第10話 地下拠点

 一定の距離を保ちながら、俺はまるでストーカーのごとくエリオを追跡した。

 街中をしばらく歩いた後、彼女は細い路地裏の、古ぼけた扉の中に入っていったので俺もそのあとに続いた。


 建物の中に入ると、薄暗い部屋の中でエリオがこちらを待ち構えていた。

 部屋には本棚や、何が入っているのか分からない木箱などが乱雑に置かれており、全体的にほこりっぽい。ただの物置部屋のようだが、一体ここに何があるのだろう?


「誰にも跡をつけられてないわよね?」


「……ああ、大丈夫だ」


「そう、ならいいわ。ここから先は正式なメンバー以外立ち入れないんだけど、あなたを信じて……、いいえ、私があなたを信じたいから特別に先へ通すわ。失った記憶を取り戻す一助になるかもしれないし」


「……感謝する……?」


 話の全容が微塵も見えないが、正式なメンバーとか言っているし、エリオはなんらかの組織に所属しているということか?

 まあ、とりあえず今は彼女に着いていくしかないだろう。


 俺の意思を確認したエリオは、そっと、何の変哲もない部屋の壁に触れた。

 するとその瞬間、ガゴンッ、と部屋全体が大きく揺れ、次に身体が宙に浮くような感覚に襲われた。


 この感じ……、そうだ、エレベーターが下がる時の感覚に似ている。

 ということはつまり、この部屋自体が地下方向へ動いているということか!

 すごいな、なんだかSFみたいな展開じゃないか。


 そして数十秒が経過した後にもう一度大きく揺れ、身体の浮遊感が消えた。

 どうやら目的の階層に着いたらしい。


「着いたわ。そっちの通路を進んで」


 そう言ってエリオが指し示した方向を見ると、そこには先程まで建物の出口だった扉がなくなり、代わりに薄暗い通路が現れていた。……かっけーな。


 〇


 通路を進んだ先にあったのはそこそこ広いの部屋で、中心のテーブルを囲むようにいくつかソファが並べられ、天井から吊るされたシャンデリアが部屋全体を照らしている。さっきまでいたエレベーターの役割を果たしていた部屋とは打って変わって、全体的に高級感のある内装だ。


 ……そして、特筆すべきはインテリアだけではない、というかこっちの方が注目すべき点だろう。


 室内にはなんと既に3人もの女性がいた。しかも全員がキリヴァリエの制服を着用している。いずれも警戒とも歓迎とも取れるような微妙な表情でこちらを見つめていた。


「あら、今日は3人だけなのね。事前に連絡していなかったから仕方がないけれど」


 後ろからやってきたエリオが言った。

 どうやら彼女らが先ほどエリオが言っていた“正式なメンバー”ということか。


「……それで、ここは一体どういう場所で、お前たちは何者なんだ?」


 俺は単刀直入に質問した。

 普段はキャラに合わないので、他人に物を尋ねるようなことは極力しないようにしているのだが、今は記憶喪失という設定だし問題ないだろう。


「ええ、しっかりと説明させてもらうわ。……私たち『主君なき騎士団ロードレスナイツ』について、ね」

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