第11話 成果はあっても自覚はなし

 ~~~~~~~~~~


「『門を抜けると、そこは街だった』・・・」

 検問を抜けた俺は、

 目の前の景色を見てつぶやいた。


 外の土の街道と違い、

 街中の地面ははしっかりと石畳で舗装されている。


 それに合わせてか、

 家はレンガ造りか石造りが建ち並び、

 木造建築は数えるほどしかない。


 屋根は三角型の『づま』がほとんどで、

 たまにピラミッド型のものも見える。


(確か、

方形ほうぎょう』とか言うんだっけ・・・?)


 そして、

 門兵が言うには冒険者ギルドは、

 大通りの先にある噴水広場の近くに建つ、

 まっ平な屋根の建物だとか・・・。


 ちなみに、

 平らな屋根の名称は・・・知らない。



(それにしても・・・)


 人、人、人・・・


 まるで、

 休日のブックオフのように、

 大通りは人の往来でにぎやかだ。


「疲れる・・・」

 思わずつぶやいてしまう・・・。


 サングラスに耳栓でもしたい気分だ。


 俺は早足で大通りを通り抜け、

 噴水のある広場に出た。



(あれが、

 冒険者ギルドか・・・)


 見れば、

 噴水のさらに先に、

 門兵が言った通りの建物が見える。


 周りの家と比べて、

 はるかにでかい。


(中で、

 バスケの試合くらいできそうだ・・・)


 俺はスイング式のドアを開け、

 ギルドの中に入った。


 中には、

 当然というか、

 いかにも戦闘に長けたという感じの人達でいっぱいだ。


 

(彼らが、『冒険者』・・・)


 鎧や胸当て、マントにローブと身に着けているものは千差万別だが、

 皆等しく、何らかの武器を所持していた。


 剣、槍、こん棒、弓、杖・・・。



(やっぱり、

 物騒な世界なんだな・・・)

 改めて俺は思った。


 冒険者の何人かは、

 ジロジロとこちらを見ている。


 中には、

 今の俺が少年の姿のせいか、

 馬鹿にしたような笑みを浮かべている奴までいる。



 (早く用事を済ませて、

 街を出よう・・・)


 俺は、

 奥にあるカウンターへと進んだ。


 いくつか冒険者たちの列ができていて、

 ギルドの職員らしい女性たちが、

 カウンター越しに対応しているようだ。


 おそらく、

 ハローワークの受付窓口のようなものだろう。



(う~ん・・・、

 担当部門とかで窓口が分かれていないのか?)


 分からないので、

 俺はとりあえず、

 一番空いている列に並んだ。



 待っている間、

 カウンターのほうから、


「はあ?薬草採取!?

 もっと割のいい仕事を紹介してくれよ!」


 とか、


「討伐証明が必要?

 何言ってんの!

 こっちは必死だったのよ!」


 などという、

 クレームの声が聴こえ、

 そのたびにカウンターの受付らしい人が、


「申し訳ありませんが・・・」

 と、謝罪と説明を繰り返している。




「――次の方、どうぞ」


 それでも何とか、

 俺の番が来た。


(疲れた・・・)

 ああいうクレームの声は、

 耳に入るだけでげんなりする。


 受付は、

 見るからに緊張で笑顔がぎこちない、

 まだ十代っぽい女子である。


(新人さんか・・・?

 色々大変そうだなぁ・・・)


 相手が緊張しているせいで、

 逆に俺は落ち着く事ができた・・・。



「すみません。

 こちらのギルドで、

 魔獣の解体をお願いできると伺ったのですが・・・」

 と、俺は聴いてみた。


「あ、はい。

 失礼ですが、

 当ギルドの冒険者の方ですか?


 ――あ、そうですか。

 えっと・・・解体の依頼は、

 まず銅貨三枚をこちらで頂く事になります」


 銅貨三枚・・・3000円くらいか?



「お願いします」

 俺は、

 ポシェットから代金を出し、

 カウンターに置いた。


「はい、確かに。

 ご依頼ありがとうございます。

 それでは、

 狩った魔獣をお見せください」


「あ、はい」


 受付の言葉に反応して、

 俺はつい考えなしに、

収納空間ストレージ』から『狩った魔獣』を出してしまった。



 あの馬鹿でかい熊の魔獣を・・・。



「・・・え?」

 受付が一瞬、

 呆けた顔になった次の瞬間、



「えええええええええっ!!!!!?????」」」」」


「うわあああああああああっ!!!!!!!!」」」」」


「逃げろおおおおおっ!!!!!!!」」」」」


「死んだフリしろおおおおおっ!!!!!!!!!」」」」」


 などという、

 受付や冒険者たちの叫び声が、

 ギルド中から響いた。


 俺は慌てて、

 床をきしませている魔獣を『ストレージ』に引っ込める。


 途端に悲鳴はピタリと止み、

 代わりに、

 皆が俺を見てザワザワし出している。


「何だよ今の魔獣は・・・?

 あいつが仕留めたのか?」


「それに今、一瞬で消して見せたよな?

 一体どうやって・・・」


「黒髪なんて、

 この辺りでは見ないぞ・・・。

 どこかやばいところから来た奴なんじゃ・・・」


 などという声が聴こえてくる。



(何で・・・)

 俺はただ、

 受付の指示通りに・・・


 俺が、

 カウンターのほうを向くと、

 受付の女子がビクッと身体をこわばらせた。


 そして、

 慌てて頭を下げながら、


「も、申し訳ありません!

 わたしてっきり、

 そのザックのほうに魔獣が入っているのかと思って・・・」

 そう謝りながら釈明した。


「ザック・・・、

 ああ・・・」

 これか・・・。


 荷物が何もないのは、

 周りに怪しまれると思って、

 ポーズとして持ってきたのだが・・・、



(まずった・・・)


 逆に目立つ結果を招くとは・・・。



 (早く・・・早く用事を済ませて、

 街を出よう・・・!)


 そして当分、

 引きこもろう・・・。




【残り3589日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦



 女神は語る・・・。


「あれ、

 彼何かやっちゃいましたね・・・。


 そんな彼を労わる意味もこめて、


 レビューはもちろん、

 どうか下にある

 ☆や『ハート』も押してやってくださいな・・・」



























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る