第7話 ヒール、ヒール、ヒール!!

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 それから一週間以上、

 俺は『ホーム』に引きこもった。


 もちろん、

 外に・・・異世界に出たくなかったからだ。


 だが、

 たとえ俺みたいなやる気のない奴でも、

 部屋でひとり何もせず過ごし続けるというのは、

 耐え難い苦痛を伴うものだ。


 前世では、

 休日は漫画や小説などの娯楽で、

 心穏やかにだらだら過ごせたものだが・・・。


 その漫画や小説で埋め尽くされた自室の本棚はもうなく、

『ホーム』の本棚は、この異世界の知識を学ぶ本で占められていた。


『基礎魔法入門書』、

『武器別護身術』、

『世界魔物図鑑』、

『大陸別歴史書』、

『各ギルドの成り立ち』等々・・・。


 まるで、

 学校の教科書みたいなラインナップだ。


 タイトルを見ているだけでげんなりするのだが・・・、



(仕方ない・・・)


 迫りくる異世界外出に備えて、

 それなりに知識と物理的力は身につける必要がある。


 俺はまず、

 魔物図鑑を本棚から取り出し、

 ベッドの上で腹ばいになって見始めた。


(えっと・・・、

 森によく出現する食用化の魔物は・・・)


『ホーム』の食料がきれた時に備えて、

 俺はとにかく食える魔物を記憶していった。


 ホーンラビットはウサギ、

 レッドボアはイノシシ、

 ロックバードは大きな鳥肉・・・



(ゴブリンは、

 食用厳禁か・・・やっぱり)


 それにしても、

 挿絵を見る限りやっぱり『ゴブリン』というのは、

 ほぼ禿げ頭のようだ。


(あの時倒した『ゴブリン』はふさふさだったが・・・、

 特別栄養が頭にいっていた・・・のか・・・?)



 ――半分も見終わらないうちに、

 俺は眠気がきたので、

 そのままベッドでうたた寝した。



 ちなみに起きた後も、

 内容に飽きた俺は続きを読むことはなかった。

 

 そのまま『魔物図鑑』を本棚に返し、

 代わりに別の本を取り出した。



『基礎魔法入門書』。


 考えてみれば、

 俺は今『浄化』の魔法しか使えないのだ。


 いざという時のために、

 他の魔法も覚えておくべきだろう。



(まず、最優先で覚えるべき魔法は・・・)


 やはり、

『回復』だろう。


 この先、

 戦闘・・・は極力避けるとしても、

 狩りなどで傷を負う可能性は十分にある。


 俺はページをめくり、

 目当ての魔法を探した。


(回復回復・・・これだ!)


 身体の傷を治す『回復魔法ヒール』。


 さっそく俺は練習を始めた。



 練習台となってくれるケガ人もいないため、

 仕方なく俺は自分の身体を傷つけて、

 それを自分で回復させる事にした。


 幸い『痛覚』のないこの身体だ。



 爪でひっかいて傷をつくって、


「『回復魔法ヒール』」


 俺がそう唱えた瞬間、

 まばゆい光と共にひっかき傷が消えた。



(できた・・・)


 俺は練習を続けた。



 次は腕を噛んで血がにじんだところで、


「『回復魔法ヒール』」


 光と共に噛み傷が消えた。



(これは・・・、

 いける・・・?)



 あらかじめ部屋のスイッチを点ける過程で、

『魔力』の使い方を覚えたせいか、

『回復』はどんどん上達していった。



 頬を殴って口の中に血の味が広がったところで、


「『回復魔法ヒール』」



 鼻の穴をひっかいて鼻血を出したところで、


「『回復魔法ヒール』」



 ――練習場所を浴室に移したのは、

 このあたりからだったろうか。



 一枚一枚爪をはぐたびに、


「『回復魔法ヒール』」



 一本一本指を折るたびに、


「『回復魔法ヒール』」



 服を脱ぎ、

 ザクザクと包丁で体中を傷つけながら、


「『回復魔法ヒール』」



 浴室はいつの間にか、

 俺の血で真っ赤に染まっていた。



「『浄化魔法ピュリファイ』」


 最後に、

 シャワーで血を洗い流し、

『浄化』の魔法で浴室を綺麗にすると、

 俺は「『回復魔法ヒール』の練習を終えた。



(何ていうか、

 少しテンションがおかしかったか・・・)


 血が減って、

 逆に冷静になれたようだ・・・。


「疲れた・・・」



 ――その後も、

 俺は食事と睡眠を挟みながら、

 魔法の習得にいそしんだ。


 戦闘に調理、明かりなど、

 様々な状況で使える『火炎魔法ファイヤー』。


 敵の動きを止める『麻痺魔法パラライズ』。


 乾燥、除湿、ついでに攻撃と、

火炎魔法ファイヤー』に劣らず汎用はんよう性の高い『風魔法エア』。



 結局、

 俺はその後他の本を本棚から取り出す事なく、

 食料に余裕がある間ひたすら魔法の練習につぎこんだのだ。



 ――そして、

『ホーム』に引っ込んで十日後、

 俺は再び外に・・・異世界に出た。


 残り少ない食料の補充のために・・・。



【残り3590日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦



 ??は語る・・・。


「何かに熱中して打ち込むのは良い事ですが、


 やり方は考えたほうが・・・。


 皆さんもドン引きされた事とお察しします。


 ですができれば・・・、

 『フォロー』はもちろん、

 どうか下にある

 『ハート』や『☆』も押してくださいね」





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