2話 どっちで生きればいいの?

学校の帰り道、僕は目眩に襲われていた。

周りの道がグチャグチャに見える。真っ直ぐのはずの道端ぐにゃぐにゃ曲がっていて…視界は少しづつ暗くなっていく。身体の奥底から暑く、燃えるようだった。脚がもつれてしまう。視界がグラグラしているので足を滑らせてしまう。

絶対これ転んだ。痛そー…

「大丈夫ですか?」柔らかい感触がする。いい匂い…前を見てみると女子中学生?らしき人がいた。

「ごめんなさい、視界が真っ暗になっちゃって…飲み物買ってきてもらっていいですk…」

人が来たのが安心したのか分からないがそこで意識は途切れてしまった……


「ちょ、大丈夫?待ってこれやばくない…急いで救急車呼ばないと!ごめんね君、勝手に学生書見るよ。」


「はい、そこです。今意識を失っていて少し過呼吸気味です。待機してます。はい、お願いします。」


少し異常だった。こんなに人の体って暑くなるんだ。ん?ちょっと待ってこの子…


………





TSS…かもしれない…

◇◇◇

早く起きろ、早く起きろとズキズキ痛む頭の奥底から響くように言われる。身体のあらゆる部分が痛い…痛い…もしかすると事故ったり…

ゆっくり目を開けるとそこは知らない天井…いや、この天井は病院だろ。なんか見覚えしかないぞ。白いしなんだかピコピコ鳴ってるし…

右側を見ると大きな機械に自分の腕の血管から管が繋がっている…なんか感染したのかな…

ナースコールをポチッと押し待つ。


ガタガタと大きな音を出しながら看護師と担当医みたいな人が来た。

「おはよう。気分はどうだい?」

「自分の体ではないみたいな感か…」何…この声…誰?

「一旦聞いて欲しい。君は5日間も昏睡状態だったんだ。」

そう…なんだ。5日間も…迷惑かけたな

「その…凄く言いずらいんだが…君が昏睡してた理由なんだが…後天性の病気でね、TSSって聞いたことあるかい?」

聞いたことはある。TSSは自分の性別が自分でもコントロール出来ない。急に変わってしまい、自分の性別が分からなくなってしまう。

「あります。性別が入れ替わっちゃうやつですよね?」

「ご存知ですか…簡単に言えばそれを発症してしまった感じです」

…はい?

「凄く精神面で辛いと思います。TSSの治療法は確立されていなく、治すことは不可能に近いです。

現時点のTSS患者は約1万人程度です。」

「は、はぁ…それになっちゃったって…ことか」

「後天性のもので事例は本当に少ないです。少しでも身体がおかしいとかあればすぐ病院に来てください。診断書を出しておくので学校と市役所に提出してくださいね。」

そう言われ僕はあらゆる困難に打ち勝たないといけないと確信した。


◇◇◇

失踪感。自分の息子がいないという感覚。歩いたりすると揺れるあの袋もない。

その代わりダイレクトに揺れるあまり大きくは無いがありますよ程度の胸。先っぽが服に擦れて若干むず痒い。今日は安静にしろと言われたがそどころじゃない。自分を失ったような感覚。そうだよね、男の自分は…今はいない。TSS-βだから、キュンキュンするような事とかだと急に性別が変わってしまうのか…生憎スマホで少しエッチなお姉さんとかの写真を見ても何も感じない。

こんなに胸あって羨まし…いや、なんでもないし。

少しだけ精神が女性に乗っ取られている気がする。

今後はどうなるのかな…寮生活の青葉高校に進学予定だが、どうなるのか…元々の性別は男だから男子寮?でもなぁ…TSSになっちゃったしなぁ…

人に自分の身体は見せたくない。そこだけが心配だった…慣れない身体なのか分からないが倦怠感が襲ってきた為僕は少し寝ることにした。

助けてくれたあの女性綺麗だったなぁ。

少しだけしか見えなかったがとてもキレイな目をしていた。あの目で覗かれたら惚れそう…

いつかお礼を言いたいな。

自分を見失いそうだった。

自分はどっちの性別で生きるべきなのだろうか?




TSSなどについては一話に設定などがあるのでご確認ください。

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〜入れ替わる僕と私 貴方と貴女〜 まひなーん @zyhst1431

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