十四話、協(強)力体制。
空の青が薄まり、徐々に緋色を混ぜ始めた夕刻。
異変の生じていた王都南貧民街は一部瓦礫の山と化したが、概ねは元通りとなった。住民の多くは力を持たない弱者であるため、危険に寄らず関せずと多くが遠くへ逃げていた。一部壊れた建物周辺に住むものだけが遠巻きに瓦礫を観察している。
そんな、複数あるボロ山の一つが急な衝撃に崩され、大小の石材を四方に飛ばす。
土埃で煙る静かな貧民街に、ジリジリと異様な音が響く。
重い金属を無理やりに引き千切ったような、雷を重ね合わせた鈍い落雷のような、空間を引き裂く轟音が響いた。
驚いた住民が逃げ惑う中、罅割れ破砕した空間から人影が現れる。
「――ゃぁぁああああ!」
「ふ、ん」
煙を破って現れたのは、全力の肉体強化により音越えを維持したままのソウジンだった。背には紺の髪を靡かせた女。ぎゅぅぅっと全力でしがみついている。
ダンジョン内では周囲への被害を無視して走っていたので、外に出た今も衝撃波はまき散らしたままだ。急に止まるわけにはいかず、徐々に強化を解きながら瓦礫を吹き飛ばす。乾いた地面が抉れ、舞い上がった土埃により視界が遮られる。
背中の荷物がけほけほと咳き込み小さな文句を言ってくる。
とりあえず無視し、注目を避けるため煙に紛れて場を離れる。ラブリィから受け取った魔力は余っているが使わないでおく。肉体強化は完全に切った。
跳ねて跳ねて跳ねて、音を削って近くの建物を駆け上がる。
背にへばりついていたラブリィは適当に降ろし、身を屈めて周囲を観察する。
「……ふむ」
「……んぅ」
衣擦れと共に、にじり寄ってくる気配。
「せ、ん、ぱ、い」
こしょりと耳元で話しかけてくる。
いつも通りと言えばいつも通りだが、ダンジョン内と比べてずいぶん元気に聞こえる。地上に出て安心したのだろうか。少しは優しくしようと思うソウジンである。
「なんだ」
「私たち、戻って来ましたね」
「そうだな」
「きゃふふ、約束、覚えてますかぁ?」
「約束なんてしたか?」
「む。しましたけど?先輩が……んふ、先輩がぁ、私にたーくさんちゅーしてくれるって♡」
「ふむ……」
前を見る。
建物の上からだと景色がよく見える。そこそこ高い建物だったから近場の貧民街一帯を確認できる。先ほどソウジンたちが出てきた場所は既に煙も晴れ倒壊した住居が目立つ。視線を流すば、ちらほらと崩れた建物の群れが目に映る。
魔力感知も併用していると、斜め前方に妙な色を見つけた。
魔力自体は大きくない。だがピンク色だ。遠目だが見覚えの――いや、見覚えしかない桃色は非常に目立つ。
「ふふふ、せんぱぁい。今なら特別にとぉーってもすごいちゅー……お返ししちゃいますよぉ? さっきまで、ずぅーっと先輩の首にちゅーって吸い付いちゃってましたし……♡ んふ、こ、こ。跡、残っちゃってますね。赤くなっちゃって可愛い先輩……♡ 私の唇にめろめろよわよわぁ♡ な先輩はぁ、何をお望みですかぁ?」
どう動くか考える。向こうはまだ気づいていないようだ。それもそのはず、こちらは魔力をかなり消耗し、姿も隠してわざわざ探さないと見えない位置にいる。向こうも向こうで幻惑幻覚の類でなければ残存魔力がずいぶんと目減りしている。
何にしても、ピンクロリのところへ行くのは確定だ。問題は……。
「ひゃぅ、ちょ、ちょっとせんぱ――ぇ、か、顔近くないですか?」
「ラブリー」
さっきからソウジンの耳元でこしょこしょ喋っていた女に話しかける。
急に横を向いたからか、ほんの少し顔を動かせば唇が重なってしまいそうだ。頬に触れる吐息が熱い。
「向こうにロピナがいる。俺は行くが、お前はどうする?来るなら
保険をかけつつ返事を待つ。夕日を浴びて赤らんだ顔のまま、ラブリィはこくりと頷いた。
頷き返し、先に行くぞと声をかけて屋上を離れる。屋根の
魔人を逃がすわけにはいかない。ダンジョンがどうなったのかも気になる。生徒会の行方、ガフィンの捜索についてもだ。洗い浚い吐いてもらおう。
住居の屋根を渡り、十秒も経たずロピナの上を取った。
こちらを見上げるピンクの魔人。特徴的な桃色の瞳がソウジンを捉える。驚きで目が丸くなっていた。無言で見た目少女の顔の上に着地する。
「ぷぎゃ」
くぐもった悲鳴が聞こえる。反応が鈍い。
どうにも、ピンクロリは思った以上にダメージを負っているらしい。
足をどけ一歩下がり、ボロくなった服と萎れているツインテールを見る。前者はともかく、後者は意味がわからなかった。
「はぁぁぁ……アタクシ様にこんな不埒なことするなんて万死に値するわ。……けど今、アタクシ様疲れてるの。魔力も籠ってない攻撃なんて効かないわ。ソウジンちゃん。また今度相手してあげるから、今はどこか行きなさい」
むくりと起き上がり自分勝手なことを言ってくる。しっしと手を振っている。
覇気のない瞳がソウジンを見つめていた。
「そうはいかない。ダンジョンやヘルトリクス、ガフィンについて話してもらおう」
「……あぁ、そうだったわねえ。ダンジョンなら壊れたわよ。オマエの槍で貫かれたせいで、アタクシ様の身体はボロボロだったの。フフ、ヘルトちゃん、オマエの思っている数百倍は粘っていたわ。結局アタクシ様負けちゃったし。まあ敢闘賞ってところね」
「……やけに口が軽いな」
「ウフフ、まあねえ。ここでソウジンちゃんに会った時点で、
顎に手を当て、ころころと笑うピンクロリを見る。
愛くるしい仕草は完全に少女のそれだが、理解して演じているのを考えると心が痛むこともない。
「別に俺はお前を殺すつもりはないぞ」
「はぁ?」
「え、そうなんですか?」
トン、と背後に降り立ったラブリィが尋ねてくる。そちらに顔は向けず、怪訝な表情を浮かべるロピナに続ける。
「ダンジョンから出られた。ヘルトリクスたちも死んでいない。疑問の答えも得た。残りはガフィンと南東支部の壊滅に関してだが……」
「ガフィン? 誰よ、そのつまらなそうな名前は」
「ダンジョンの核か主にでもなっていたはずの男だ。カルフィナの兄でもある」
「――あぁ。そういえばそんな名前だったわね。それが?」
「どこにいる?」
「知らないわよ。ヘルトちゃんが助け出したんじゃないの? アタクシ様、元からあったダンジョンを利用させてもらっただけだもの」
「ふむ……」
ぷらぷらと投げだした足を動かしていて、なかなかに豪胆な女だ。
ちらと見ると、胸元のハート穴を指で広げニヤリと笑っていた。そんな薄い胸で誘惑とは笑止。鼻で笑うと頬を膨らませた。あざとい魔人だ。
「ラブリー。どう思う?」
「どうって……この魔人の目的は?」
ふむ、と頷く。そういえば聞いていなかったかもしれない。
言われてロピナを見ると、不満げな顔をしつつも疑問に答えてくれる。
「小娘の質問に答えるのは癪だけど、アタクシ様は優雅で上品で親切なロピナ様だから教えてあげる。目的は魔人らしく後方国家の調査よ。よわよわだったら壊滅させてあげようかしら、とも思っていたわ!」
「なぜ?」
「ウフフ、なぜも何も、そんな弱っちいのに生きているのも辛いでしょう? アタクシ様の慈悲よ?」
くすくす笑って、心底不思議そうに言う。
魔人らしいな、とソウジンは思う。
人間が魔人族、魔獣族と三つ巴の戦争を繰り広げること数百年。
戦争の最前線に位置する国家は前線国家と呼ばれ、リリジン王国のような争いから遠い国は後方国家と呼ばれている。
魔人含め魔獣と数え切れない戦闘を熟してきたソウジンにしてみれば、この程度の価値観の違いは分かり切ったことでしかなかった。
憤るラブリィを手で押さえ。
「つまり、お前の目的は魔人らしく人間の殲滅か」
「ん、ソウジンちゃん、アタクシ様のお話聞いていた? 頭お馬鹿ってよく言われるでしょお?」
「言われねえよ」
「えっ」
「お前もどうしてそんな目で俺を見る」
「きゃぅ」
疑いの目を向けるラブリィは小突き、改めてロピナと向き合う。
「アタクシ様、結構優しいの。ソウジンちゃんとかヘルトちゃんみたいな強い子はちゃあーんとアタクシ様の下で育ててあげるわよ? 弱っちい人間の殲滅より、強い子や強くなりそうな子を下僕にすることが目的ね」
「……なるほど」
なんとなくこの魔人の思考が読めてきた。
要するに後方国家でぬくぬくしているちょうどいいぐらいに強い人間を漁りにきたわけだ。どんな人間か。ソウジンみたいな人間である。
「ウフフ、その点ソウジンちゃんは最高だったわね! たまたま街中で見かけて声かけてダンジョンに誘導したけど、思った以上に強かったわあ」
「たまたまだと? 占術はどうした。朝焼けだ夜空だ宣っていただろう。あれも嘘か?」
「え……」
背後でショックを受けている女がいるようだが、いつものことなので気にしないでおく。
ロピナはソウジンの物言いにムッとしたようで、唇を尖らせて否定する。
「嘘じゃないわよ。アタクシ様、魔法なら手広く学んでいるの。勤勉優秀なロピナ様なのよお? 占術だって一通り修めているわ。朝焼けも夜空も本当のことよ。アタクシ様に良い縁だーって出るから来たのに……フフ、想定外しかなかったけれど、ソウジンちゃんと知り合えたのは良縁だったかもねえ」
流し目は無視。ウインクも無視。
後ろでほっと息を吐き、「私たちやっぱりお似合いみたいですね!」とか言ってくる後輩も無視――できず、ぐいぐい服を引っ張ってくるので、しょうがなく向き直る。
「ふふふー、私たち、お似合いですって! よかったですね先輩! 嬉しいですか?」
「ああ。嬉しい嬉しい」
「えへへー」
にへらと笑っている。適当な返事だとわかっているだろうに、嬉しいものは嬉しいらしい。ちょろい女だ。
後ろの対処を終え、再度ロピナを見る。
「ねえソウジンちゃん」
「何だ」
「オマエ、"音越え"使えるでしょお?」
「ああ。見ていたんだろう?」
「ウフフ、ええ見ていたわよ! 久しぶりに興奮しちゃったわあ。だから聞くけど、オマエ、どうしてこんなよわよわな国にいるの? アタクシ様の下僕にならない?」
「前線から逃げてきたに決まってるだろ。下僕にもならねえ。それよりロピナ、ダンジョン近くで街の住民を操ったのはお前だな?」
「そうよお。ソウジンちゃんが兵士の服着てるのはわかっていたもの。フフ、国の兵士は何の罪もない人を殺したりなんて、できないでしょお?」
「死霊術もか?」
「やめてもらえるう? アタクシ様の崇高な魔法は死霊術なんて汚いものじゃないわよ。発情してアタクシ様を襲ってきたり、強くなりたいーってお願いしてきたから叶えてあげたの。ちゃあーんと同意は得ているわあ。フフ、それにアタクシ様、弱い人間の相手してあげるほど無分別じゃないの。ね、ソウジンちゃーん」
ぱちりと飛ばされた桃色ウインクはサッと避けた。背後のラブリィがぎょっとして飛び跳ねている。面白い。
しかし、これで大体わかってきた。とりあえずロピナには一つ訂正をしておく。
「ロピナ、残念だがこの国の兵士は何の罪もない人でも平気で殺すぞ。よかったな、俺が例外で」
ぽけっとした顔のロピナを警戒しつつ考えをまとめる。
ピンクツインテロリ魔人、ロピナの目的は後方国家――リリジン王国内部の強者探し。それも自分より弱い人間や将来強くなりそうな人間探しだった。
だからヘルトリクスは殺されず、ソウジンもまた殺されていない。ソウジンが想定外の強さだったためプランは崩れて負けてしまった。
ガフィンがダンジョンに取り込まれたこと自体は偶然。生徒会をダンジョンに誘き出したのはロピナ。カルフィナに化けてソウジンとラブリィを貧民街に誘き出したのもロピナ。貧民を利用したのもロピナ。
死霊術もロピナ、と言いたいが、どうもそれは中途半端に思える。ロピナを襲ったのがただのチンピラなら返り討ちにあった、で終わりなんだが……わからない。要検討としておこう。
本来貧民街とダンジョンが繋がる予定はなく、ガフィンの次元魔法暴走で生徒会とソウジンたちが鉢合わせることになった。結果、カルフィナの正体がバレて今の状況に繋がると。
「なら、王都警備隊南東支部を壊滅させたのもお前だな」
結局、貧民街はともかく大まかな死者はそこだけになる。ガフィンがどうなったかはわからないが、ヘルトリクスならどうとでもしただろう。
「はあ? アタクシ様そんなの知らないんだけど?」
当たり前のように発せられたセリフに、ソウジンは黙りこくる。
表情に嘘は見えない。今のタイミングで嘘を言う必要もない。ならばそれは、魔人ロピナにとって本当で――。
「――ぁ、まさかがくえっ」
声を聞いてぱっと振り返り、背に隠れていた後輩を。
「――ラブリー?」
そこに、見慣れた後輩の姿はなかった。
魔力の残光が、夕日に濡れてキラキラと輝いている。
☆
ラブリィ消失から数十秒。気配を探り、魔力を探り、近辺に痕跡一つ存在しないことを悟る。
「……どうなってやがる」
「――フフ」
思考の間隙に差し込む形で、ぬるりとした笑い声がソウジンの耳を震わせる。
顔を反転させ、地面に座ったままの魔人少女を見る。
「キャハハ、なあに? そんな情熱的に見つめちゃってえ。アタクシ様のこと、そんなに愛したいなら構わないわよ。ソウジンちゃんくらい強いなら人間でもいいわ! アタクシ様、とっても寛容なの。上でも下でもどこでも、好きなように使いなさい」
「……はぁ」
どこぞの後輩よりもひどい――いや同じか。同程度にひどい物言いに嘆息し、むっとしているピンクロリに問いかける。
「何か知っているのか?」
「ウフフ、教えてあげてもいいけど、代わりにアタクシ様の下僕になりなさい!」
「はっ、下僕にしたいなら俺より強くなってから言うんだな」
「は? オマエには負けてないけど? まだ引き分けでしょお?」
「なら今度本気で戦ってやるよ。お前も本気で来い、ピンクツインテロリ魔人ロピナ」
「ええ! いいわよ! アタクシ様を本気にさせたこと後悔しなさい!!――ん? いえ、ちょっとソウジンちゃん。オマエ今アタクシ様のこと何て呼んだ? ねえ?」
適当にあしらうと簡単に乗って来てくれた。相変わらず魔人族は挑発に弱すぎる。
「それよりロピナ、俺は魔力と魔法の制限で軛錠を掛けている」
「アタクシ様の――軛錠?」
「ああ」
「あんな自己満足……さてはオマエ、頭おかしいわね!」
「ラブリーにも言われたな。軛錠の条件は今いなくなった女、ラブリーを守ることだ」
「はぁ、あんな小娘をねえ……」
「ちなみにラブリーが死んだ場合、軛錠により俺も死ぬ」
「はぁぁぁぁあ!?」
「……命懸けと言ってしまったからなぁ」
「オマエ、やっぱり頭おかしいわね!!」
「黙れ」
宣誓は既に終えているので、あとは解錠キーワードさえ言えばソウジンの魔法は解禁される。魔力なら今の間に少々回復したのと、ラブリィから譲渡されたものが残っている。
「俺が死ぬ、つまりラブリーが死ぬとお前との全力戦闘をできなくなる。俺の不戦勝だ」
「は? アタクシ様の不戦勝でしょお?」
「俺はあの世でお前に勝ったと思い込んでおくから、俺の不戦勝だ。一人不戦敗したことを噛み締めて生きるんだな」
「ぐ……い、いいわ! アタクシ様はとぉぉっても心優しい素晴らしい魔人だから、オマエのしょうもない説得に頷いてあげる! ええ、ソウジンちゃんがちょおーっと強くて殺すのが惜しいとかではないのよ? わかってるわね!」
「ああ」
意外と良いやつだな、との言葉は胸に秘めておく。
魔人族にしてはと注釈も付くし、対話相手が強者に含まれればと条件も付いている。ほんの少し前まで殺し合っていた仲であり、絆されたわけではないが……。それでも、と微かな感傷を抱いて飲み込む。
「それで、ラブリーはどうなっている?」
「……ん、オマエは見てなかったけど、アタクシ様は見ていたの。あの消え方、それこそ分身魔法に似ていたわ」
「なに?」
「分身魔法よ。アタクシ様の写し身魔法の劣化版……とも言い切れないわね。どちらにも利点があるもの。けど分身魔法にしては魔力の構成が違うし、明らかにこっちが本体っぽかったのよね。……ふーむ、後方国家なんてゴミだと思っていたけれど、意外に使える?」
後半は無視して、分身魔法かと最低限の理解は進む。
ラブリィが魔力体……とはさすがに思えない。あれだけ触れて触れられて押し付けられてとしたのが魔力とは、些か以上に考えられないのだ。
「学園、と言っていたな」
「そうねえ。ヘルトちゃんがいる場所じゃない? 名前は……る、ルルリリ学園?」
「リリロロ学園な」
「フフ、そうそう。リリロロ……そんな名前だったかしら」
「……リリララか。リリララ学園だ」
「ウフ、オマエも間違えてるじゃないの。ウフフフ」
「……」
変に笑っている魔人は無視しておこう。考えるべきはラブリィだ。
消える直前、声だけしか聞けていないが、あまり余裕はない雰囲気だった。
こうして喋って考えている間にも死にかけているかもしれない。なら、さっさと飛んでさっさと助け出してしまった方がいい。分身魔法がどうとか本体がどうとかは、後で考えよう。
とりあえず助けないことには、ソウジンが死ぬ。それに……。
「夕飯を食べると約束したからな……」
「何か言ったあ?」
「いや、なんでもない。――よし、リリララ学園に行くぞ」
「そうね、いってらっしゃい」
「お前も行くんだよ」
「は? 嫌よ。アタクシ様疲れてるの。魔力もほとんどないし、この身体ボロボロだし、直すにも魔力回復させないといけないわ」
「これから魔法と音越えを併用するから、お前が魔法で周囲への影響防がないと死ぬぞ」
「はぁ? だ、誰が?」
「お前が」
「はぁぁ!?」
「行くか」
「ちょ、まっ」
「
「もおおお! わかったわよお!!!」
「――ちゃんと掴まっておけよ!」
返事は聞かず、飛びついてきた小柄な魔人を背負い音を越える。
一瞬、夕日沈む貧民街に光が舞った。目の眩むような光は瞬きを待たずに立ち消え、その場には何も残らない。人間も、魔人も、姿形残さず消え去っていた。
ただただ、ジジジジと、低い残響が木霊していた。
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