第2話 アレキサンドライトの絆

 雪が、降っていた。

 そこは戦場だった。

 見渡す限りの美しい雪原は蛇のように長い塹壕と痛ましい砲弾の跡によって破壊されていた。

 雪に埋もれていた地面が砲弾によって抉られ焼け焦げている。あちらこちらに残された跡には夥しい数の死体が転がっていた。

 殆どの死体は個人の識別ができないほど損傷している。死体から流れ出る血が雪の絨毯を赤く染めていた。

 目を逸らしたくなるほどの痛ましい惨劇の上にも雪は無情に降り続ける。白い欠片で全てを覆い隠すかのように。

 積み重なった死体の中でアラン・ベルジェはかろうじて息をしていた。

 寒さで白くなった息が宙に溶けていく。

「っ……は、は、は……」

 弾丸を受けたのか、アランの脇腹からは鮮血が溢れている。無意識に傷口を押さえた手がぬめっていく感覚に絶望が募る。

 全身は凍えているかのように冷たいのに、傷口だけが熱くて息をするたびに激痛が走り、呼吸すらままならない。

 ——くるしい。

 焼けるような痛みを感じながら、アランは故郷に残してきた幼い妹の姿を思い出す。

 ——クロエ。

 母親譲りの黒髪と父親似のエメラルドグリーンの瞳。「にいに」と自分を呼ぶ甘い声。ふかふかの小さな手。

 全てが砂糖菓子でできているかのような柔らかな存在。

 アランにとって自分の命よりも大事なもの。

 ——だれか。

 徴兵されると決まったとき、クロエは一晩中泣いていた。

 まだ十歳の子どもなのだ。アランは兄であり、親代わりでもあった。

 だからだろうか、アランはクロエを目に入れても痛くないほど溺愛していた。

 ——たすけて。

 早くに両親を亡くし、家族と呼べるのはお互いだけ。自分がいなくなったら、クロエは一人になってしまう。

 ——かえらなきゃ。

 自分が死んだと知れば寂しがり屋な妹は悲しむ。

 クロエを悲しませることだけは絶対にしたくなかった。

 だけど、それ以上に。

 ——かえりたい。

 自分を待ってくれている家族の元に帰りたかった。

 アランは消えかかる意識の中で強く願った。

 愛しいあの子にもう一度会いたい。

 かえりたい、あたたかいあの家へ。

 ——かえりたい。

 

 かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。かえりたい。

 

 ——かえりたいよ、クロエ。

 アランの瞳から涙が零れ落ちる。死への恐怖よりも、たった一人の妹を残して死んでいくことの寂しさと悔しさが涙となって生み出される。

 アランは望んで兵士になったわけではない。

 どこにでもいる、普通の家に生まれただけの青年だ。高い志があったわけでも、国への忠誠心が篤かったわけでもない。

 ただ、国が勝手に戦争して、疲弊して兵士が足りなくなったから、徴兵されることになった。それだけのこと。

 だけど、それだけのことでアランの人生は大きく狂ってしまった。

 戦時下という非常時において、国民の意思などあってないようなものだ。兵士になれと言われたらなるしかない。

 たとえ、幼い家族を一人故郷に残すことになっても。

 ——クロエ、クロエ。

 段々と意識が薄れていく。

 先程まで熱かった傷口がやけに冷たく感じる。指先が冷えてきているのが分かる。

 体から力が抜けて、目を閉じかけた瞬間。

「失礼ですが、アラン・ベルジェ様でいらっしゃいますか?」

「え……?」

 目が覚めるような美しい声がアランの耳に届いた。

 こんな戦場に人がいるとは思わず、アランは驚いて頭上を見上げた。

 そこには息が止まるほど美しい女が立っていた。

 銀世界の中で鮮やかに浮かぶ赤髪。宝石の如き輝きを放つ若草色の瞳。月の光を纏ったかのような滑らかな肌。東洋の桜を思わせる唇。一つ一つのパーツの完成度の高さもさることながら、それらが組み合わさることで凄絶な美しさを作り上げていた。

 見るからに上質な生地で作られたボルドーの三つ揃いに華奢な身体を包み、手には古びたアンティーク調のトランクを持っている。

 どこを見ても完璧な美貌は平時であれば見惚れていただろうがあいにくここは戦場だ。

 服装もそうだが、存在そのものが浮いている。

 ——死神でも迎えに来たのかな……。

 どこか非現実的な雰囲気を纏う女にそんなことを考えた。

 アランは無意識に女に問いかけていた。

「き、みは……だ、れ……?」

「お初にお目にかかります。宝石商リコリス・エーデルシュタインと申します」

 女は戦場には似つかわしくない優雅なお辞儀をすると、アランの横に片膝をついた。

「驚かせてしまい申し訳ございません。私の鴉がアラン様のお声を聞いてこちらへ呼んだのです」

 何を言っているのか瀕死のアランには分からなかったが、少なくとも敵ではないようだ。

 リコリスはアランの手に自分の手を重ね、安心させるような声音で話す。

「旦那様、妹君の元へかえりましょう。私はそのお手伝いに参りました」

「か、える……?」

「はい。私は亡くられた方の魂を宝石に変えることができます。残念ですが……旦那様は……もうすぐ亡くなられてしまいます。私にはどうすることもできません。本当であれば生きて帰して差し上げるべきです。ですが、私にはそれができません。できることは、旦那様の魂を宝石に変えて妹君の元へお帰しすることだけです」

 リコリスの完璧な美貌が悲痛に歪められる。

「おれ、は、……た、すか、ら、ない……?」

「……残念ながら」

「そ、っか……」

 分かってはいたが、改めて言われると悔しさが込み上げてくる。

 ——死にたく、ないなあ。

 もっと生きていたかった。恋人も欲しかった。家族を作りたかった。食べたいものだってあった。行ってみたい場所も、やり残したことも。

 何より、妹の傍にいてあげたかった。

 大きくなって、成人する姿を見届けたかった。

 いつかは好きな人もできて、結婚して、子どもを産んで、自分以外の家族を作るだろう。そんな姿を一番近くで見守っていてあげたかった。

 妹はまだ幼い。頼れる大人なんていない。自分が死んだら、誰が妹を守ってくれるというのだろう。

 身寄りのない妹がこれから先辿るだろう未来を思うとアランの中に不安がこみ上げる。

 アランは最期の力を振り絞ってリコリスの手を縋るように握りしめた。

「た、のみ、が……ある、ん、だ……いもうと、を……たすけ、て……」

 アランの頼みに若草色の瞳が微かに見開いた。

 馬鹿なことを頼んでいる自覚はあった。さっき会ったばかりの、それも宝石商に頼むことではないことも分かっている。

「まだ、じゅっさい、なんだ……おや、も、いなく、て……」

 それでも、今のアランには出来ることがこれしかなかった。

 断られるかもしれない。振り払われるかも。だけど、妹のために最期まで何かをしてあげたかった。

「たの、む、よ……おれの、たったひとりの……かぞくなんだ……!」

 冷たく静かな雪原に悲痛な叫びが木霊する。

 音はやがて雪に飲み込まれ消えていった。

 後に残ったのは耳が痛くなるほどの静寂だけだった。

「……私は、方々を旅しております。仕事の都合上、一カ所に留まることはできません」

 静寂を破ったのは、リコリスだった。

 桜色の唇を噛み締めて、心苦しそうな表情を浮かべている。

 ——やっぱり、ダメか……。

 アランは脱力して手を離そうとするが、それをリコリスが引き留めた。

 熱いほどの手の温もりが冷たくなったアランの手に移る。

「ですので、妹君が生活に困らないように金銭的な援助をすることと、成人するまでの間、後見人になることしかお約束できません。それでもよろしいですか?」

 思わぬ言葉にアランは驚いた。

「……い、いの?」

「これ以上のことはお約束できませんが、それでもよろしければ」

 その場しのぎの慰めではない、本当にアランの頼みを聞こうとしてくれているのが若草色の瞳から読み取れた。

 アランは重傷を負っているのも忘れてリコリスの手を強く握った。

「う、ん……うん……! あ、り、がとう……!」

「ご依頼……いえ、旦那様の願い、確かに承りました。妹君のことは必ずお守りいたします」

「うん……たの、む、よ…………ごほっ……!」

「旦那様!」

 身体が限界を訴えるように、アランの口から鮮血が吐き出される。

 苦しそうに吐血するアランをリコリスが優しく抱き締めた。

「はっ……は……は、はは……しぬ、のって……こんな、に、くる、しい、んだ……」

「傷に障ります、もう喋らないでください」

「きみ……やさ、しいね……おれ、もう、すぐ、しぬ……のに……」

「……だからこそ、最期は安らかに眠っていただきたいのです。苦しいまま死ぬのは……辛いですから」

 そう言うリコリスの方が辛そうだとアランはぼんやりと思った。

 目が霞んで表情はよく見えなかったが、声が微かに震えていた。

「どう、して……きみ、のほう……が、つら、そう、だよ……」

「……いいえ、辛いのは旦那様です。痛いでしょう。申し訳ございません、どうすることもできなくて……」

「せ、なか、さすって……くれ、て、る……」

「これぐらいしかできません」

「いい、よ……うれ、しい……」

「他にしてほしいことはありますか?」

 そう聞かれ、アランはリコリスが最初に言ったことを思い出した。

「おれの、たま、しい……ほうせきに、して、くれ、る……?」

 妹のことを頼んだが、やはり一人にしてしまうことが気掛かりだった。

 助からないのならばせめて、魂だけでも妹の傍にいてやりたい。

 たとえ二度と抱き締めることができなくなっても、一番近くで見守ることができるなら。

「おれ、を……くろえの、とこ、ろに……かえし、て……」

 最愛の人の元へ帰りたかった。

 リコリスは冷たくなったアランの手を強く握り、震えそうになる声を抑えて優しい口調で言った。

「もちろんです、旦那様。私はそのためにここに来ました」

 アランの表情に安堵の色が浮かぶ。

 自分の魂が宝石になるなんて普段なら信じられなかっただろうが、今は不思議とすんなり受け入れられた。

 死が近付くと、人はどんな奇跡にでも縋りたくなるのだろう。

 何より、リコリスには『この人なら信じても大丈夫だ』と思わせてくれる魅力がある。

 ——不思議な人だな。

 出会って間もないが、アランはリコリスが与えてくれる安心感に心を許していた。

「ねえ、おれ……なんの、ほう、せきに……なる、の……?」

「基本的には変えるまで分かりません。ご希望があればその通りに変えることも可能ですが、如何いたしますか?」

「よく、わか……ら、ない、や……」

 田舎の農村に生まれ育ったアランにとって宝石は一生縁がないと思っていたものだ。

 石の違いはおろか、種類すら分からない。

 リコリスは安心させるように薄く微笑む。

「では、私がお選びいたしましょうか。旦那様と妹君によくお似合いの宝石がございます」

「う、ん……ま、かせ、る、よ……」

「かしこまりました。ご満足いただける宝石をお作りいたします」

 アランは頷くと、ぼうっと空を見上げた。

 灰色の雲から小さな綿のような雪がはらはらと降り落ちてくる。

 吐き出す息が白くならないのを見て、自分の死が近いことを感じた。

 もう痛みも、リコリスの手の温もりも感じなくなっている。

 こんなに早く死ぬなんて想像すらしなかった。

 最期を看取るのが妹ではなく出会ったばかりの美しい宝石商だなんて露ほども思ってなかった。

 ——ごめんな、クロエ。

 心の中で故郷の妹に詫びる。

 ——でも、一人じゃないから。

 心残りはある。だけど、不安はなかった。

 ——傍に帰るから。

 リコリスならきっと約束を果たしてくれる。そんな安心があったから。

 ——今、帰るよ、クロエ。

 もう何も見えない。リコリスが呼んでくれているような気がしたが何も聞こえない。

 意識が白い何かに飲み込まれていく。

 まるで穏やかな眠りにつく前のような、抗えない心地良さに感覚を奪われる。

 ——ああ、俺、死ぬんだ。

 不思議と、怖くはなかった。一人ではないからだろうか。

「あ、り、がと……りこ、りす……」

「……はい」

「り、こ、りす……ねむ、い、よ……」

 リコリスは安心させるようにアランを抱き締めながら、優しく背中をさする。

「必ず妹君の元へ帰してさしあげます。だから……今はお眠りになっても大丈夫ですよ」

「り、こ、りす……おれ、の、たまし、い……くろ、えの、とこ……に……」

「はい、お約束します」

「くろ、え……」

 朦朧とする意識の中でアランは何度も妹の名前を呼んだ。

 その祈りが届いたのだろうか。

『にいに!』

 どこからか、愛しい声が聞こえた気がした。

「く、ろえ……?」

 こんな所に妹がいるわけがない。だが確かにアランの耳には妹の声が聞こえていた。

『にいに、おかえり!』

 甘い声がする。アランの大好きな声だ。

 やがて白い靄が晴れて、目の前に愛しい笑顔が現れた。

 遠く離れた戦場にいても、忘れたことのない大切な子の笑顔が。

 アランはその笑顔に手を伸ばして——

「く、ろえ……ただ、いま……」

 

 

 アラン・ベルジェはそこで永遠の眠りについた。

 その死に顔は微笑んでいるようにも見えるほど穏やかだった。

 リコリスはアランの上に降った雪を優しく払うと、そっと抱き上げた。

「……宝石商リコリス・エーデルシュタインが承ります。貴方と、妹君に佳き宝石を」

 俯いた顔にどんな表情が浮かんでいたのかを知る者はいない。

 閑寂な雪原に鴉の鳴き声が響いた。

「帰りましょう、旦那様。大切な方の元へ」

 

 


 アラン・ベルジェの故郷は広大な葡萄畑に囲まれたのどかな村だった。

 オレンジの瓦屋根にクリーム色のレンガで建てられた家々が軒を連ねている。

 収穫前の葡萄の芳しい香りが村を包んでいた。

 一軒の家の窓から可愛らしい女の子が空を眺めていた。

 艶のある黒髪をおさげにし、大きなエメラルドグリーンの瞳を退屈そうに細めている。

 女の子の名はクロエ・ベルジェ。アランの妹だ。

 クロエは溜息を吐くと、ポツリと溢した。

「にいに、まだかな……」

 アランが徴兵されてから三ヶ月が過ぎていた。

 すぐに帰ってくると言ったきり手紙の一つもなく、クロエは毎日家で悶々としながら兄が帰ってくるのを一人で待っていた。

「にいに……」

 クロエは子供だが、戦場がどういう場所かは理解していた。

 兄は無事だろうか。怪我などはしていないだろうか。

 日々そんな心配が尽きない。

「はああ……」

 子供らしからぬ溜息を吐いた時。

 トン、トン、トン——

 突然、家の戸が叩かれた。

 ——お客さんかな?

 クロエは玄関まで行くと、戸の向こう側へ声を掛けた。

「どちら様ですか?」

「突然の訪問失礼致します。宝石商リコリス・エーデルシュタインと申します。クロエ・ベルジェ様でいらっしゃいますでしょうか?」

 今まで聞いたことがないほどの美しい声にクロエは思わず聞き惚れかけたが、すぐに我に返った。

「そうですけど……うちには売れるような宝石はありませんよ!」

 クロエはアランからきちんと「知らない人が来ても無闇に戸を開けてはならない」と教えられていたので、忠実にそれを守った。

「ご安心ください。宝石の買取は行なっておりません。今回はお嬢様の兄君のご依頼で参りました」

「にいにの⁉︎」

 兄、と聞いてクロエは言いつけも忘れて勢いよく扉を開けた。

 そこに立っていたのは、人形と見紛うほど美しい女だった。

 あまりの美しさにクロエはただでさえ大きな瞳をさらに大きくした。

 小さな口からは無意識に「きれい……」という声が漏れ出ていた。

 クロエの子供らしい一面にリコリスはほんの少し口の端を吊り上げた。その表情は同性の子供ながらも頬を染めてしまうほど魅力的だった。

「お嬢様、開けてくださってありがとうございます。ですが、今後は兄君の名前を出されても軽率に開けるのはお控えください。悪事を企む者が尋ねて来ないとも限りません」

「う……」

 見惚れていたクロエはリコリスに指摘されてハッと我に返った。

 自身の行動が軽率だったと気付いたようだ。

「ごめんなさい……」

「いえ……私こそ出過ぎたことを申しました。無礼をお許しください。今回はご安心ください。お嬢様に危害を加えることはいたしませんし、御身に何かあれば必ずお守りいたします」

「守る……?」

「はい。兄君からのお願いで」

「にいにの?」

「兄君は今でもお嬢様を気に掛けていらっしゃいますよ」

「そうなんだ……。それで、にいには? 元気にしてる?」

 無邪気な笑顔がリコリスの胸の柔らかい部分を抉る。

 兄が生きていると信じて疑わない笑顔だった。

 リコリスは微かに表情を歪めたが、決心したようにクロエを見つめた。

 目線を合わせるために膝をつくと、クロエの肩を優しく掴んで努めて冷静な声で話す。

「お嬢様、今からお話しすることをどうか落ち着いて聞いてください」

 さっきとは一変した硬い声音にクロエは少しだけ不安そうな表情になる。

 胸の前で両手を握り締め、リコリスの言葉を待った。

「兄君は……アラン様は、亡くなられました」

 クロエの瞳が大きく見開かれる。握り締めた両手に力がこもる。

 ——うそ。

「戦場で被弾……敵の銃弾を受け、私がお会いした時にはもう……瀕死の状態でした」

 ——うそだ。

「アラン様は最期までお嬢様のことを気に掛けていらっしゃいました」

 ——にいにが、死んだ?

『大丈夫だよ、クロエ。すぐに帰ってくるから』

 耳の奥で大好きな兄の声が再生される。

 戦場に行く前日、泣きじゃくる自分を抱き締めて安心させるように言ってくれた兄。

 ——帰ってくるって、言ったのに。

「う、そだ……」

「うそではありません。私が最期を看取りました」

「うそだ……うそだ……っ!」

 クロエは受け止められない現実を全身で拒絶する。

「お嬢様……お辛いのは分かります。ですが……」

「にいには生きてるもん!」

 そう叫ぶと、クロエはリコリスの手を振り払って家を飛び出した。

「お嬢様!」

 行き場をなくした手を一瞬だけ見つめ、リコリスはクロエの後を追った。

 クロエは家の裏手にある小さな葡萄畑に逃げ込んだ。

 たわわに実った葡萄が太陽の光を浴びて輝いている。戦場に行くまでは兄と一緒に育てていた葡萄たちだ。

 思い出の場所でクロエは膝を抱えてしゃがみ込んだ。

「う……ひっく……」

 走り疲れて座り込んだクロエを葡萄たちが見守っている。

「に、いに……」

 クロエにとってたった一人の家族。兄であり、親代わりのアランはクロエの世界そのものだった。

「ひっく……にいにぃ……」

 いなくなるなんて思いもしなかった。

 ずっと傍にいてくれるものだと思っていた。

 それが当たり前だと信じて疑わなかった。

「にいにぃ……!」

 世界が突然消えてしまったら、どう生きればいいのだろう。

 何を支えにして歩けばいいのだろう。

「う、そだ……」

 子供であるクロエには分からなかった。

 ただ、現実を拒絶することでしか自分の心を保てない。

 どれぐらいそうして泣き続けていただろう。

 不意に背後から足音が聞こえてきた。

 振り返ると、リコリスが立っていた。

「お嬢様、お怪我はありませんか?」

 リコリスはクロエの前にしゃがみ込むと、白いハンカチを差し出した。

 クロエは受け取らず、涙が溜まった瞳でリコリスを見つめる。

「にいには、死んでないもん……」

「お嬢様……」

「すぐに帰ってくるって、言った! あたしを一人にしないって。にいには嘘つきじゃない。あたしとの約束、守ってくれるもん!」

 大粒の涙がエメラルドグリーンの瞳から生み出されては地面に落ちる。

 クロエにとって兄の死を認めることは、最愛の人を嘘吐きにしてしまうことと同義だった。

 それは許されないことだ。世界そのものとも言うべき存在を貶める行為だ。

 自分の手で兄を殺すのに等しい大罪だった。

 受け入れるわけにはいかない。

 受け入れてはいけない。

 兄が自分を守ってくれたように、自分もまた兄を守らなければと、子供心に決意していた。

 その決意を揺るがす現実は悪だ。

 それをもたらすリコリスもクロエにとって悪だった。

「かえって……」

「ですが……」

「かえって! もう聞きたくない!」

 クロエは嫌々と駄々をこねるようにリコリスを叩く。

 子供の力で叩かれても体は痛くないが心が痛む。

 それですら、たった一人の肉親を奪われたクロエの痛みに比べれば些末なものだった。

 リコリスは止めることはせず、ただ小さな拳を受け止め続けた。

「嘘だ……にいには……にいにが……」

 家族の死は誰だって辛い。

 ましてや、クロエはまだ十歳の子供だ。

 大人の庇護を必要とする年頃で、アランは自分を無条件で愛し守ってくれる存在だった。

 そんな存在を失えばどうなるか。

「あたしが、悪い子だから……だから、にいには死んじゃったの?」

 原因を求める。自分から最愛の人を奪った責任を追及せずにはいられなくなる。

 大抵は二極化する。他者を責めるか、自分を責めるか。

「あたしのせいなの……? にいには、あたしが嫌いになったから……だから……!」

 クロエが選んだのは後者だった。

 大きな瞳からぼろぼろと涙が零れ落ちる。次から次へ溢れて止まることを知らない雨のように。

 リコリスは悲しそうに目を細めると、クロエの涙を人差し指で掬った。

「そんなことはありません。アラン様がお亡くなりになったこととお嬢様は全く関係ございません。アラン様がお嬢様を嫌いになることも決してありません。アラン様は最期までお嬢様を愛しておられましたよ」

「じゃあ、どうして……にいには死んじゃったの……?」

 その問いに正しく答える言葉をリコリスは持っていなかった。

 運が悪かったと言ってしまえば簡単だが、そんな言葉で片付けていいことではない。

 戦争は様々な理由で起きる。その理由が人を殺す、あるいは人に殺されるだけの価値があるとは限らない。

 戦争で殺し殺される理由で万人が納得することなど不可能だ。

 相手が子供ならなおさら。

 それでも愛する家族が死んだ理由を欲しがるのが人間だ。

 自分が原因でないなら、何が兄を殺したのか。

 それが分からなければ到底兄の死を受け入れることはできないだろう。

 リコリスは暫し悩んだ末に口を開いた。

「その理由にお答えする言葉を私は持ち合わせておりません。強いて申し上げるなら、戦争だったからとしか言えないでしょう。誰がアラン様を殺したのかも私は存じ上げません。ですが、これだけは言えます。アラン様が亡くなられたのは、決してお嬢様のせいではないということです。お嬢様はアラン様が生きて帰りたいと望まれた唯一の理由なのです。どうか、ご自身を責めることはおやめください……」

 リコリスは泣きじゃくるクロエを抱き締めた。

 母親が我が子にそうするように、背中を優しくさすりながら。

「今のお嬢様がすべきことは、アラン様を想って泣いてさしあげることです。死者を想って流した涙はあの世で花になると聞いたことがあります。アラン様のためにも、たくさん泣いてさしあげてください」

「ひっ……う……にい、にぃ……!」

 何度も兄を呼びながらクロエはリコリスに縋り付いて泣いた。

 暫くすると、涙も落ち着いてきたのかクロエの鼻をすする音が聞こえてきた。

「お嬢様にお渡ししなければならないものがございます」

 クロエを離すと、リコリスはジャケットの内ポケットから小さな黒い箱を取り出し、クロエに渡した。

「これは?」

「アラン様の魂です」

「にいにの……魂……?」

「どうぞ、開けてご覧ください」

 クロエは不安げな瞳で箱とリコリスを交互に見ると、恐る恐る箱を開いた。

 箱の中にはクロエが今まで見たことのないぐらい綺麗な宝石が入っていた。

 正方形の形をしたそれは小石程度の大きさだが鮮やかな色彩を誇っている。

 葡萄の葉を思わせる青みがかった緑に黒い影が潜む。光の当たり方で二色の輝きが変わる様はまるでカレイドスコープのよう。中を覗き込めばそこは透き通る碧海の世界が広がっている。

「わあ……!」

 クロエは初めて見た宝石に感嘆の声を上げる。

「これが……にいにの魂?」

「はい。アラン様とお嬢様に似合う宝石を、僭越ながら私が選ばせていただきました。その宝石の名はアレキサンドライトと言います」

「アレキサンドライト……」

 クロエは宝石をまじまじと見つめて、ふと思いついたように尋ねた。

「どうして、この宝石にしたの?」

 子供らしい純粋な疑問だった。わざわざ選んだということは何か意味があるのではないかと。

 リコリスは箱を持つクロエの手をそっと包み込んだ。

「アレキサンドライトの石言葉は『永遠の絆』です。お二人の絆が消えることのないようにという祈りを込めて選びました」

「絆……」

「アラン様は最期まで……いえ、亡くなられてもなお、お嬢様を愛していらっしゃいます。その証がこの宝石です」

 壊れ物を扱うように、だけど想いが伝わるようにクロエの手を握り締める。

「お嬢様、アラン様の最期のお言葉をお聞きください。……『クロエ、ただいま』」

 リコリスの口の動きに合わせて、愛しい家族の声が重なる。

 もう二度と聞くことが叶わない言葉。

 他人の口からじゃなくて、大好きな人の口から聞きたかった言葉。

「にいに……」

 ——なんで。

 クロエの瞳が再び決壊したように涙を溢し始める。

 ——なんで、にいにじゃないの?

 涙と共に色んな感情がクロエの胸から溢れてくる。

 ——にいにが、よかった。

 悲しみ、悔しさ、寂しさ。そして少しの怒りも。

 ——にいにじゃなきゃ、嫌だよ。

 帰ってきてほしかった。

 何度も夢に見た。あなたが帰ってくる夢を。

 夢の中で何度も「おかえり」と言った。

 だけどその度に目が覚めて、目が覚める度に虚しくなって。

 ——にいに。にいに、かえってきて。

 いつか笑顔で「おかえり」と言ってあげたかった。

 あなたが笑顔で帰ってくるのを信じていた。

 先に死ぬと分かっていても、それは今じゃないと思っていた。

 もっと遠い未来のことだと思っていた。

 今死んでしまうなんて思いもしなかった。

 十年後も二十年後も、その先もずっと、あなたは生きて傍にいてくれると信じていた。

 ——なのに、なんで?

 今、ここにいてほしいのに。

 今、あなたに会いたいのに。

 ——どうして、にいにがいないの?

 あたしを一人にしないで。

 帰ってきて、お願い、帰ってきて。

「に、い、にぃ……!」

 クロエは溢れてくる涙を拭うが、それよりも生産される方が早い。

 服の袖をぐしゃぐしゃに濡らしながら泣き叫ぶ。

「にいに、が、いいよう……! にいにに会いたい! にいにじゃなきゃ嫌だよ……ねえ、にいに……かえってきてよぉ……」

「お嬢様……」

 クロエの叫びにリコリスの表情が悲しみに染まる。

 せめてもと思い、持っていたハンカチでクロエの涙を拭いてやる。

「りこ、りすぅ……もう、にいに……会えないの……?」

「……はい。ですが、この宝石はアラン様の魂そのものです。肉体もなく、言葉を交わすことはできませんが、アラン様は確かにここにいますよ」

 そう言って、リコリスは箱から宝石を取り出すと、クロエの掌に乗せた。

 自分の手の上で輝くアレキサンドライトをクロエは真っ赤に腫れた目で見つめる。

「これが……にいに?」

「はい。お嬢様といつも一緒です」

「ほんとう?」

「神々の王に誓って、決して嘘ではございません」

 真っ直ぐで曇りのない瞳がクロエを見つめる。そこに慰めも同情も憐憫もない。

 ただ、クロエに誠実であろうとする意思だけが込められていた。

 クロエは掌に転がる兄の魂を見つめた。

 これを受け取るということは、兄の死を認めるということ。

 自分の世界の崩壊を受け入れるということ。

 それは十歳の子供が背負うには重すぎる決断だった。

 ——信じたくないよ、にいに。

 だけど、クロエの手の中には愛する人の魂がある。

 小さくて冷たい宝石の姿になった家族がいる。

 クロエも心のどこかでは分かっていた。

 これが兄の最期の姿であると。

 ——だって、にいにの目と同じ色してる。

 いつだって愛情に溢れた眼差しでクロエを見守ってくれていた。

 ——にいに、今もここにいるの?

 応えはない。最愛の兄は物言わぬ宝石となったのだから。

 もう二度と名前を呼ばれることも、抱きしめてもらうこともできない。

 重くのしかかる現実に耐えるように、クロエは宝石を握り締めた。

「……にいには、死んじゃったんだね」

「……はい」

「……う……ひっく……うう……にいに……う、うわああああああああああん!」

 クロエは葡萄畑に響き渡るぐらい大きな声で泣き叫んだ。

 世界に悲しみをぶちまけるように、全身を震わせて涙を溢している。

 そんなクロエをリコリスは抱き締めることしかできなかった。

 

 

 夕方。ひとしきり泣いて落ち着いたクロエがリコリスの手を握ってある提案をした。

「ねえ、リコリス。今日、ウチに泊まっていきなよ。日も暮れてきたしさ。この村、観光地とかじゃないから宿とかないし……」

「ですが、お嬢様にご迷惑をおかけするわけには……」

「あたしの方がいっぱい迷惑かけたからいいの! ほら、帰ろ!」

 クロエは渋るリコリスの手を無理矢理引いて家への帰り道を歩き出した。

 二人は家まで手を繋いだまま帰った。

 道中ではリコリスがアランから頼まれていることを話した。それを聞いたクロエが自分も一緒に連れて行ってほしいと言ったが、危険だからと断られてしまった。

 その代わりに、毎年クロエの誕生日には村に立ち寄ることを約束した。

 家に着いてからは二人で夕飯の支度をし、一緒にお風呂にも入った。

「お嬢様、こちらへ。お見せしたいものがございます」

「なあに?」

 お風呂から上がると、リコリスはクロエをソファに手招きした。

 ネグリジェ姿のリコリスは扇状的な雰囲気を醸し出しており、クロエは終始鼓動が高鳴るのを止められなかった。

 決して恋などではないが、あまりにも美しいものは老若男女の壁を超えて人を魅了する。

 クロエはドキドキしながらリコリスの隣に座った。

「お嬢様、アラン様の宝石をお借りしてもよろしいですか?」

「うん、いいよ」

 クロエは黒い箱から丁寧に宝石を取り出してリコリスに渡した。

「今から少し不思議なことが起こります。よく見ていてください」

 そう言うと、リコリスは膝の上に置いてあった蝋燭にマッチで火を点け、宝石を近付ける。

 クロエが興味深そうに覗き込むと、宝石は青みがかった緑から赤紫へと色を変えた。

「わあ……すごい! どうなってるの、これ?」

 興奮するクロエにリコリスは微笑を浮かべる。

「少々専門的なお話になりますが、宝石の中に含まれるクロムとバナジウムという元素が反応して色が変化するのです。太陽の光などの自然光の下では緑に、炎などに近付ければ赤紫になります」

「すごい……きれい……」

 昼間見ていた宝石と同じものだとは思えないほど鮮やかな赤紫色だ。

 緑色の時は葡萄の葉のようだったが、これはまるで熟れた赤葡萄そのものだとクロエは思った。

「自然界でもここまで色がはっきりと変化するものは稀少です。どうか、大切にしてさしあげてください」

「うん」

 クロエは宝石を受け取ると大事そうに握り締めた。

「ねえ、リコリス。にいにの話、聞かせて」

「……あまり楽しいものではありませんよ」

「いいの……聞きたい」

「……承知いたしました」

 それからリコリスはクロエが眠るまでアランの話を繰り返し話した。

 眠ったクロエをリコリスはそっと抱き上げてベッドへ運ぶと、自分も隣に横たわった。

「おやすみなさいませ、お嬢様」


 次の日、二人は村の入り口で向かい合っていた。

「本当に、行っちゃうの……?」

「申し訳ございません。次のお客様の元へ向かわなければなりませんので」

「……そっか」

 クロエは寂しいのか、地面を見つめたままでリコリスと目を合わせようとしない。

「また、来年のお誕生日には戻ります」

「……うん」

「欲しいものがあればお手紙を出してください。宛名を書いて窓辺に置いていただければ、鴉に取りに行かせますので」

「……うん」

「今度はアラン様のお名前を出されても扉を開けてはいけませんよ」

「……うん」

「夜更かしもしないように。偏った食事も避けてください」

「……うん」

「お嬢様」

「……うん」

 何を言っても空返事のクロエにリコリスは微かに苦笑を浮かべた。

 リコリスは一歩クロエに近付くと、そっと頭を撫でた。

 撫でられると思ってなかったクロエは驚いて頭を上げる。

「ちゃんと聞いていますか?」

「……うん」

「お嬢様。遠く離れていても、私はお嬢様の味方です。辛い時は名前を呼んでください。何処にいても駆けつけます」

「……本当?」

「本当、です。お嬢様、右手の小指を出していただけますか?」

「……こう?」

 クロエは言われた通り右手の小指を差し出した。

 すると、リコリスも右手の小指を出してクロエの指に絡める。

「……なあに、これ?」

「以前、東洋に行った際に教えてもった儀式です。約束をする相手と小指を絡めて『指切った』と言えば契約は完了だそうです」

「……なんだか、物騒」

「実際に指を切るわけではありませんのでご安心ください」

「あたりまえだよっ!」

 リコリスの突飛な発言にクロエは思わず叫んでしまった。

「では、『指切った』。……これで契約は完了いたしました。万が一、私が契約違反を犯した場合は遠慮なく小指を切り落としていただいて構いません」

「しないよ、そんなこと!」

 クロエは慌てて小指を離し、数歩後ずさったが、やがてくすくすと笑い出した。

「あはは! リコリスって変なの!」

「変……でしょうか?」

「うん、すっごく変。……でも、ありがとうね」

「お客様との契約は商いをする上で重要ですので」

「そうじゃなくて……なんか、色々」

 クロエの言葉にリコリスは首を傾げたが、それ以上は聞けなかった。

 ただ、ほんの少しクロエの表情が晴れたような気がした。

「ねえ……約束だよ。リコリス、絶対に帰ってきてね」

「はい、必ず」

「あたし、おかえりって言うから」

「はい」

「リコリスはただいまって言ってね」

「はい」

「誕生日、一緒に過ごそうね」

「はい」

「またお話、聞かせてね」

「はい」

「それから……それ、から……」

 そこで、クロエの涙腺は限界を迎えた。

 ぼろぼろと真珠のような涙が生み出される。

 涙と一緒に我慢していた言葉も溢れた。

「あたし、を、ひとりに、しないで……」

 昨日も散々駄々をこねたのに、また言ってしまった。

 困らせるだけだと分かっていても、子供の心とはままならないものだ。

「ごめん、なさい……わが、まま、言って……」

 両腕で顔を覆い、必死に涙を止めようとするが、その腕をリコリスが優しく掴んだ。

「いいえ、私の方が謝罪しなければいけません。お嬢様のお願いを聞けず申し訳ございません」

「ちがう……ちがうの……あたしが悪いの……ごめんなさい……」

「お嬢様。お一人で抱え込むことはございません。これからは私がおります。お傍にいることはできませんが、可能な限りでお嬢様のお願いを聞くとお約束いたします」

「……リコリス」

 クロエはたまらなくなってリコリスに抱きついた。

「絶対、絶対、帰ってきてね。あたし待ってるから」

「はい。その時は『ただいま』と言います」

「リコリス」

「はい」

「いってらっしゃい」

 太陽のような眩しい笑顔でクロエが言う。

「いってきます」

 リコリスも微笑んで返す。トランクを持ち、クロエに背を向けると、振り返ることなく歩き始めた。

「いってらっしゃい! 気を付けてね!」

 クロエは遠ざかる赤い背中にいつまでも手を振った。

 やがてリコリスの姿が見えなくなると、また泣きそうな顔をした。

 ——ダメだ、ダメだ! 泣いたらまたリコリスが困っちゃう。

 寂しさを振り払うようにぶんぶんと頭を横に振る。

 ——大丈夫、あたしにはにいにがいる。

 ポケットから黒い箱を取り出し、中に入っている宝石を手に取る。

 太陽にかざせば、光を取り込んで宝石の中が碧い海の水面のように煌めいた。

 ——大丈夫、寂しくない。

 大好きな兄の瞳と同じ色の宝石があれば、いつだって思い出せるから。

 自分を愛してくれた人と、守ろうとしてくれる人のことを。

「にいに」

 クロエは宝石になった兄に語りかける。

「にいに、あのね」

 帰ってきたら伝えようと思っていた言葉がある。

「にいに、おかえり。大好きだよ」

 言ってから、また一つ涙が溢れた。

 クロエの言葉に応えるように宝石がより一層輝いた気がした。

 秋の風が葡萄畑を吹き抜けていく。

 兄妹の絆は宝石よりも固く、永遠だった。

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