醒めざめる
仔羊
醒めざめる
懷かしい聲が聞こえる―――ゆっくりと思考が開けてゆく腦內に、亡き母の子守唄が聞こえる。
俺の母はよく、寢る前に子守唄を歌っていた。どこか
ちりん、と、風鈴の音がした。開け放した窓から生溫い風が俺の頬を撫ぜる―――俺の眠氣を拭い去るように、夜風は幾度か風鈴の音に合わせて吹いた。同時に、母が「おまえは誰よりも自由なのだから、好きに生きなさい」と―――そうやって何度も呟いていたのを思い出す―――そうだ、俺はその言葉を連れて、汽車で山ばかりの田舍から出てきたのだ―――。
家を出たはじめのころ、ひと月に幾らか手紙が屆いたのを覺えている。俺の家は決して裕福では無かったが、時折、仕送りも屆いた。仕送りの中身は米や干物ばかりだった。―――周りに比べて少食氣味な俺が、食べ物たちを腐らせてしまうことのないように、と―――。母の溫かい氣遣いを、仕送りや手紙から感じていた。―――
家を出て3年が経ったころ、少しずつ
婚禮から幾年が経ち、ちよは流行病でこの世を去った。母と同じように呆氣なく逝ってしまって、簡單な弔いをして小さくなった骨だけがふたりの
あのころから
今こうして、夢の
―――今夜は風がよく吹く。少し强い風が吹いて、ちりんと音が響いてから、
醒めざめる 仔羊 @B0kuze1-6
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