第24話 剣霊探しへGO!

 激動の一日から数日が経過した。

 学園ではレイシアナの言っていた通り、俺は同学年でもエリートが集うらしいSランクのクラスに入れられた。


 聞いた話によると、やはりSランクともなると他のクラスとは授業内容も一線を画すらしいのだが、肝心の授業は依然としてオリエンテーションや概要説明みたいなものばかりで実質的なところはまだ分からない。


 現状、唯一困っていることは事あるごとにレイシアナが話しかけてくることだ。

 新入生剣闘大会では準優勝という結果だったが、生徒会長の妹である彼女はクラスの中でも当然のごとくスター的な存在であるため、レイシアナが俺に声を掛けるたびに周囲の視線が集まり、こっちは冷や汗がダラダラだ。

 剣闘大会の後、自分としてはそれなりに突き放したつもりだったのだけど、なにがそこまで彼女を引き付けるのか。やっぱり呪われてるアピールが逆効果だったのかな?


 あと、今のところ主君なき騎士団ロードレスナイツの面々からの接触はない。エリオやスイレンの姿を学園内で何度か見かけたが、向こうから近づいてくるようなことはなかった。なんというか、それはそれでまた自分の知らないところで勝手に話が進んでいそうで怖いんだけど……。


 まあそんな感じで、いくつか不安要素はあるもののここ数日は比較的平穏な日々を暮らしている。


 だがしかし、実は新入生剣闘大会のあの日から、俺の中である一つの野望が胸中を渦巻いていたのだった……。



 「……剣霊が欲しい」



 自室のベッドで仰向けに寝っ転がり、先日リオンが天井にぶっ刺したナイフの跡を見ながらそう呟いた。


 剣霊、すなわちレイシアナが出していたあのデカい狼みたいなやつ。

 ああいうのを俺も戦闘の最中で召喚して一緒に戦いたいのだ。


 なぜならシンプルにかっこいいから。

 それにもしあんなのを出せたら、俺が持っているのがまさか単なる銅剣だと思うやつはいなくなるだろう。


 そんな空想に思いを巡らせて、だんだん居ても立っても居られなくなった俺は急遽旅の支度をはじめ、そして深夜、寮の自室を出発した。


 目的地は1000年前に人類と魔族が衝突した決戦の地……「魔王城跡」だ。


 〇


 どうして突然魔王城跡なんかに?と思った人もいるかもしれない。

 もちろん、これにはきちんと理由がある。


 まず俺の理想としては、今持っている銅剣から剣霊を出せるようになることなのだが、言うまでもなくそのハードルは高い。


 学園の図書館で剣霊というものについてざっと調べてみたんだけど、セオリーとしては剣闘大会の決勝戦で生徒会長が説明していた通り、魔剣に宿る魔力を具現化するものらしく、俺の単なる銅剣では逆立ちしても不可能な技だ。


 というかずっと勘違いしていたのだが、魔剣とは魔力の宿った剣で、魔剣士とはその魔剣を使って戦う人のことのようだ。微塵も魔力のない剣を使って魔法を放っているだけの俺は魔剣士の定義には当てはまらず、ただの変人ということになる。どおりで周りに馴染めないわけだ……。


 話を戻して剣霊についてだけど、どうやら変わり種として剣に精霊を宿して、それを実体化させるというパターンもあるようなのだ。精霊は魔力を持った存在なので、それが宿った剣は自動的に魔剣になる。


 その情報を知って、俺はあることを思いついた。


 前提として精霊というのは非常に珍しい存在で、探して見つかるようなものじゃない。冒険者としていろいろな場所で活動していたわけだけど、精霊の目撃談や噂なんてほとんど聞いたことがない(俺があまり人と話さなかったのも原因だと思うが)。


 しかしこの世界には精霊と似た性質を持ち、なおかつ比較的遭遇しやすい存在がいるのだ!



 ……それはゴースト、すなわち幽霊や妖怪の類だ。


 精霊を剣に宿らせることは難しい、けれども同じく実体を有さない魔力生命体であるゴーストなら似たようなことができるのではないか。


 そして近場でゴーストがたくさんいそうな場所、ということで1000年前に大きな戦いがあった魔王城跡を目的地に選んだわけだ。

 ご存じないかもしれないが、キリヴァリエはもともと魔王城近辺の強力なモンスターを討伐する戦士団の拠点がルーツなので、当然物理的な距離も近い……とはいっても馬車で一日ちょっとはかかるらしいけど。


 正直上手くいく可能性は低いだろうし、ゴーストを剣に宿らせる(憑りつかせる?)方法も分からないが、明日は学園も休みだし、物は試しだ。



 そういうわけで前置きが長くなってしまったけど、剣霊探しの旅へレッツらゴー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る