かけるけれど、そんなのはただのかわいそうな人達だ。放っておけ。もちろん全部の責任に答える必要だってない。責任も期待も相手の都合だ。応えるかどうかは君が決めていい。全部みないふりをするのだって自由だ。富士の樹海に埋めてきたって構わない。
けれどもどうだろう。
中には応えて見ても良いと思える期待もあったんじゃないだろうか。
君はどうして取引先の人に謝ってまで装置を直そうとしたんだろう。自分のせいじゃないのに。
君はどうして小説なんか書きたいんだろう。書かなくたって生きていけるのに。
そんなふうにして君は誰のどんな期待に応えようとしているんだろう。
良かったら聞かせてほしい。
君を心から応援する者、僕より。
そこらのおっさんの日記を読む寛容さが世界を救うと思うのです 坂上向 @koh_sakagami
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