生活短歌
われもこう
夢と現
風呂あがり 耳朶に響くは 雨の音
雨滴と共に 煎茶のみ干す
リビングの 明かりを灯し 午前二時
死んだうさぎの 影待ち侘びる
囚われた 水槽のなか 満ち足りて
呆けてゆくは 君のせいだね
忘却が 与えしものは 充足感
白骨化する 心と体
亡骸の 脊髄
目を開けたまま 幻眺め
泣いている 声が聞こえる いつの夜も
遠いどこかの 名も知らぬ君
犯罪者 あなたの事と 罵れば
瞳の海も 近い未来も
上手だね 何がと聞けば 愛想笑い
胸の虚しさ 密告し合う
土の香が くゆる真夏の 早朝に
駆け出した日々 未来を越えて
悲しみを 掬う指先 みほとけの
慈悲に今なお 生かされる日々
汲み尽くし 難きあなたの 沈黙に
身をゆだねれば 命貴し
彼岸へと 渡ったあなた もう二度と
出会えないから 血を愛おしむ
薬師仏 手に持つ
なにがあるかと 考えあぐね
予感めく 命の萌芽 寝そべって
お腹ふくらむ 未来と出会う
前世では 魚でしたと うそぶけば
どんな善行 積んだと笑う
違和感を 呑み込むことが 大人なら
わたし以外は みな死ねばよい
班ノート 学校クソと 書きなぐり
教師が言った かわいそうな子
薄明の 空は白んで 夏の果て
過去と未来が 蘇るとき
静脈と 動脈いずれの どちらかな
花の香と まざるお酒の 残り香が
染み付いている 地下の夢跡
生活短歌 われもこう @ksun
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