YouTuberを襲った恐怖!

天川裕司

YouTuberを襲った恐怖!

タイトル:(仮)YouTuberを襲った恐怖!


▼登場人物

●横井加奈子(よこい かなこ):女性。30歳。フリーターでYouTuber。

●宅井真守(たくい まもる):男性。35歳。ボサボサの髪。変な感じの人。

●上川 誠(かみかわ まこと):男性。30歳。紳士的かつイケメン。グレーのジャケットをいつも着ている。お洒落。


▼場所設定

●加奈子の自宅:都内のマンション。

●喫茶店:加奈子がパートで働いている。一般的なイメージでOKです。


NAは横井加奈子でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説=3569字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんは普段、YouTubeをよくご覧になりますか?

今回は、或るYouTuberにまつわる意味怖のお話です。



メインシナリオ〜


ト書き〈自分の部屋〉


加奈子「よしよし、今日もいい感じでアップできたわね♪この調子でもっともっと動画アップしていくぞー」


私の名前は横井加奈子(30歳)。

以前まで会社で働いていたが今はフリーター。

今はどこも不景気。

だから私は自分で稼げる手段を得ようと、YouTuberになる事にした!


加奈子「ホント、私にピッタリのお仕事よねコレ♪」


YouTuberは軌道に乗れば稼げる。

それまでが大変だけど、私の動画サイトも漸く人気が出始め、

チャンネル登録者数も10万を超えた。

収益は安定してきている。


ト書き〈パートもしている〉


私が住んでるのは都内のマンション。

でもさすがにYouTubeだけではやっていけない。

だから私は今、最寄りの喫茶店でパートの仕事もしている。


加奈子「有難うございましたぁー(ふぅ。早く終わんないかなぁ〜)」


これは飽くまでサイドビジネス。

私の本業はYouTuberだ♪


ト書き〈声をかけられる〉


そんな時、店のお客さんの1人が私に声を掛けてきた。


真守「あ、あの」


加奈子「はい?」


どこか気の弱そうな男の人。

名前は宅井真守と言った。

髪はボサボサで、冴えないサラリーマン風の男…といった感じだ。

そんな彼はどうも、私に一目惚れしたらしいのだ。


加奈子「そ、そんな事、急に言われても…!」


真守「お願いです!お願いします!僕、あなたの事をもっとよく知りたいんです!本当に出来たらこんな僕に、どうか救いの手を差し伸べて下さいよ!」


加奈子「は…はあ?!」


ちょっと怖くなってきた。

全く有り得ない展開だ。


加奈子「(こ、この人、どっかおかしいのかな…)」


そう思いながら困っていた時…


誠「オイ、いい加減にしろよ君!彼女嫌がってんじゃないか」


別の男性客が割って入ってくれた。

彼の名前は上川 誠。

歳は私と同じ30歳だった。


真守「な、なんだよお前!関係ないだろ!ひっこんでろよ!」


誠「そう言うワケにゃいかねーな。ここは俺にとっても行き付けなんだ。時々立ち寄ってホッと安心できる心のオアシス…そんな場所が妙なトラブルに巻き込まれて無くなっちまうと、俺にとっても困るからな」


真守「な、なんだと!く…くそ!覚えてろ!」


そう言って、ボサボサ男は立ち去った。


加奈子「はぁ…助かった。あの、有難うございます」


誠「いやぁお礼なんて♪」


とても感じのいい人だ。

そういえば、彼もよくこの店に来ていた。

彼はいつもお洒落で、グレーのジャケットを羽織っていた。

時々来店してはエスプレッソを必ず頼んでくれる。


加奈子「あの、今日のエスプレッソ、サービスにしときます♪助けてくれたお礼です…」


誠「え?いや、そんなに気を遣わなくても」


私の気持ち。

何となくその日から、彼の事が気になった。


ト書き〈数日後〉


加奈子「よしっと♪これで動画のアップ終了〜♪」


今日も動画をアップして、出来栄えを確認したあとパートへ向かう。


私がアップする動画は、街中で取る日常風景だ。

私がよく行くスイーツのお店やパン屋さん、

ファッション専門店や美容院など、

その周辺を細かに撮影しながら、自分の普段の生活をただアップしている。


撮影の許可を貰えたお店では、店内の撮影もする♪

こんな日常的な動画が、最近、結構人気なのだ。


加奈子「でも今回の動画、すごい雑踏よね。私の声、かき消されてるしw」


ト書き〈喫茶店〉


加奈子「いらっしゃいませぇー…あ、誠さん♪」


誠「やぁこんにちは♪」


加奈子「今日もいつものですか?」


誠「うーん、実は今日さ、君に1つプレゼント持ってきたんだ」


加奈子「え?プレゼント?」


そう言って誠さんは私に高級なネックレスをくれた。


加奈子「いや、こんな高いもの…ダメですよ!」


誠「いやいや、気持ちだから受け取ってよ♪この前のエスプレッソのお礼さ」


加奈子「で、でも…」


見るからに高そうなネックレス。

でもそれを見ている内にふと…


加奈子「(あ、これって確か、私がよく行ってるあの専門店に置いていた…?)」


見覚えのあるネックレスだと思ったら、

行き付けのファッション店に置いていたものと同じだ。

私はそれを何度も動画で紹介していた。


加奈子「ほ、本当にいいんですか…?」


誠「ああ♪」


ト書き〈数日間〉


それから数日間。

誠さんは毎日来てくれた。

内緒で携帯番号も交換した。

いつも楽しく談笑し、時々またプレゼントをくれたりもした。


しかし…


誠「え、ごめんよ…そんなつもりじゃなかったんだけど。困らせてた…?」


加奈子「い、いえ。ただあんまりこんな高そうな物貰っちゃうとさすがに…」


プレゼントを持って来るのはやめるようにお願いした。

誠さんは謝りながら頷いてくれた。


ト書き〈喫茶店〉


そして翌日。

またあのボサボサ頭の真守が来店した。


真守「こ、これ!君の為に買ったんだ!受け取ってくれないか!」


それは私がずっと欲しがっていた、金色のバック付きのポーチだった。

私は昔からこう言うのが好きで、これもよく動画で紹介していた。


加奈子「な、なんであなたが…私がこれ好きだって事、知ってるの?」


真守「え?いや、何となくだよ!女の人は大体こういうの好きだろ?だからさ!君も多分そうじゃないかと思って買ってきたんだ!」


もちろん受け取らなかった。

それと同時に何となく嫌な予感がした。


ト書き〈その日の夜〉


それから私は急いで自宅に戻り、自分のアップ動画を確認してみた。


加奈子「…や、やっぱり…これも、これも、これにも、あれにもどれにも…!」


私が今までアップしてきた動画数は100本を超えている。

その内の90本以上に、ボサボサ頭のあの男が映っているのだ!


加奈子「ずっと私…付け回されてた、って事…?」


背筋がゾッとした。

この男、おそらく完全なストーカーだ。


私は急に怖くなり、何となく部屋に1人でいるのが不安になった。

そして部屋を出ようとした時、窓下に男の影が立っているのが見えた。


加奈子「う、嘘…アレってアイツ…?」


そんな気持ちでいたからか、

他人でもボサボサ頭のアイツに見えてくる。


そう思った瞬間、私は誠さんに電話した。


誠「何だって!」


加奈子「あ、あの男が、私のマンションの下に来てるかもしれない…」


誠「ほ、本当に?…いいかい、部屋を出ちゃいけないよ。窓やドアの鍵を閉めて、君は部屋の中に居るんだ!今からすぐそっち行くから!」


誠「あ、でも君ってどこに住んでるんだっけ…?」


私は自分の住所を教えた。

誠さんはすぐに来てくれると言う。


少し安心し、もう一度部屋の窓から下を覗いた。

まだあの男がじっとこちらを見上げて立っている。

でも夜だし、暗がりでよく判らない。


加奈子「は…早く来てぇ、誠さん!」


私は気を紛らわそうと、また自分のアップ動画を見ていた。

その時、また新たに発見した事がある。


ボサボサ頭の男・真守から少し離れた場所に、

グレーのジャケットを着た男が立っていた。


少し気になり調べていくと、100本以上アップした動画の全てに、

そのジャケットの男は映っていた。



解説〜


はい、ここ迄のお話でしたが、意味怖の内容に気づかれましたか?

それでは簡単に解説していきます。


加奈子は実は、2人の男にストーカーされていました。

もちろんその2人とは真守と誠です。


真守は危ない感じのストーカーでしたが、

誠は180度逆の紳士的なストーカー。


取り敢えずそのストーカー行為を証明するものが、

加奈子がアップした動画に残されていました。


90本以上の動画に真守が映り込んでおり、

100本以上の動画に誠が映っていました。


これは普段から2人が、加奈子を尾行していたと言う証拠です。


だから2人とも加奈子が欲しいものをあらかじめ知っており、

ネックレスやポーチなど、加奈子の趣味にドンピシャのプレゼントを持って来れたのです。


そしてラストの場面。

暗がりの中で、加奈子のマンションのすぐ下に立っていた男は真守でした。


動画撮影を終えた加奈子を追って来たのでしょう。

そのお陰で加奈子の自宅を突き止める事が出来ました。

でも加奈子の携帯番号までは知りません。

だからマンションの前でただ棒立ちになり、

それ以上の事は出来なかったのです。


もし携帯番号を知っていたなら、

真守の性格からしてすぐ加奈子に電話をかけていたでしょう。

暗がりの中でも、真守が電話をかける素振りは見られませんでした。


真守がこの夜、加奈子のマンションまで来たのはまさに偶然です。

その偶然に便乗し、誠は自分を売り込むチャンスを得た訳です。


それともう1つおかしな点は加奈子に対し、

「警察に電話しろ」

と誠が言わなかった事です。


普通なら警察への通報を勧めるでしょう。でも誠はそうしません。

これも自分を売り込む為で、警察に来られるとマズイからです。


さてこの後、加奈子は一体どうなったのか?

また本当に怖いのは真守だったのか誠だったのか?

どちらにしてもストーカーはやはり怖いものです。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=pkvQcctH2vE&t=1s

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YouTuberを襲った恐怖! 天川裕司 @tenkawayuji

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