散歩の歌

吉岡梅

さんぽみち

姿見に帽子イヤフォン赤いランシュー まるで散歩をする人みたい


残月に一歩目踏み出すズボラな私 月よ見てるか偉大な一歩を


薫る風さざめく緑にとりの声 見慣れたはずの道におはよう


不意打ちの景色に思わず足止まる 持っててよかったスベスベの板


とんとんとコピー用紙を揃えるように 私を揃えて朝ゆくリズム


散歩後のご飯の驚くべきうまさ ふるまう前にはお散歩させよう


あと3歩いや7歩かな違うかな 測れベストなおはようございます


目が合った 瞬間詰め寄る甘えた仔猫 待ってお先に1枚撮らせて


窓越しの雨を呪って昇って降りて 儀式みたいな踏み台昇降


コンビニに負けるな私の散歩道 最前線の季節知らせて


再起動できつつあると信じたい よすがは散歩・丁寧なくらし


あの人にあの野良猫にあのワンコ 今日もおはよう名は知らぬ友


曇天を照らすひときわの黄金のムギ 洗濯物も照らしてほしい


地球との賭けに負けたら潔く 歩くしかないびしょ濡れのまま


早朝の田にデッケェ角の鹿 驚いてるのはこっちもですけど


あと何度歩くのだろうこの道を 未来の私飽きられてない?


ひとり行く散歩のポストに誰かのいいね いつもサンキュー板ごしの友


移りゆく季節にだったら言えたのに 今のあなたがいちばん素敵


もしかして季節が速いのではなくて 私が動けなかっただけでは


行きますか帽子イヤホン赤いランシュー 歩きたいから歩くのです

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散歩の歌 吉岡梅 @uomasa

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