おでん🍢 いち
「さぶ〜いぃ」行商中のジノに同行。床屋3号を引き連れ 流しの髪切りをする茜と並び繕い屋の看板を前に客待ちをする花桜。早朝 定期馬車や各種荷馬車で賑わった広場は、閑散とし先日の
長雨でアチラコチラの道が、寸断した南部からの定期便待ちの者達と遅延し積み上げられた荷物を監視する請負人達が、暇そうにカード遊びをしている。
井戸脇では、洗濯する女達の声や次の馬車を待ち 茶を飲み雑談をする行商人達に混り花桜に露店を任せて茶飲みと言う情報収集を楽しむジノの姿もあった。どんより灰色の雲を見ながら夜までは、雨は降らないと言う。イヤホンから流れるナユの天気予報を聞きながら店番をする。
脇の路地から小さな子供を連れた少年ふたりが、山盛りの野菜を乗せた荷ぞりを引いて広場に現れる。どうやら近くの農民の子供達らしい。転がり落ちたかぶを妹が、拾いそりに乗せている。「大根 かぶ キャベツ ジャガイモも乗せて重そうだ…兄ちゃん頑張れ〜」
定められた場所にそりを横に置き妹を真ん中に挟みちんまり座る姿は、冬場の膨ら雀のようで、花桜は、ナユタンに囁く。子供達を撮影してベストショットを後で見せて〜建物の隙間から陽が、差し込み子供達が、浮き上がる。いまだと茜も声を上げ花桜にドウドウと押さえられる。そんな風に子供達を愛でていたら料理人らしき男が、声を掛けるが、品を見て首を振り立ち去る。がっかり顔で男を見送る子供。
ちょいと見てくると言い茜が、ぴょんと立ち上がり子供達へと向かう。大根を指差し年長の男の子に何か話してこちらに戻って来る。「毛糸たわしある?」「ない…何するの」「大根とカブ ジャガイモ全部泥だらけ。抜いてすぐ来たらしい。あれじゃ売れないよ〜。少し手伝って来ようかな暇だし…たわしは?」「ないけど これ使って麻布の端切れを太い糸で括って…ホイ2つ。雑巾にする綿布だけど大根拭いて終わったらたらこれでジャガイモの泥落として乾燥よろ。絶対ジャガイモもは、洗わないでね 。濡らすと腐るから」ほいじゃ行って来ると床屋の看板を裏返し お茶引き中のジノをお節介の巻き添えに連れ出し大根洗いに井戸へと向かう。
大根にかぶ…温かいおでん食べたいなぁ。子供達まだ布1枚の袖無し。ちびちゃん涼しいの通り越して寒そうだにゃ。少し偵察行って来るにゃ。ナユタンの声が、イヤホンから聞こえ花桜が、座って居る折り畳み式の裁縫台兼布糸などの洋裁ら素材を入れた荷車の下から蜂型の偵察ロボが、現れ花桜を1回りし木ぞりの轍を追って子供達の足取りをたどって来ると飛んで行く。
大根とかぶ買って来たと茜が、戻って来た。ジノはと見れば…膨ら雀の親子になりちび娘を懐に入れ商売を開始している。「花桜…売り物で子供の服無いか、うぉ…ほれ鼻を手で拭くな〜俺の服も駄目ぇ」ジノの懐で盛大にくしゃみをした子供は、手の甲で鼻水を引き伸ばし顔面パックをしている。「あ〜どうりで顔カピカピしてると思った。古いガーゼと蒸しタオル〜顔出してちょ」
蒸しタオルで、顔の汚れを取ろうと苦戦するふたり。 蒸しタオルの温かさに素直になり顔やホコリぽい髪も拭きクシで整えたらまた盛大にくしゃみをする。花桜が手渡した古カーゼでジノが、鼻水を拭き取る。ティッシュ出せれば、いいけど紙は、こちらでは高級品だし柔らかとは無縁。『ナユタン ガーゼハンカチひと束ネット注文。コンソメの素固形は、残りひと箱…在庫無いかぁ。それも箱で注文。ダシ系有るだけ転送よろすく』
暇なジノと茜は、露店を閉め野菜売りに転職している。フェイスタオルを縫い合わせ子供達の上着擬きを作っているとジノと茜が、何か言い掛かりを言われていた。相手は確か広場の元締めの雑貨商だ。3人は花桜の元へやって来る。「だから子供達の売り上げや野菜を横取りするつもりは、ないと言ってる」「前にも似たような奴が、いて売り上げを横取りされた。親が居ないと舐めてもらっちゃこちらも示しが、付かん今日は、立ち退いて貰おう」「横取りと言っても…大根とカブは、代金払ってるし。ならおっさんが、面倒みるのかい」「わしは商いがある」「あの路地入り口の店…ならその店の横の外壁沿いに子供達と並んで私と茜が、商売するからどう?近いと目も届き私達が、騙しているか判ると思うけど」あそこは飲み屋との境が、何とかゴニョゴニョ言っていたが、3店並べても余裕が、有り言い掛かりを言った手前元締めは、渋々認めた。
早速雑貨店横の壁に沿い野菜の乗った木ぞりを露地入口側に置き花桜と茜が、荷車を横に並べた。何事かと飲み屋の親父が、髭面の渋い顔を出すが、雑貨店の壁3分の1では、文句も言えず黙々と店先で大鍋を洗い出し程なく茜の荷車に向けて細く汚水が、流れて来た。あれがトラブルの元かなと苦笑しどうしょう?と思案していると荷車下からグレーの作業ロボが、現れレーザー光で側溝の上石を数ミリ削り段差を作り更にそこを幅2センチ横5センチのすじ穴を5本削り通し消えた。『ねぇ…勝手に穴開けて良いの?』『汚水流れて来るより良いでしょ。駄目なら速乾性のコンクリパテで高さ調整すれば、問題無いにゃ〜。水の殆どは、反対側に流れてるし雑貨店側が、低いから少しだけこっちに流れて来る。こっちを高くすれば、汚水は、あちらに流れるし…いいと思うよ。文句言われたら元に戻せば、いいだけにゃ』ナユタンの行きなり工事で流れを止め側溝に流れる汚水を眺めまっ良いかぁと縫い物の続きを進める。
大鍋や道具を洗い終え店頭に並べ干し店主は、視線を先に向け突然空いた5本の溝をチラ見 汚水が、全て溝に流れるているのを確認。機嫌を良くして買い出しに出掛けて行った。ふと視線を感じると雑貨店の店主が、現れ溝に汚水が、流れるのを見つめ無言で店に戻って行った。『何も言わないのかよ…』一連の出来事を向かい側の行商人達と見ていたジノの独り言をマイクが拾う。突然笑い出したおばさんズに怪訝な顔を向け。どうしたのと聞いて来るバスタオル巻きの妹に良い事が、あったのと答えるふたり。
肉を篭に入れ戻った飲み屋の店主が、大根とかぶなどを買ったが、持ちきれずにいたので茜が、持って行こうと立ち上がるのを制して花桜が、野菜運びを手伝う。店内のテーブルに野菜を置き外の大鍋を借りたい借り賃は、いくらか聞けば側溝代で貰ってるから好きな鍋使ってくれと言われる。
借りた大鍋を持ち井戸横の洗い場に行き涌き出る井戸水を見れば、少し濁っていた。泥大根洗いなら良いが、飲食には、向かないと刻んだ野菜を鍋に入れジノに水魔石で水を出して貰い…ざっと濯ぎふたり がかりで 茜の荷車から下ろした魔石コンロに乗せ水を入れて貰い火を付ける。 荷車に乗せていたマイ鍋で大根とかぶの葉を少ししんなりさせ結び後で鍋に入れる彩りに準備を進める。野菜クズは、籠に入れロバのおやつにと脇へ寄せる。
鍋底から沸き上がって来たので魔石を減らしコンソメの素と顆粒だしを少々に塩を入れる。ベーコンと茜が、うさぎの干し肉を入れやっぱり ポトフじゃんに洋風おでんと言い切り かぶと結んだ葉を入れまた煮込む。ふんわりと旨味が、香りいざ味見…塩気が、少々キツイので水を足して貰い程よい塩分になり更に魔石を取り出しとろ火にし待つ。
踊る大根と旨そうな匂いに子供達も目をキラキラさせて何度も鍋の中をみる。いざ…試食 皆に取り分けていると飲み屋の店主も深皿を突き出し味見をさせろとフォークを握っている。大根と結び葉に脇に入れたうさぎの干し肉をひと切れ乗せると仁王門立ちで食べ終え。銅貨5枚を差し出し野菜全部とベーコンを入れてくれとお代わりされる。全てを食べ終えた店主は、店頭の魔石コンロに大鍋を乗せ同じ様に煮込み始めるが、何度か首を傾げ。花桜にそのポトフの味付けを頼むと言われた。 洋風おでんだけどに返答する花桜に茜がゲラゲラ笑う。
匂いに釣られた露店商達が、器と銅貨5枚を持参。 雑貨店主もトレーと器2つを持参。「旨い匂いを流されては、食べない訳にはいかん。旨いか?」はふはふ 熱いスープと茜が、小さく切り分けた具材を食べ頷く子供達に声を掛け雑貨店主は、終わったら掃除を忘れるなと言い置き店へと戻って行く。
鍋底が見え 残りを別鍋に移し準備した2回目の具材を鍋に入れ魔導コンロに掛け強火にして放置。冷えた手を暖めながら子供達とお代わりにチーズを挟んだ酸っぱいパンで皆が、昼食を済ませた。
2回目の鍋が、仕上がる頃。先触れの声が、広場に響き 遅れていた南からの定期便の到着を告げる。✴️
商人ジノ放浪記 らくしゅ @tomi20184
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。商人ジノ放浪記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます