第9話 「ちょっと切なくなること」 《主》
とにかく人と話すことが苦手なのである。
苦手を通り越して苦痛を感じることすらある。
相手が話す事を鸚鵡返しにするだけなので会話が続かないのだ。つまり、会話のキャッチボールができない。
何故か?
それは相手が話す内容に興味を持たないからであり、それはとてもよくわかっていて、それは良くないこともよくわかっていて、だから相手の話す事をよく聞いて興味を持ってうわぁぁぁぁぁ!!!
てな有様で結構な年月を生きてきた。
その一方で、興味のある話となると一転して相手が引くほど饒舌になり、その夜は一人反省会が盛大に開催される。
かといって、人との関わりを拒絶しているわけではない。むしろ上手く関わりたいのだ。
上手く関わるためには人の話をよく聞いてその内容を理解してうわぁぁぁぁぁぁ!!!
…どうしたものだか…。
と言っても始まらないので、もはや人生も折り返したであろう年齢で、なんなら晩年と言ってもいいかもしれない年齢において、(聞く力)を養おうと試みているのである。
方法はこうだ。
まず、雑念を払う。よくやる失敗としては、人が話している最中にそれにどう返すか考えてしまう事。これは絶対にいけない。
そして、話を聞く。純粋に聞くことに集中する。
…と、まあ、こんなことを人と話す都度やっていては当然くたびれる訳で、終いには疲れ果てた虚無の表情で「ほぉーん」などと口走り、悪い相槌日本代表みたいなことになるのである。
「頑張ってるねぇ」と言いながら半笑いで顔を覗かせるもう一人の自分を睨みつけながら。
ぬ庵記 ぬ庵 @nu-an
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