第15話 本気
なるほど、確かに言うだけのことはある。
攻撃の速度を上げてもしっかりついてきている。やはり他の学生とは頭一つ抜きん出た実力者みたいだ。
「……ならばこれはどうだ。……ダークスラッシュ……!」
威力控え目のダークスラッシュを放った。
レイシアナがそれに応えるように剣を振るとそこから黄金の炎のような魔力が放出され、二つの魔力が衝突、相殺した。
「その手は無駄。予備動作を見れば、あなたの攻撃を防ぐことは容易よ」
「……ほう」
やっぱりなかなかやるな!それなら……。
「……この速度でもついてこられるか?」
「なっ!?」
尋常でない速度でレイシアナの背後を取り、振り下ろした俺の剣を彼女はすんでのところでかわした。しかし僅かに髪にかすったみたいで、金色の毛が何本か風にさらわれた。
「……力を隠してたっていうの?」
少し離れた場所で、レイシアナが俺を睨みつけながら言った。
「……ふん。……貴様が勝手に俺の力を決めつけていただけだろう」
くくく……。面白くなりそうだぜ……!
〇
『すごい戦いが繰り広げられています!未だかつて、これほどハイレベルな新入生同士の戦いがあったでしょうか!?』
しばらくの間、一進一退の攻防が続いた。
彼女も結構食らいついてきて、しかもまだ余力があるみたいだけど……、もう底が見えた感じではある。このまま相手をしていれば、どのみち彼女の体力が尽きて俺が勝つことになるだろう。
さて、どうしよう。そろそろ俺も、今後の身の振り方について結論を決めた方が良いのかもしれない……、などと考えていた矢先。
「ちょっと待って」
と、レイシアナの方から戦闘を中断した。
「このままじゃ
「……そうだな」
まあ、勝敗は決まるとしても余計な時間がかかってしまうことは間違いない。
俺が肯定すると彼女は一つ提案をした。
「おそらく私たちの実力はほぼ互角。お互いにまだ力を隠しているみたいだけど、そろそろ全力を出して戦わない?魔剣士としての全力を」
「……ふむ」
正直どっちでもいい提案だな……と思ったが、全力の彼女と戦えるというのは少し魅力的だ。それにわざと負けるという選択を取るにしても、全力の彼女に負けるという方が説得力がある。
「……分かった、その話に乗ろう。……とはいえ、俺が全力を出せるかはお前次第だがな」
俺がそう答えると、レイシアナは不敵に笑った。
「ふふ、交渉成立ね。だけどその決断、すぐ後悔することになるわよ」
彼女はそう言うと、すっと瞳を閉じて深く呼吸をした。
そしてその場に静かに剣を突き立てると、小さくこう唱えた。
「……
それと同時に、強烈な光と魔力が彼女の身体からあふれ出した!
俺は思わず目を細める。
なんだ!いったい何が起こっているんだ!?
期待と興奮で胸が膨らむ。
数秒後に光が治まり、そこに現れたのは…………デカい狼だった。
「…………は?」
俺の身長の倍はある黄金の毛並みをした狼のような獣が、まるで主人を守る番犬のごとくレイシアナの隣に構えていた。
……いや誰だよ!!?
乱入者?現実的に考えると彼女の召喚獣か?
いや待て待て、召喚獣としてもそんなのありかよ!?
これ剣闘大会ですよね?
デカい狼を召喚するなんて、もはや剣とか関係ないじゃん!
俺が混乱状態に陥りただ唖然としていると、レイシアナがこちらに向かって呼びかけた。
「さあ!次はあなたの番よ!さっさと剣霊を開放しなさい!!」
「!!!!?!?」
…………なんか俺、今すっごい無茶ぶりされてる?
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