生誕万花【短歌・二十首連作】

たっきゅん

生誕万花

無花果の 実る奇跡に 歓喜の宴 酒はご法度 育む命


待ちわびた 産声安堵し 花煙草 小さなその手 不思議な気持ち


ねんねして 起きては泣いて またねんね 添いて見守る 源平小菊


手を伸ばす 世界を未だ 知らずとも 掴んで握る 百合山葵かな


差し出され スプーンを求めて 口開ける 消える食事は まるでルピナス


楽しいと すぐ破顔する 耳菜草 そのままでいて 何時何時までも


泣き叫ぶ 言いたい事も 言えぬ声 届いた願い 葉牡丹のよう


這ってでも 行きたい場所が あるのだと 心に咲いた 赤いガーベラ


ひとり立ち いつかあなたと マネッチア 外を見てきて 踏み出す足で 


ご機嫌に 玩具で遊ぶ 子供見て 狗尾草と 童心帰る


友達と 遊ぶ姿は 懐かしく 時を超えるは 血の芝桜


喧嘩して 非を認めては 謝罪する 互いを知った カモミールかな


勉学に 励んで欲しい その願い 苦労した過去 カンパニュラなり


好きにして あなたの進路 口出さず 夢があるでしょ ストレリチアよ


おめでとう 卒業証書 握りしめ スイートピーで 彩る門出


渡された 白いアザレア 受け取って 涙に変わる 初任給かな


鐘が鳴り 純白の布 胡蝶蘭 愛を誓った あの子を頼む


腕に抱く 我が子にも似た この感じ けれど確かに 違うアイビー


孫連れて 盆正月に 顔見せる 巡る季節の スターチスかな


また泣いて しょうがない子ね 笑いかけ 閉じる瞳と 握った紫苑

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