第14話 そうだ、死ねばいいんだ

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 それから二日間、

 俺は『自宅空間ホーム』のベッドでゴロゴロしていた。


 食料はまだ少し残っているが、

 何も食う気になれなかった。


 そして、

 何もする気にも・・・。



(今日が、受け取りの日だな・・・)


 そう、

 冒険者ギルドまで、

 肉と素材の引き取り代を取りに行かないと・・・。



 だが・・・、


(行きたくない・・・)


 ギルドに行けば、

 またあの三人に遭ってしまうかもしれない。


 いや、

 彼らではなくとも、

 それと『同じ人種』がいるかも・・・。


 また突っかかられ、

 怒鳴られ、

 馬鹿にされ・・・


 頭を空っぽにしたいのに、

 嫌な想像ばかりが駆け巡る。


 こんなの大した事じゃない・・・、

 大した事じゃないのに・・・・・・。



(でも、

 行かないと・・・)


 ギルドの受付で、

 今日来るように言われたのだ。


 だったら、

 ちゃんと行かないと・・・。



(こういう時、

 何の抵抗もなくサボれたら、

 人生もっと楽なんだろうな・・・)


 前世のバイト先、

 たまに無断欠勤する人たちは、

 何か余裕がある感じだった・・・。


 ああ・・・、

 

 情けない・・・・・・、



「死にたい・・・」

 口からそんなつぶやきが出た。。


 言った瞬間、

 俺は気づいた。



(そうだ、

 死ねばいいんだ)


 幸い今の俺は『痛覚』がないのだし、

 死ぬにしても苦痛を怖がる必要もない。


 そして『空気銃エアピストル』の魔法もある。


 指先をこめかみに当てて一言、

『バン』と唱えればそれで終われるじゃないか。


 女神様だって、

 途中で自殺してはいけないとは言われなかった。


 そうだ、今の俺は、



(いつでも死ねるんだ・・・)


 そう気づいた瞬間、

 俺は気持ちが楽になるのを感じた。



(よし、

 ギルドに行こう)


 ちゃんと人との用事は済ませよう。


 約束相手に迷惑をかけるのは良くないよな。



 それにもう、

 ギルドで三人に絡まれても構わない。


 近づいてきたら、

 殴ればいい。


 仕掛けてきたら、

 殺せばいい。


 かなわなかったら、

 諦めればいい。


 暴行?

 殺人?

 ――どうでもいい。


(そうだよな・・・)


 ヤバくなったら死ねばいいんだから・・・。




 ~~~~~~~~~~~~


 俺は『自宅空間ホーム』の玄関を開け、

 街の裏路地に出た。


 そのまま表通りを進んで、

 噴水のある広場へ。


 一昨日ここに来たのは昼間、

 今日はもう夕方だ。


 華やかな噴水も、

 こうやって夕暮れ時に見ると、

 どこか物悲しさを感じる。



 そういえば、

 異世界の職場も、

 日勤・夜勤と分かれていたりするのだろうか。


(できれば、

 あの時の受付さんに対応してもらいたいけど・・・)


 俺は、

 ギルドのスイングドアを開けた。


 さすがに、

 昼の時間と比べて冒険者の数が少ない。



(良かった・・・)


 見たところ、

 あの三人はいないようだ。


 その事にホッとしていると、



「あ、バイト様」

 と、俺を呼ぶ声がした。


 この前の受付、

 レナさんが窓口にいた。


 少々、

 ギルドの労働時間が気になるが・・・。



「こんばんは。

 先日はお世話になりました」

 そう言って、

 俺は頭をさげた。


 そして、

 前回受け取ったカードを出す。


 カードを受け取るとレナさんは、

 カウンター越しに顔を寄せてきて、

 小声で言った。


「魔獣のお肉のほうですが、

 解体所までお越し頂けますか?

 結構な量がありますので、

 ここでお渡しすると、その・・・」


「ああ・・・」

 と、俺は気づいた。


 彼女は、

 俺がここで肉をしまうために、

収納空間ストレージ』を出すことを危惧してくれているのだ。


 俺がまた、

 周りに目立ってしまわないように、と・・・。



「ありがとうございます。

 では、お願いできますか?」


「はい。

 ご案内します」


 前回同様、

 俺は彼女に案内されて、

 ギルド裏手の解体所にやって来た。


 ――中のメンツは、

 一昨日の昼間と変わらなかった。


(やっぱり、

 ギルドってブラックなのか・・・?)


 俺がそんな風に思っていると、

 巨大包丁の男が、



「おう、来たか。

 ちょうど用意できてるぜ」

 そう言って、地下への階段を示した。


「ありがとうございます」


 彼らと一緒に地下の部屋へと行くと、

 一番大きい解体用のテーブルに、

 アパートの・・・いや、

自宅空間ホーム』の浴室にあるバスタブを埋め尽くせそうなほど、

 巨大な肉のカタマリが並んでいた。


 色つやのいい赤身肉だ。


「熊肉ってのは、

 もっと臭みがあるもんなんだがな・・・」

 と、巨大包丁の男が言った。


「こいつをさばいた時、

 驚いたよ。

 肉はもちろん、

 骨や内臓もまったく匂わねえんだから。

 まったく、

 うらやましい『力』だぜ・・・」

 そう言って、

 男は俺に対してジト目を向けた。



(やっぱり、バレるよな・・・)

 獣の身体が外も中も、

 新品同様綺麗になっていたら・・・。



「じゃあ、

 いただきますね」


 俺は、

 その場で『収納空間ストレージ』の亜空間を出して、

 テーブルの上にある肉の山をしまっていった。


「おぉ~っ!」」」」」

 と、どよめきが起きる。


 一昨日同様、

 レナさんや解体屋さん達に、

 女神様からもらったこの『恩恵ギフト』を見られたわけだが・・・、



(この人たちには、

 隠さなくてもいいかな・・・)

 そう思った。



 細かく聞かれたら、

 答えてもいい。


 周りに広められたら、

 受け入れてもいい。


 利用されそうになったら・・・、

 その時考えればいい。



(そうだよな・・・)



 ヤバくなったら死ねばいいんだから・・・。



【残り3587日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦



 ??は語る・・・。


「『人間、死ぬ気になれば何でもできる』

 とは言いますが、

 それはちょっと、

 意味合いが違うような・・・。


 どうか皆さん、

 負の感情でしか前を向けないあの人のためにも、

 

 作品の『フォロー』はもちろん、

 下にある☆や『ハートマーク』も押してください・・・」





















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