第13話 開戦前夜:ハサン軍
同じころ、敵からは憎しみを込めて”狂気の暴竜”とも呼ばれる〈傭兵王〉レジナルド・ハサンは、進軍の馬上にいた。
背後に率いるのは、二千人ちかくならず者たち……だが、彼が頼りとするのは、自らの豪腕のみ。その自信を裏付ける
ひとりのゴブリンが馬を寄せてきて、ハサンにある報告をもたらした。
「ゴブリン王が率いる軍勢が、敵に加勢するべくこちらへ向かっているそうです」
そのゴブリンは、
ハサンの邪悪な思考は、次の戦いの勝利後に向いていた。
大公家の男子をひとり残らず抹殺する。そして、大公家の全ての婦女子に自分の子を産ませる。それでこそ、コヴィニオン王国を完全に我が物にできるというものだ。
そこで問題になるのが、油断ならぬ魔女のアドナ・ブランウェンとその子ども……今は協力関係にあるものの、いずれ始末しないといけないときが来るだろう。
そのときの策を
そんな思考を
「その情報は、俺の昔のツテを
ここでようやくハサンはゴブリンに目を向けたが、底なしの冷たさをたたえた黒い瞳に、興味の色はひとつもなかった。ゴブリンはおかまいなく続けた。
「この情報を俺がつかんでいることは、ゴブリン王チーグは知らないはずです。そこで、どうでしょう? 俺が、ここのゴブリン兵たちを連れて、逆にゴブリン王国軍を急襲する。俺は、ゴブリン王チーグと少し因縁があるんです、閣下。必ずや、ゴブリン王の軍を混乱させ、使い物にならなくしてくれましょう」
「ええと、おまえは……」
「ダンです、閣下」
ゴブリンは意気揚々と答えた。
「そうか、せいぜい頑張れ。俺としては、ゴブリン王国軍とやらがやってきても、一向に構わないがな」
空気さえも震え上がらせるような、低く太い声でハサンは言った。
「はっ」
かつてチーグの帰還を阻み、のちに王国を追放されたダンは、待ちに待った復讐のときに胸を躍らせながら答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます