第5話 『痛覚』がなくても、空腹は感じる・・・

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 ――目が覚めてしまった・・・。


「あ~~~~~・・・・・・」


 できれば、寿命まで眠っていたかった。


 だが残念ながら、

 しばらく眠気はやってきそうにない。


 仕方なく、

 俺はベッドの上で上半身を起こした。


 そして、

 改めて室内を見渡す。


 女神様からもらった『恩恵ギフト』で創られたこの空間・・・。



自宅空間ホーム』・・・、

 元の世界で俺が暮らしていたアパートの部屋に似ている。


 部屋に置かれた家具まで・・・。



 とりあえず、

 起きて色々確認してみる。


 壁に窓はない。


 が、明かりのスイッチはある。


 この空間限定なのだろうが、

 元の世界同様、異世界でも照明があるのはありがたい。



 部屋の四隅にはそれぞれ、

 机、タンス、ベッド、

 そして、ゴミ箱と壁の金具に引っ掛けたハンガーが置かれている。


 中央には、食事用のちゃぶ台だ。


 そばには一枚の座布団もある。


 前世のままだ。


 どうやら、

 衣食住のうち着るものと住居は問題ないようだ。



(と、するとあとは・・・)


 俺はベッドから出ると、

 部屋のドアを開けた。


 廊下兼、台所兼、玄関だ。


 ドアを開けて左手は手前から奥まで台所で、

 右手前に玄関だ。


 そして、右奥にはトイレと浴室のドアがある。


 何はともあれ、

 俺はまずしゃがんで冷蔵庫を開けてみた。

 下段の冷蔵室には十分な量の卵、肉、野菜、果物、

 マヨネーズやケチャップなど冷蔵必須の調味料が、

 しっかりと冷えている。


 上段の冷凍室にも、問題なく氷がある。


 あ、

 ガリガリ君コーラ味も・・・。



「ん・・・」

 これで『食』の問題もない。


 少なくとも数日は・・・。



「はあ・・・」

 俺はため息をついた。


 冷蔵庫の食料・・・、

 それを使い切った後の事を想像してしまったからだ。


 当然、外へ調達に出なければならない。


 食用になる魔物を刈るか、

 それとも街まで買いにいくか。


 いずれにせよ、

 そうなったらいよいよ、

 まったく知らない世界で活動しなければならないのだ。


 その時の事を想像するだけで・・・、



「疲れる・・・」

 俺はぼやいた。



 とりあえず、

 他も確認しておくか。


 冷蔵庫の上には電子レンジ。


 そしてシンク、カウンター、コンロにグリル、換気扇、棚、引き出し、コンセントの差込口・・・。



(配置はすべて同じ・・・か)


 あの女神様、

 俺の私生活をのぞき見でもしていたのだろうか・・・。


(・・・って、

 そんな暇なわけないか)


 おそらく、

 俺の記憶を読んで、

 それを元に再現した・・・とかだろう。


(ま、

 どうでもいいか・・・)




 流し台は、

 シンクの左手に炊飯器と食器や箸などが乗った水切りラック、

 右手にはまな板がおかれている。


 そして、棚や引き出しの中には・・・、



(やっぱり・・・)


 米や味噌、

 鰹節や昆布などの常温保存の食品。


 カップ麺やチョコレート等の保存食。


 砂糖や塩、コショウ・・・、

 さらに醤油や酢、味醂、油等の調味料。


 鍋やボウル、

 ポットにミキサーなどの台所用品。



(至れり尽くせりだな・・・)


 特に感謝の気持ちは起きないが・・・。



(とりあえず、

 何か作って食べるか・・・)


 考えてみれば、

 異世界に来て半日以上経っているだろうに、

 何も食べていなかった。


「腹減った・・・」

 そう口から出た俺は、

 ふと試しに自分の頬をつねってみた。


 痛みは・・・ない。


(『痛覚』がなくても、

 空腹は感じる・・・か)


 これでこの先も、

 どんなに動きたくなくても、

 食事のため起きなければいけない事が分かった。


「疲れる・・・」


 

 ――まず、米を研ごう。


 ボールに米を入れ、

 シンクの蛇口をひねる。



 ・・・水が出ない。


 そこで俺は、

 女神様の説明を思い出した。


「『ホーム』の中にある全てのスイッチは、

 『魔力』を込めて付けないと作動しません」

 と・・・。


(水道の蛇口もかよ・・・)


『魔力』と言われても、

 俺にはピンとこない。


 要は、

 蛇口をひねる手に意識を集中させる、

 という事だろうか。


 手に力を集中・・・、

 手から力を・・・。



 俺はもう一度、

 水道の蛇口をつかみ、


「『きてますきてます』・・・」

 と、唱えながらひねってみた。



 ・・・・・・水は出ない。


 これは、

 かなりまずいのでは・・・。




【残り3599日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦



 ??は語る・・・。


「・・・ただの人間にとって水がないというのは、

 結構な不安をあおる状況ですね。


 皆様もしっかり水の管理を。


 そしてできれば・・・、


 『フォロー』はもちろん、

 どうか下にある

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