ロザリオ

たちばなつき

第1話

横顔に窓から光 朝八時、文庫本越し会える神様


内側に羊が住んでいた頃の名残のように柔らかな音


神様は教室の隅眠そうな顔をしたままスカーフ直す


透過する 「ステンドグラスみたいだね」「欠けたフリして一緒にいよう」


『おそろい』が増えてゆくたび境界が曖昧になる神様と僕


君の頬、光の粒が輪郭のように光るね 生きてて欲しい


確証の無い思いだよ それなのに手を離せずに運命と呼ぶ


階段室 淡い光に赦されて手を繋ぐ君 指、絡めて


これは鍵 あなたと私だけの国 夢が醒めても壊れぬ祈り


赦して、と 唱えるよりはこの部屋で報われぬまま愛し合おうか


懺悔室 明日からはもう呼ばない名 それでも今は神様でいて


朝焼けが凄く綺麗で泣けるよね このまま僕と一緒に死んで


窓辺から天使が身投げする夜明け 誰にとってのハッピーエンド?


ロザリオを頼りに君の名を叫ぶ さあ、唱えよ!と鳴る鐘の音


灰色の空の下にはもう枯れた薔薇の冠だけが残った


泣いている時だけ会える横顔を忘れたくない 目が腫れるまで


花弁だけ枯れ落ちてゆく百合の花 此処には二度と咲かないあなた


切り口が溶けて醜くなる日々を「花みたいね」と無遠慮な人


まるでまだ生きてるみたい 減る水を見つめて気付く 君は透明


君がもうくれなくなった飴は明日あす終売になる 寂しくないよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロザリオ たちばなつき @tachibana_tk_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画