閑話 とある冒険者パーティー

 ここで、女神が物語の視点を変える。


 ある冒険者のパーティーに・・・。



 ~~~~~~~~~~~~~


「おい、見つけたか?」


「いや、こっちのほうに逃げたはずだが・・・」


「本当にもう!

 ゴブリンだと勘違いして油断するから・・・!」



 それぞれ鎧やローブに身を包み、

 剣や弓、ワンドを携えた三人・・・。



 剣士、アーチャー、魔導士・・・。



 彼らは、

 街の冒険者ギルドに所属するパーティーだ。


 ギルドの依頼で、

 近くの森に現れたというゴブリンの群れの討伐に赴いていた。


 森に潜った彼らは、

 ギルドからの情報をもとに、

 群れのねぐらまで一気に進んだ。


 最弱の魔物といわれるゴブリンだが、

 今回の群れに関しては、既に街道での犠牲者が出ている。


「いい具合に貴族連中がやられている。

 これを倒せば、

 俺たちは英雄だな!」


 そう息巻いて、

 三人は巣を急襲した。


 新人とはいえ、

 ギルドから有望株と見られている三人。


 またたく間に、

 十匹前後いたゴブリンの群れを掃討した。



 ――だが、


「聞いてないわよ!

 群れのリーダーが『レッドキャップ』だなんて・・・!」

 と、魔導士の女は最後に残った一匹を見て叫んだ。


 最後の一匹に、

 彼ら三人は劣勢を強いられているのだ。



赤頭鬼レッドキャップ』・・・。


 頭髪さみしい『小鬼ゴブリン』と違い、

 その頭にはまるで針金のような赤銅色の髪が放射状に逆立っている。


 髪以外の外見がゴブリンそっくりなため、

 間違われる事が多い。


 だが、

 その実力はゴブリンの比ではない。


 その矮小な見た目と裏腹に、

 その怪力は『豚鬼オーク』に匹敵し、

 その速さは二足歩行の魔物では最速の部類に入るという。


 さらには人間なみの狡猾さをも併せ持つ、

 それが『レッドキャップ』という魔物である。



 だがその魔物は、

 何故かそれ以上三人を追撃する事なく、

 その場を離れていった。


 まるで、

 何かの気配に気づいて、

 そちらを優先するかのように・・・。



「いてええっ!!

 ギルドの連中め、

 こんな情報ミスしやがって!

 あとで慰謝料をせしめてやる・・・」


「くそっ、

 脚を折られた!

 ポーション代だって馬鹿にならないのに・・・」


「もういい!

 ゴブリンは倒したんだし、

 これで依頼は達成でしょ⁉」


 脅威が去ると、

 彼ら三人は口々にわめきだした。


 接近してこん棒を振り回す・・・。


 その単純な攻撃を、

 三人はかわしきれなかった。


 単純に、

 レッドキャップの身体能力が上をいっている証拠だった。


 もし、

 あのまま攻撃が続いていたら・・・。



「・・・それにしても、

 何であいつは逃げ出したんだ?」


「ひょっとして、

 俺たち実はあいつを追い詰めていたんじゃ・・・」


「きっとそうよ!

 今から追いかければ、

 まだ追いつけるわ!」


 相手の離脱を都合よく解釈すると、

 三人は急いでポーションを飲み、

 追跡を開始した。



「こっちだ!

 どうやら森の外へ向かっているようだな・・・」


「馬鹿な奴だ。

 自分から見晴らしのいい場所へ行くなんて」


「レッドキャップ・・・。

 あいつを殺せば、金貨何枚分の褒章が・・・」



 ――そのまま追いついていれば、

 三人はレッドキャップに皆殺しにされていただろう。


 レッドキャップは逃走したのではなかった。


 三人とは別に、

 森の外から新たな人間の気配を感じたからだ。


 それもまったく唐突に・・・。



 一体いつの間に現れたのか・・・?


 半径100メートル内は常に警戒していたのに・・・。



 いや、

 レッドキャップにとってそんな事はどうでも良かった。


 問題は、

 その突然現れた気配の主から、

 とてつもない力の圧を感じたからだ。


 もし、

 こいつが自分たちのほうに気づき、

 目の前の三人に加勢したら・・・。



 そう考えたレッドキャップは、

 先手を打つべく、

 いったん三人を無視して、

 気配の主のもとへと駆け出したのだ。


 そして、

 森の外にその姿を確認すると、

 有無を言わさず殺しにかかり・・・。


 そして逆にられた。


 その一人の『転生者』によって・・・。




 ~~~~~~~~~~~~


「おい、見つけたか?」


「いや、こっちのほうに逃げたはずだが・・・」


「あ、あそこに誰かいるよ!」


 三人が森の中から出てきたのは、

 その直後だった。


 すぐ先には、

 一人の少年らしき姿があった。


 だが、

 その『少年』は三人が近づくよりも早く、

 


 その場にレッドキャップの死体を残して・・・。



 そして、その場にやってきた三人は、

 今見たものと足元の死体を見て唖然としていた。


「な、何だ今のガキは?

 いきなり扉みたいなものを出して、

 消えちまったぞ・・・」


「転移魔法の類か?

 そんな伝説級の魔法をあんな小僧が・・・」


「それよりこれ・・・。

 このレッドキャップの死体・・・、

 これもあの子がやったの・・・?」


 三人は沈黙した。



 しばらくして、

 剣士が口を開いた。


「でもよ・・・、

 こうやって死体を置いていったって事は、

 俺たちがもらっちまっても構わないよな・・・」


 その言葉に、

 他の二人は驚いた顔をしたが、

 すぐに同意の意を示した。


「そう・・・だな。

 そもそも、

 こいつはもともと俺たちの獲物だったわけだし・・・」


「そうよね、

 もう少しで追いついて仕留められるとこだったのを、

 あいつに横取りされたんだものね~」


 そのまま、

 どんどん自分に都合よく話をもっていく三人・・・。


「よし!

 こいつは俺たちが倒した・・・という事でいいよな?」


「ああ。

 仮にあの小僧にどこかでバレたとしても、

 後からでは文句の言いようもあるまい」


「じゃ、決まりね!

 レッドキャップを仕留めたとなれば、

 相当なはくがつくわよ、あたし達!」



 こうして、

 脅威の魔物『レッドキャップ』の首は、

 彼ら三人の手柄となった・・・。



【残り3599日・・・】





 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


 女神は語る・・・。


〈・・・何にもかかわらずに生きるというのは、

 難しいものですね。


 皆様もお疲れ様です。


 最後にぜひ・・・、

 この世界を維持するために、


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