【番外編①】妹 五月の結婚前夜①
前話「前カノが「実の妹は抱いちゃダメだよ?」と釘を刺してきた (第五話 …またねっ!!)」
https://kakuyomu.jp/works/16818093077527731785/episodes/16818093077679507411
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明日、あたしは結婚する。
これはそんなあたしのひとりごとだ。
人生にはたくさんの岐路がある。あたしの20数年の人生にだってはっきりとある。
あたしの自我がはっきりと、後悔を覚えている一番最初の出来事を上げろと言われたら、あたしは迷うことなくあの日をあげるだろう。
そう、ゆう姉とお兄を幡ヶ谷のマンションに残して、実家に帰ったあの中学二年生の春。
帰るべきでは無かった。ゆう姉が次の日の朝、出掛けるまで一緒にいるべきだった。
そして、何としても、お兄とゆう姉をくっつけるべく最後まで足掻くべきだった。
九州に戻り「大切な人が出来ました。もう東京には戻りません」と手紙を寄越したゆう姉に対して、悲しみとともに一時は二度と顔を見たくないとまで怒り、そしてゆう姉が行方不明になってしまった今、あたしは無性にゆう姉と会いたい。ゆう姉に聞きたい。「どうしてお兄と離れてしまったの?」と。
――
―
三月「ゆうこちゃんへの年賀状が、転居先不明で返ってきてしまったんだ」
新婚初めてのお正月、沙織義姉さんと幸せでいっぱいのはずのお兄からの悲壮な電話。
有給休暇を取ってまで九州に飛んだ、お兄と親友の成井さん。
…でも手掛かりなんか何も残ってはいなくて…それどころか
「ゆうこちゃんの旦那さんなんて影も形もなかったんだ。あいつは一人で…」
九州から帰ってきたお兄は、あの沙織義姉さんでさえ声も掛けられないくらい落ち込んでいて…あたしもお兄に何も言うことが出来なくて…
「ゆう姉…何で!」と泣くばかりで。
そんな…どこにも向かえない気持ちの袋小路をぶち壊したのは…
沙織「妹ちゃん、正太郎くん、それがみっちゃんのプライバシーなことは充分承知。でも今は緊急事態。教えて欲しいんだ…過去みっちゃんに何があったのか」
あたしたちから詳しい情報を得た義姉さんは果敢にお兄に挑み続けた。
そして…お兄の笑顔を取り戻したんだ!
あたしは何も出来なかった自分が悔しくて悔しくて…そんなあたしに義姉さんが言ったんだ。
「今回のはさ…妹ちゃんは当時者の一人、それに対してあたしは部外者だからさ。あたしががんばんなきゃ仕方がなかったの。でもさ、いつかあたしとみっちゃんが両方とも当事者になるような、そんなことがあったら…そのときは助けてね、妹ちゃん!」
義姉さんは、あたしのことを「五月ちゃん」とは決して言わない。
一度言われたときに多分あたしの顔色が大きく変わったんだ。だって、あたしは嫌だった。ゆう姉以外の人がお兄の横にいて、あたしを「五月ちゃん」と呼ぶのが。
義姉さんはそれを一瞬で理解したんだ。
それからは、義姉さんはあたしを「妹ちゃん」と呼ぶ。義姉さんは本当に聡い、人の心を知っている人なんだ。
義姉さんは凄い女性だ。
今では、そんな義姉さんがお兄のそばにいてくれることに感謝している。私も大好きだ。
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でも、それでも考えてしまう。
もし、あの日、ゆう姉とお兄がよりを戻してくれていたら?
もし、あの日、あたしがお兄に抱かれて、お兄の拠り所になっていたら?
そうしたらあたしは、あたしたちはどんな人生だったんだろうって。
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―
明日、あたしは結婚する。
だから…今日、あたしは!!
(画像)五月…結婚前夜
https://kakuyomu.jp/users/kansou001/news/16818093081320281778
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