第6話 か~め~は~め~・・・

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(さて、どうしたものか・・・)


 冷凍庫に入っていたガリガリ君コーラ味をかじりながら、

 俺は考え込んでいた。




 女神様からもらった『自宅空間ホーム』の『恩恵ギフト』・・・。


 異世界にもかかわらず、

 俺が前世で住んでいた、

 アパートの部屋そっくりのこの空間・・・。


 これならこの先も安心して生活できる・・・、


 そう思っていたのもつかの間・・・、



 (水が出ない・・・)


 それも台所の流しだけではない。


 浴室の蛇口やシャワーハンドル、

 さらにはトイレのハンドルもひねってみた。



 ――どれも駄目だった。


 この『ホーム』にあるスイッチやノブを作動させるには、

『魔力』をこめて触れないといけないのだ。



(『魔力』・・・)

 とは、どうやれば使えるのか。


 前世で、異世界ものの物語では定番のワードだ。


 魔法を使うための力、『魔力』・・・、

 通称MP。


 ドラゴンボールで言えば、

 かめはめ波を出すための『気』みたいなものだろう。


 だが、



(俺はただの元フリーターだぞ。

 フリーザではなく・・・)


 そんな俺が『気』・・・ではなく、

『魔力』なんて特別な力をどうやって使えるようになれと言うのか。


(諦めて、

 外で水を汲んでこなきゃいけないのか・・・?)


 この明らかに物騒な異世界で・・・。


 考えただけでげんなりする。



 ――あれこれ考えていたら、

 いつの間にかガリガリ君を食い終わってしまっていた。


 アイス棒のくじが『はずれ』だった事に、

 さらに気が落ち込む・・・。



(・・・とにかく、

 外に出るのは最終手段だ)


 まずは、

『魔力』を出す練習をしてみよう。


 俺はさっきと同じく、

 自分の手から『魔力』が出るというイメージをしながら、

 シンクの蛇口をひねった。


 何度も、何度も、何度も・・・。


 ・・・だが、何も起きない。


 他にも照明やコンロのスイッチなど、

 とにかく手当たり次第に押しまくってみた。


 ・・・何も起きない。



 そもそも、存在を意識する事すらできない力をどうやって使えというのか。


(だったらまず、

 意識せずに『魔力』を使えるように動いてみるか)


 そう、

 パンチを打つ時、

 自動的に腕の筋肉が使われるように。


 呼吸をする時、

 自動的に肺が使われるように。


(『魔法』を使えば、

 自動的に『魔力』が使われる・・・)


 その過程で『魔力』の存在を意識する事が出来れば・・・。




 その後俺は、コンロのバーナーキャップを指さして、


「・・・メラ!」

 と叫んでみたり、


 冷蔵庫のリンゴをつかんで、


「ヒャド・・・」

 とささやいてみたりした。


 ・・・だが、何も起きない。



 段々とイライラしてきた俺は、

 とにかく手当たり次第に、

 前世で観た物語に出てくる魔法をわめき続けた。


 あげくに果てに俺は、

 腰を落として脚を開き、

 首だけ左横を向きながら、

 両手首を合わせて手を開き、

 その両掌をゆっくりと体の左手側から腰、そして右脇の下側へともっていきながら、


「か~め~は~め~・・・」

 と、唱えていった・・・。


 そして最後に、


ーっ!!!!」

 というれっぱくの気合と共に、

 俺は両掌を視線の先へと突き出した!!


 その手のひらから、

 何かとてつもないものが放たれるイメージで・・・!!



 ・・・・・・だが、

 何も起きなかった・・・。



(何やってんだ俺は・・・)

 

 そこでようやく俺は、

 自分のやっている事の馬鹿馬鹿さを実感した。


 仮にも、

 前世でアラフォーまで生きた男のする事ではない。


 途中からむきになってやっていた自分が恥ずかしい。


 こんなに汗だくになって・・・、

 今は洗濯も出来ないのに・・・・・・



(そういえば・・・)


 俺はそこで、

 女神様から一つの魔法を授かっていた事を思い出した。


 腎臓を一つ手放す代わりに覚えた『浄化』の魔法・・・。



 俺はすぐさま自分自身を綺麗にするイメージで、


「『浄化魔法ピュリファイ』」

 と唱えた。


 すると、

 目には見えない『何か』がいったん俺の身体の中心に集まり、

 そして今度はそれが身体全体から外側へ発散される感じがした。


 汗でベタベタだった俺の身体は、

 瞬く間にすっきりして、

 おまけに着ている服の汚れまで消えていった。



 これが『魔法』・・・。


 そして・・・、



(今のが・・・、

 今、俺の身体に流れたのが・・・『魔力』?)


 俺はすぐさま、

 シンクの蛇口をつかんだ。


 そして、

 今しがた感じた『魔力』の流れをイメージしながら、

 思い切りひねってみた。



 ――水は出た。


 シンクの蛇口からは、

 勢いよく水が噴き出したのだ。



 ・・・これでようやく、

 まともな生活が送れる。



「疲れた・・・」


 俺はそうつぶやくと、

 ボールに水を入れ、

 米を研ぎ始めた・・・。



【残り3599日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦



 ??は語る・・・。


「・・・・・・えっと、皆さん。

 どうか馬鹿にしないでやってください。


 本人はいたって真面目なのですから・・・。


 そしてできれば・・・、


 『フォロー』はもちろん、

 どうか下にある

 『ハート』や『☆』も押してくださいね」








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