とびたいひよこ / 童話・朗読台本

よるん、

とびたいひよこ

 ひよこは、にわとりのあとをついていきます。

 ちいさな、細い足で、一生懸命に、ついていきます。


「お母さん、まって、まって。」

「あんたは、どんくさいねえ。」


 にわとりが立ち止まって、ひよこを待ちます。

 他のひよこたちは、にわとりが立ち止まると、ぱたりと足を止めました。


(遅れないように、頑張らなくちゃ。)


 にわとりが歩き出すと、他のひよこたちも歩き出します。

 その後を追って、ひよこは、たくさん足を動かしました。


 ひよこは、みんなより少しだけ、体が小さかったのです。

 足も小さくて、歩くのが遅いひよこでした。


(もっと足が大きかったらなあ。)


 ひよこは、他のひよこが羨ましいと思いました。

 まんまるで、体が自分より大きくて、にわとりに追いつくのも簡単そうでした。


(そうだ。体は大きくなれなくても、空を飛べれば、速く進めるんじゃないかな。)


 ひよこはそう思い立ちました。

 それから、特訓の日々が始まりました。

 ひよこは、バタバタと小さな羽根を動かします。

 でも、飛べる気配はありません。


(ぼくは、飛べないのかなあ。)


 練習していると、うさぎがそれを見て言いました。


「ひよこは、何を頑張っているの?」

「ぼく、空を飛べるようになりたいんだ。」

「ふうん。すごいね。頑張ってね。」


 うさぎは、それだけ言って、去っていきました。


(負けないぞ。)


 ひよこは、なんとしてでも飛べるようになってやる、と思いました。


 次の日、ひよこが練習していると、からすがやってきて言いました。


「やい、そんな羽根で、何をやっているんだ?」

「ぼく、空を飛べるようになりたいんだ。」

「できるわけないよ。諦めな。」


 からすは、大きな羽根をはばたかせて、去っていきました。


(やっぱり、無理なのかな。)


 ひよこは、悲しい気持ちになりました。

 それでも、ひよこは諦めませんでした。


 次の日も練習していると、お母さんのにわとりがやってきて言いました。


「見ないと思ったら、あんたは、こんなところにいたんだね。」

「お母さん。ぼく、空を飛べるようになりたいんだ。」

「どうして?」

「ぼくは、みんなよりどんくさくて、足が遅いから。飛べるようになったら、遅れずに済むでしょ?」


 にわとりは、それを聞いて、ひよこを抱きしめました。


「そうか、あたしがどんくさいって言ったのを気にしていたんだね。酷いことを言ってしまってごめんね。あんたの努力家なところ、あたしはすごいと思っているんだよ。体が小さくて足が細くても、頑張ってついてこようとしてる。とてもすごいことだよ。」

「そうなのかな。」


 顔を上げたひよこに、にわとりは、笑顔で頷きました。


「努力家のあんたは、きっと大人になったら、良いにわとりになるんだろうね。あたしは、それが楽しみなんだ。」


 ひよこは、ようやく、安心した気持ちになりました。


「ぼく、大人になったら、強くなれるかな。」

「もちろん。だから、たくさん頑張って歩くんだよ。にわとりは、足腰が大事だからね。」

「うん。お母さん、ありがとう。」


 それからというもの、ひよこは、一層頑張って、にわとりについていきました。

 他のひよこに遅れをとらないくらい、小さな体で、細い足で、頑張って歩きます。

 ひよこがいずれ、大きく足腰の強いにわとりになったのは、また別のお話。


 おしまい。


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とびたいひよこ / 童話・朗読台本 よるん、 @4rn_L

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